2021年7月13日~29日、岡山県立倉敷鷲羽高等学校の1年次生文理コース26名の生徒を対象に『Challenge University With STEAM』が一般社団法人児島青年会議所の主催にて実施されました。
『Challenge University』事業は2019年よりJCI日本が進めている人財育成教育プログラムの一つで、各地域の課題解決に向け若者が挑戦するワークショップ型の事業です。
今年度は国家グループ次世代教育推進委員会において、政府の進めるSTEAM教育とかけ合わせる形で全国展開されています。
その担当委員会では、大学生・高校生向けのプランと、中学生・小学生向けのプランを作っての推進となりました。
事業を行うにあたり年初より担当いただいた先生に興味をもっていただき、4月より赴任された校長先生も地域との連携やRESASサイト(地域経済分析システム、本プログラムでメインとなる内容の一つ)の使用に対してご賛同を得ることができ、具体化されました。
岡山県ではコロナウイルスによる緊急事態宣言も一時発出されたことから、高校としての学習スケジュールや対外との連携など環境課題も発生しましたが、学校より極めて丁寧な調整と協力を得て、1日2時限、累計で7日間(合計14時限)にも及ぶ時間を補習枠より捻出しての実施となりました。
高校ではひとり1台PCの導入や、オンラインでのグループワーク(Googlle Jamboardの利用)、プレゼンテーション(Googleスライドの利用)も今までの授業ですでに扱っており、学習の素地はできあがっていました。
あとはテーマ設定を行い、RESASサイトの手ほどきと課題や要因の見つけ方、ブレインストーミングの活用など最低限のことを学習して、生徒自らが思う街の課題や解決策の提案を行いました。
今回のテーマは、地元である倉敷市が2021年4月より開始した「第7次総合計画」にもある人口増減に関するものとし、統計情報やインターネットにある情報を調べながら取り組みました。
本講座の狙いの一つには、通常授業やテストでは得られないグループでの自主的取り組みであるため、半分以上は自主学習として必要時に青年会議所メンバーや先生がサポートする形でした。
一般参集型の事業では、アイスブレイクやグループ毎に進行管理するファシリテーターが必要になりますが、授業として取り組めたことでクラスの雰囲気や生徒の個性も先生が把握されているため、メンバーの大量動員もなく、ほとんどはメンバー2名と担当の先生で対応することが出来ました。
生徒達は限られた時間の中で悪戦苦闘しながらも協力して作業を行い、前半終了時に中間発表を行ってアドバイザリーボード(いわゆる評価、助言者)からの助言を受けて更にブラッシュアップ。
最終発表では学校の先生方や青年会議所メンバー、メディアを集めた前で、緊張しながらも自らの考えを伝え、その成長ぶりをみることが出来ました。
社会の多様化にともない、学校教育にも様々な取り組みが求められる中で、どの学校も手探りで教育活動を進めている状況にあります。
そのような中でJCIをはじめ地域の方々が学校教育に参画してくださることは非常にありがたいと感じています。
本校で実施した本事業の主眼は「データの活用能力の育成」と「プレゼンテーション能力の育成」にあり、まずはこの目的の達成に特化して仕組まれたプログラムであったということが魅力的でした。
また、ファシリテーターとしてもご協力いただいたJCIのメンバーには、以前から「総合的な探究の時間」を中心に本教教育に関わってくださっており、プログラムの構築段階から様々な要望に応えていただいたことも、本事業をより効果的なものにしたと考えています。
これからの社会を生きるうえでは、教育課程上の授業においても、情報を客観的に分析し、その違いや結果を誰に対してもわかりやすいように伝える能力の育成が求められます。
個々の授業においてこれらを育成していくことは、多忙化を極める教育現場では困難な状況にあり、本事業が様々なバリエーションを経て、多くの教育現場で活用されることが望まれます。
本講座の前提には、Society5.0に適応した人財がより多く輩出されるように、教育環境を新しく整えていくという担いがあると考えています。
そして、社会の進化に比べて、現在の教育は同じように進むことが難しい状況にあると推察されます。
現在の基礎科目も大変重要であることは勿論、それに加えて新しい取り組みを行うのは予算もエネルギーも必要になるからです。
今の教育を支え、限られた人数と時間の中で戦う先生方の中には新しいことへのチャレンジに苦慮されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その一方で、ひとり1台PCの導入や、それを利用した授業、プログラミングなどの新しいカリキュラムなど、教育環境は着実に次のステージへと整いつつある部分もあります。
青少年の育成を、教育機関のみに頼るのではなく、地域も一体となって、応援や協力する体制をつくれればと感じていました。
今回の講座は、コロナ禍で課外授業や外部接触を極力少なくしたもので構築しました。
そして、事業予算なし、動員なしでの実施をすることができました。
これはメンバーの少ないLOMでも実施可能と言えます。
そして何より、高校の授業内で行われたことで、今後、学校主体でも企画することのできる、持続可能なモデルとして実践できました。
STEAM教育の理念は高いものですし、今回の事例がその求めるものに到達はしていないかもしれませんが、テーマの設定内容や基礎学科では教わらない知識や手法を盛り込んでいけば、その幅は広がりますし、期間や対象学生によっても膨らんでいきます。(実際、3月に地元中学校で行った別の事業プランを受けた生徒が数名このクラスにいて、連続してChallenge University With STEAMを受講したことになります。)
また、テーマによっては理数教育のみならず、社会や国語などの文系科目を追及していくことも可能です。教育機関と地域の組み方によって、学生は地元を知り、国を知り、課題への対応の仕方を身に着けた上で社会に進めるようになります。
この手法に限らず、地域にあった育成環境を作り続けることの大変さと必要性を改めて確認できた事業でした。
この事業は設定したテーマに対してのゴールが作りにくく、それに必要な手がかりや解決のためのヒントも各グループの進み方によって異なります。
どこまで想定して広く深く準備を行うのか。
今まで実施してきた事業とは、一味違う苦労があったように思います。
また、準備したものを積極的に出すことができないことも、その場で質問されて回答ではなく気づきやヒントに留めることも、苦慮した点でした。
その分、最終の発表会は多様性に富んだ、新しい成果と充実感をもたらしてくれました。本当にありがとうございました。
・一般社団法人児島青年会議所
直前理事長 片山 了介 君(公益社団法人日本青年会議所 次世代教育推進委員会 委員)
・出向の動機
「出向に対して、LOMや地域への「直接的な」メリットや還元を行う事例ができれば、LOMの運動方針や出向制度への意識が変わり、今後のLOM運営の幅を広げることができると考えたから。」
・所属LOM
一般社団法人児島青年会議所(中国地区岡山ブロック協議会)
URL http://www.kojima-jc.net/