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2020年度 第69代会頭 石田 全史 所信

公益社団法人日本青年会議所 2020年度会頭所信 石田 全史

青年会議所には、素晴らしい出会いがある。
出会いには、人の未来を変える力がある。
私は、誰かの未来をより良く変える存在でありたい。

 

 

【はじめに】
10年後の未来を想像してください。

 

あなたが暮らす地域の文化は誇りとして受け継がれ、産業は人びとの生活を支える基盤となっている。まちを訪れる人やそこに暮らす人が増え、人びとの所得と幸福度は向上し、地域経済には好循環が起きる。そして地域から日本を支える本来の姿を取り戻している。
我が国は、日本人としての誇りと公共心を持った国民で溢れ、新たな命の誕生に心を踊らせている。権利の行使と義務を果たす責任を自覚した国民によって、誰もが何度でも挑戦できる持続可能な社会が実現し、自主自立国家を確立している。
世界の中の日本は、他国からの圧力に屈せず、自らの力を持って、世界との関係を深化させ、世界の恒久的平和に貢献する国となり、世界からの尊敬と信頼を集めている。

 

私は令和という時代に、このような未来を描いている。
地域社会の再建が、明るい豊かな国家を築く、そして世界に貢献する日本へ。
描くことができる未来は、必ず実現できると確信している。

 

厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたい。そのような願いが込められ、令和という時代は幕を開けた。
悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然、このような日本の国柄を次世代へ紡いでいくために、物心両面において豊かな令和の時代を創っていかなくてはならない。
これこそまさに、我々青年に課せられた使命である。

 

 

【組織の現状から組織の改革への決断】
1960年日本青年会議所は、そのあり方を再確認する必要に迫られ「JC三信条」「定款」「JCIクリード」を基礎に、幅広い層からなる会員の思想を束ねた「綱領」が制定された。綱領は、組織としての理念を確立し、会員個人の運動目標を明確に位置づけた。
そして地域社会、国家、国際社会が抱える問題とその解決に向けた責任を自覚することを前提として「明るい豊かな社会を築き上げよう」と、行動指針を定めたのである。
我々は、常に自己研鑽に励み、努力を惜しまず、地域社会を改善する政策を掲げ、市民意識を変革する運動によって、故郷を少しでもより良くしたいと志を抱き、何事にも挑戦する青年の集いだと信じている。
しかしながら年々会員数は減少を続け、存続すら危ぶまれる会員会議所も複数存在している。政治や行政に主体性を持って参画し、責任ある発言ができる青年の存在が失われてしまったら、その青年が暮らすまちの未来はどうなるのだろうか。誰かが何とかしてくれるという根拠のない妄想に逃げ込み、他人事と捉えていたら、恐らく近い将来には一部の地域にしか存在しない組織になってしまうだろう。
我々はこの現実を悲観的に捉えず、時代に即した組織へと改革できる絶好の機会であると受け止めよう。会員会議所の抱えている事業や運動が、会員減少や組織縮小によって、負担と感じるのであれば、先入観を捨て勇気を持って、整理する決断も必要である。その際、仮に事業や運動がたった一つになっても、全く恥じることはない。むしろ会員の企業、家庭生活に悪影響を及ぼし、名ばかりの会員で連なる組織になることは、さらなる衰退を招いてしまう。まちの経済的発展と会員企業の成長、人びとの生活の質の向上を成し遂げるための政策を掲げ、それぞれの地域に根ざした草の根運動を続けることこそ、組織への信頼獲得と会員拡大につながると信じている。

 

 

【地域社会・国家・国際社会における経済の現状】
日本における青年会議所運動がはじめて灯された1949年9月、東京青年商工会議所はその設立趣意書において「苦難を打開してゆくために採るべき途は、国内経済の充実と国際経済との密接なる提携」と宣言した。70年以上の月日が流れ、日本も世界も大きく変容し、国民の価値観も青年会議所を取り巻く環境も変化を続けているが、今なお色褪せぬ宣言である。我々の採るべき途を愚直に進んでいこう。

 

地域社会に目を向ければ、就業者の約6割が三大都市圏以外の地方で働いており、名目GDPの約半分を占めている。日本経済の成長には、地域経済の再建が欠かせない。しかし三⼤都市圏に労働力や投資が集中、地方は高齢化と過疎化が進行し、超人手不足に陥っている。豊かな自然や文化など、地方にはこれから開花する可能性を秘めた価値が眠っている。地方への投資が、地域経済を再建し、日本経済を再興へと導くのである。
そして我が国の経済は、2012年時点から名目GDP58兆円、実質GDP37兆円の増加と過去最高を記録。就業者数は383万人増加し、なかでも保育の受け皿拡大等によって女性の就業者が288万人増加した。若者の失業率は4.6%と、実に1992年以来の低水準にまで回復。賃金については、4年連続で2%程度の高い賃上げが実現し、5年連続で最低賃金も引き上げられてはいるが、実質賃金がマイナスとなっている点には注意が必要である。経済力について幾つかの指標があるが、一人当りの購買力平価GDP(USドル)のランキングでは、日本はOECDに加盟する34カ国の中で18位と高くはない。我々の責任は物心両面の豊かさを実感できる国家経済を築いていくことにある。
国際社会を見渡せば、日本にとって最大の輸出相手国であり、中国に次ぐ輸入相手国であるアメリカと、世界第1位の経済大国になりつつある中国との米中貿易紛争の緊張が、再び表面化する可能性を無視することはできない。特に世界の実質GDPに占めるアジアのシェアは、2050年には48.1%へと激増すると予測されており、アジア諸国との連携はますます重要になる。我が国は、アメリカにとってアジアにおける最大の外交パートナーとして存在感を発揮しているが、アジア諸国の成長速度が西側世界を上回る「イースタニゼーション」が進むという分析を踏まえ、世界における経済大国としての影響力を維持できるよう、国際社会との親密な関係を深めていかなくてはならない。

 

「日本近代経済の父」と称される渋沢栄一は、企業の経営における道徳の重要性を説き「真の富とは道徳に基づくものでなければ、決して永くは続かない」と述べている。この「道徳経済合一説」は、持続可能な開発目標(SDGS)の概念にも通じる。企業の経営の根底には、人の役に立ち世の中の役に立つという道徳が欠かせない。そして我々は綱領に沿って社会的・国家的・国際的な責任を自覚し、好循環を起こす人と企業による地域経済の再建と持続可能な成長戦略による国家経済の再興、そして民間外交と国際協力による国際社会との連携に全力を尽くし、経済的発展と幸せを実感できる、全ての人びとが笑顔で生きがいを持ち、暮らしていける日本を築いていこう。

 

 

【世界から注目される2020年】
近代オリンピックの提唱者であるピエール・ド・クーベルタン男爵は、オリンピックのあるべき姿(オリンピズム)として「スポーツを通して、心身を向上させ、さらには文化・国籍など様々な差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神を持って理解し合うことで、平和でより良い世界の実現に貢献する」といった理想を掲げた。近年では、「環境」という柱を加え、世界の平和と地球環境について考える機会としている。
この4年に一度の世界的なスポーツを通した平和の祭典に、205の国と地域から選手やそれを応援する人びとが日本に集まる。
我々の組織においても、JCI世界会議が横浜の地で開催され、128の国と地域から世界の恒久的平和を希求する仲間が日本を訪れる。我々は一丸となっておもてなしの精神を持って迎え入れよう。地域と世界がつながる時代において、横浜大会へ当事者意識を持って関わることは、国際会議の経験や海外の会員との交流といった、実りある機会となるに違いない。多様性と包摂性を持って、世界から集まる人びとが、日本という国の魅力を感じられる機会を創出していこう。

 

 

【人びとが自然と集う組織への進化】
この10年で人びとの社会的価値観は大きく変化した。一方で会員を受け入れる我々の組織体制は変化してきただろうか。拡大手法や成功事例は幾つも存在しており、成功している会員会議所も少なくないが、近年卒業者数と年間退会者数の合計値を入会者数が上回った年は、残念ながらない。そこで女性や20代を対象とした拡大戦略の立案を提案したい。女性会員の比率8%や平均在籍年数4年、入会者の平均年齢33歳、女性や20代の会員はこの組織にとって貴重な存在であり、我々の事業や運動により良い変化を起こす可能性を秘めている。日本は男女格差が大きいジェンダー後進国であり、青年が自らの意思と選択によって活躍できる、多様性ある社会を実現していくためにも女性会員の拡大に力を入れる。青年に成長と発展の機会を提供し、社会で活躍できる人材を輩出する組織であり続けるためにも、女性や20代の心を掴む、柔軟かつ解放的な組織へと進化させる。
日本の青年会議所の未来を見据え、6万7千人を超える会員が存在していた時代から現在の組織の規模を踏まえ、社会により良い変化を起こす人材を育成する組織体制の構築や役割の明確化、さらには会員が減少しても社会に大きなインパクトを与える運動を展開するための連携体制の構築など、最大限の効果を発揮できる組織改革も必要である。
地域における優秀な若者の流出を防ぐために、高等教育機関や若年層の社会人を対象とした起業家の育成に力を入れなければならない。そのような若者と全国各地で地域の未来を共に創り上げるというプロセスから、故郷への誇りを持ち、社会に貢献する人材を育成していこう。いずれは、我々と一緒に活動する仲間となるだろう。会員拡大戦略として、全国各地で社会に貢献する起業家の育成事業を展開していこう。
また、時代の変遷期において改訂されてきたJC宣言文について、社会の変化や会員を取り巻く環境からも検証する必要がある。そして改訂が必要であるという答申がなされれば、我々が描く理想の未来を明確に表現したJC宣言文改訂への議論を進める。さらには2010年代運動指針の検証を行い、新しいJC宣言文との整合性を図り、2020年代行うべき運動の方向性を示した中期戦略を策定する。

 

日本青年会議所の役割の一つに、会員会議所のリーダー育成を目的とした成長と発展の機会を提供するというミッションがある。近年は理事長経験者から「就任前にもっと経験を積み、多くの知識を得ておくべきだった」という声を耳にする機会が増えている。
それらの課題を解決するために、地域により良い変化をもたらす力と、組織力を最大化できるマネジメント力を兼ね備えたリーダーを育成するカリキュラムが必要である。また平均在籍年数が4年という由々しき事態を打開するためにも、入会間もない会員の底上げに力を入れ、各地会員会議所の組織力の向上に努める支援も必要である。
観光庁のデータによれば、5年前には約1340万人だった外国人旅行者数は、現在では約3100万人を超えている。最近では地方においても、外国人旅行者の姿を見る機会が増えており、その受け入れ環境の整備が急務である。
地域の国際化に向けた課題を見つけるためには、世界80を超える国と地域から海外の青年会議所のリーダーが集う国際事業の開催地への立候補も魅力的な選択肢である。世界から集まる同志から、地域の印象について本音を聞ける機会でもあり、その地域の魅力や文化などを伝えることもできる。人と人との交流は、地域と地域を結ぶ可能性を充分に秘めており、自身の価値観においても大きな変化が生まれる経験になることを約束する。
こうした国際事業へのボランティアを活用することで、地域の国際化の課題解決に向けた研究の一環として、積極的に関わってほしい。
この国際事業で得られる知識や経験は、グローバルネットワーカーとして、実社会で役立てていくこともできる。世界情勢を理解し、俯瞰的な視点を持つ日本人として国際化が急務な地域で活躍することを期待している。またこの一期一会の出会いが、持続的な関係となるよう、関わった人びとが再会できる機会とその仕組みを創出する。

 

年々会員は減少傾向にあるが、個人能力開発のJCI公式コースやJCI推奨コース、日本JC公認プログラムの受講者は、確実に増えている。その背景にはこの組織の目的と意義、歴史を理解したいという意欲を持った会員の存在がある。さらには、組織に関する知識の習得だけではなく、ビジネスでも役立つスキルを身につけることもできる。また、会員でなくとも受けることができるプログラムも存在するため、これを活用し会員拡大につなげてほしい。そしてこの制度は受講して終わりというわけではなく、トレーナーとして登録すれば、実践することが可能である。より多くのトレーナーを輩出できる仕組みと活躍できる場を創出しなければならない。

 

青年会議所の魅力の一つに、事業計画と予算の作成がある。会社においても同様の業務はあるが、青年会議所との明確な違いは二つある。一つ目は利益といっても、公の利益を追求すること、二つ目に資金は金融機関や市場からの調達ではなく、会員より預かっている会費や企業からの協賛金を利用することである。さらには事業構築のプロセスを通して社会により良い変化を起こす人材を育成するとともに、社会にアクティブ・シチズンを生み出していくという特徴もある。青年会議所の事業実施と予算執行は、会員や共感を抱き協力してくれた方々の想いが詰まったものであることを忘れてはならない。
社会課題の解決に向けた政策の立案、人びとの意識や行動に変化を起こす事業の構築、運動を広める戦略を学べる機会を創出する。事業や運動の成功事例となるロールモデルを共有するとともに、活用できる支援体制を構築する。また全国各地の会員会議所が抱える継続事業の検証や改善策など、運動の最大化に貢献できる相談窓口を設置する。

 

 

【社会的な責任の自覚】
国家は地域の集合体であり、地方における人口減少は地域経済規模の縮小に留まらず、日本経済の成長をも妨げてしまう。日本経済の底上げを図るために、地域経済を再建する必要がある。都道府県の枠を超えた広域経済圏の確立に向けて、青年としてのビジョンを描こう。日本には四季があり素晴らしい風景や自然も存在している。地域の文化や特異性を活かしつつ、インバウンドを促進させる時代に即した戦略も必要である。我々は政治や行政に頼らず、自立した豊かな地域を実現するために、そこに住み暮らす人びとの意識を変革する運動を進めていかなくてはならない。また、総務省が発表した2019年4月期の失業率は2.4%となり、厚生労働省が発表した有効求人倍率は1.63倍である。雇用情勢は確実に改善していると言われるが、地方と都市部の賃金格差等により生産年齢人口の流出が進み「労働力喪失時代」の到来が危惧されている。その労働力を補うために外国人労働者をさらに受け入れる政策には、警鐘を鳴らさざるを得ない。つまり我が国の未来を考えた時、優先すべきは地方企業の労働生産性を高める支援策と所得向上の政策による都市部との所得格差を是正することである。
政府が主導し産学官連携で実現を目指すSOCIETY5.0によって、近い将来には情報化社会を進化させた「超スマート社会」が訪れる。地域の課題を解決すると同時に、変化に伴って生み出される「新しい価値」には、ビジネスチャンスも潜んでいる。
一方で地方においてシャッター通り商店街が、地方都市の再開発の障壁となっている。空き家等対策特別措置法などの現行法の効果や各種取り組みを検証し、まちづくりの弊害となっている不動産の利活用を促進させる新たなビジネスモデルや法改正の提言をも視野に入れた解決策の構築が急務である。

 

2015年9月国連サミットにて採択されたSDGSを受けて、同年11月、世界会議金沢大会開催期間中にJCIと全ての国家青年会議所は、SDGSにコミットする「金沢宣言」を採択した。2019年1月には、外務省とSDGS推進におけるタイアップ宣言に署名し、全国の会員会議所とSDGS推進宣言を総会にて審議した。2030年までに「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するために、次世代への推進、達成に向けたプロジェクトなど協働で進めることを宣言したものである。
SDGSの推進をより加速させるために、全国各地のネットワークと組織力、行動力を発揮しなければならない。日本で一番SDGSを推進する組織として実績を積み、世の中から認知されれば、社会に与えるインパクトは絶大なものである。2019年に引き続き全ての事業と運動にSDGSを紐付けして力強く推進する。
すでに世界中の企業がSDGSを経営戦略の中に取り込むことで、財務情報だけでなく環境・社会・ガバナンスに関する取り組みも考慮したESG投資を呼び込もうと力を入れている。SDGSを企業の経営戦略に入れることが、必然となる日も近いだろう。全国のつながりと会員企業の経済活動を通して、社会に存在するあらゆる課題を解決しながら、持続可能な社会の創造に貢献していこう。

 

日本青年会議所は、2018年より国の「知的財産戦略ビジョンに関する専門調査会」に参画してきた。従来の「知的財産立国」を基盤に、世界から共感を得られる新たな「価値デザイン社会」の構築に取り組む。日本の社会的価値を世界に向けて高めていくためには、「脱平均」の発想で尖った才能を持つ個人や挑戦する企業への支援を強化し、チャレンジを促していく環境整備が必要である。多様性や多面性を重視しながら、分散した多様な個性を融合し、消費者側のリアルタイムな評価をもとに「新しい価値」を構想しオープンイノベーションを加速させていくことで、世界からの共感を集め、日本への信頼を獲得することができる。地域に「新しい価値」をデザインし、地方創生への道を切り拓こう。
またあらゆるモノが、データ化される時代への備えも必要である。ITを活用し情報を集めた企業が競争優位に立った時代から、「リアルデータ」の活用がビジネスの主役になる時代へと突入している。我々の周りには、デジタル化されていない膨大な物的資産と経験や勘といったアナログ情報が存在する。人の経験や勘といったアナログ情報のデジタル化とデータ分析によって「新しい価値」を産み出すデジタル変革が、これからの企業経営に必要である。単なる業務の効率化ではなく、企業経営者の意思決定の高度化が可能になるだろう。デジタル変革によって、企業・産業・社会に変革を起こそう。

 

国や地域を愛する想いから、社会のあらゆる分野において活躍する傑出した若者を発掘して栄誉を讃えるとともに、世に向けて広く発信することによって活動の域を拡大させ、社会により良い影響をもたらす、TOYPへと進化させる。
国際的に最も盛んなスポーツとされるサッカーを通して、地域の未来を担う子供たちに「グッドルーザーの精神」を伝えるJCカップは、地域間の交流人口増加やコミュニティの活性化など、魅力ある地域への発展のために開催してきた。日本国内の大会から日韓戦の実現、そしてアジア大会の開催も視野に大会規模の拡大を目指す。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が行われる特別な年でもある。特にパラリンピックの成功は、日本が世界に誇るレガシーとして未来へ紡がれていくものである。ロンドン五輪の成功例に学び、日本の社会的包摂の実現に向けて、オリンピック・パラリンピック競技大会への支援策を模索していきたい。

 

 

【国家的な責任の自覚】
我々は出産・子育てに携わる当事者世代の切なる声を集約し、少子化対策をテーマにした国民討議会を通して、厚生労働省へ提言を行ってきた。日本の出生率は3年連続で低下し、2018年の出生数は過去最低を更新し出生数から死亡数を引いた人口の自然減は、44万4085人で、過去最大の減少幅となった。ベビーブーム世代を境に、出産可能な年齢にある女性がさらに減少することからも出生数の増加は急務である。しかし2019年度の国の一般会計歳出101兆4571億円のうち、少子化対策の費用は、わずか2兆3440億円であり、国の少子化対策が劇的な効果を上げる可能性は低い。出会い・結婚・妊娠・出産・育児・保育・教育に関わる適切な支援策や他国において既に効果が出ている政策を参考に、子供を産み育てることが幸せと感じられる社会を創ることが必要である。子供は成長すれば、社会の構成員として税金や社会保険料を支払うようになる。一方で、この課題は一朝一夕で解決できるものではない。国に頼るだけでなく、高齢者や子供などを支えていく責任世代であることを自覚した上で、子育てに対する支援は、国家の繁栄につながる投資であり、成長戦略としての姿勢を崩さず、引き続き提言する。

 

国民の政治参画において、衆議院・参議院の国政選挙や地方選挙の投票率は年々低下の一途を辿っており、特に若年層の低投票率は大きな課題である。選挙における投票棄権とは、地域や国の未来への無関心であり、有権者が果たすべき責任の放棄である。2016年の参議院選挙では、はじめて18歳以上に選挙権が認められたことで、与野党各党は、これまでにない若年層を意識した政策を掲げた。若年層の投票率が向上すれば高齢者偏重の政治が変わる可能性は充分にある。投票行動が自身の未来につながるという事実を認識し当事者意識を育む若年層への主権者教育を確立しなければならない。
海外に住む日本人を対象にインターネット投票の実証実験がはじまり、2020年には公職選挙法改正に向けた動きもある。投票率向上のための一つの有効な手段としてネット投票は推進していかなければならないが、投票率という数字の上昇だけでなく、政治参画への意識も高めていかなければならない。近い将来には、憲法改正の国民投票が行われる可能性もある。その際に国民が主権者としての責任を自覚した一票を投じることができるよう、より一層の啓発活動に力を入れる。

 

我が国の安全保障について、周辺諸国による軍事活動の活発化といった国際情勢の緊迫化への対応、サイバー攻撃の規模や影響の拡大といったテクノロジーの進化による新たな脅威への対策も練らなければならない。さらには、生活面において、国土・食料自給率・エネルギーやインターネット犯罪などの対策も含めた議論が必要である。日米同盟を基軸とする安全保障の重要性は変わらないが、米中の経済戦争が激化している中、世界最大の経済大国へと成長する中国との関係は今後ますます重要になってくる。戦略的互恵関係のさらなる深化はもちろん、果たすべき役割を考えなければならない時期に来ている。
内閣府が2018年に行った世論調査では、自衛隊に「良い印象を持っている」と回答した人が全体の約9割を占めた。東日本大震災や熊本地震における自衛隊の救援活動は、国民のみならず世界中から称賛されている。そのような自衛隊の重要性と任務が拡大する中、現行憲法における自衛隊の位置づけや集団的自衛権についても、イデオロギーに依らない冷静な国民的議論を巻き起こしていくことが、我が国の防衛力の確立へとつながる。

 

1971年長崎で開催された全国理事長会議において「北方領土返還促進決議」が採択された。それ以降、時代の担い手である青年として、国民への北方領土問題解決に向けた啓発運動に努めてきた。我々は、四島返還と日ロ平和条約の締結に向けた運動を展開する最後の砦であると言っても過言ではない。また文部科学省の新学習指導要領に基づき2020年4月から小学校で使われる全ての社会科の教科書には、北方領土は「日本固有の領土」と明記される。これを好機と捉え、啓発運動により一層の力を入れていく。
また我が国は誰でも自由に不動産を所有することができるが、人口減少が進行する中、外国人が容易に不動産を取得できる現状に、国が行う重要な社会インフラ整備と国防の観点から強い危機感を持っている。海外の事例を学び、国内における外国人の不動産所有と利用に関する規制を設けることは、国土と国民生活を護るという視点から重要である。

 

我が国の国土面積は全世界のたった0.28%であるが、 全世界の活火山の7%は日本に存在し、M6以上の地震の20.5%は、日本で発生している。内閣府が想定する大規模地震には、首都直下地震となる相模トラフ沿いの海溝型地震と中部圏・近畿圏直下地震となる南海トラフ地震があり、30年以内にどちらも70%の確率で発生すると予測されている。我が国の中枢機能や重要文化財、太平洋ベルトに位置する国を支える産業が、この危険予測地帯に位置している。これらの地域以外でも大規模な災害が起こる可能性は充分にあり、近年では火山の噴火や豪雨など人びとの生命と財産を脅かす災害は多発している。自然の力の前で人間の力は無力であり、誰にも食い止めることはできない。しかし被害を最小限に食い止める「減災」という考え方も存在する。災害発生時のメカニズムを知り、備え方と発災時の対処を学ぶ「防災と減災」を義務教育化に向けた運動として確立する。国民の生命と財産を護るために、経済的価値と防災と減災に関する備えといった両方向の視点を持って、この国のかたちをより良いものへと変えていこう。
また、これまで発生した災害に対し、全国の会員が一丸となり被災地への支援を行ってきた実績がある。NPO団体・民間企業・災害医療機関や防災と減災のエキスパートなどパートナーを拡充して、コレクティブ・インパクトを意識したプラットフォームとなり、有事の際に迅速かつ効果的な被災地支援が可能となる組織体制を構築する。

 

これからの世代の平均寿命は100歳を超えると予測されており、超高齢化社会の先にある長寿化社会は目前に迫っている。社会的包摂の視点から、育児をしながら働くことを望む女性、退職後の知識や経験を活かして働きたい高齢者、障碍のある方や難病を患っている方々が、生きがいを持って働ける環境や職場の創出が必要である。企業が発想を転換することで、我が国に眠る労働力が開花する可能性がある。また、一度社会において失敗しても再チャレンジできる環境を整えるために、現行法の課題を見つけ、法整備に向けた提言をまとめる。一般的な教育やモノ・サービスを手に入れにくく、社会から疎外される恐れがある相対的貧困の解消やいつでも学び直しができるリカレント教育の確立も同時に進めていかなければならない。さらには全国には20歳〜34歳の若年無業者が約48万人、40歳~64歳でひきこもりの状態にある人が約61万人とも言われ、地域の実態に即した自立就労支援の充実も急務である。全ての人びとが活躍できる社会環境を整備し、地方の労働力人口の確保から、東京一極集中の是正につなげていこう。
人は必ず死を迎える。その時まで生きがいを持ち続け働ける社会、何度でも挑戦できる社会を目指し、世界に先駆け超高齢化・長寿化社会の先進事例を創っていこう。

 

 

【国際的な責任の自覚】
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表している「世界競争力ランキング」によれば、日本の総合順位は64カ国中30位と低迷している。なかでも評価が低かったのが「起業家精神」と「国際経験」であった。しかし我々は、国際的なつながりをもつ組織であり、希望すれば誰でも国際の機会に触れることができる。そのつながりを活かし、世界に向けて人や企業の進出を後押しすることも可能である。世界には、日本の企業の進出を心待ちにしている国や地域が存在している。日本の文化や精神性といった魅力を人と企業の進出により、民間外交と国際協力を通して、日本と世界との距離を近づける。
また、我が国の悲願である旧敵国条項の削除に伴う国連憲章の改正手続きや常任理事国入りを実現するために、政府の途上国への開発援助とSDGS達成に向けた我々の運動の実績からも外務省と連携し、国際連合へ働きかけていくことも我々の責務である。

 

大東亜戦争敗戦後、日本人は食糧難と貧困に喘ぎ、混乱の中で苦しい生活をしていた。アメリカをはじめ先進諸国から生きるために必要な援助物資や「ガリオア・エロア資金」などの援助を受けた。1953年には、世界銀行から低金利の融資を受け、黒部第4ダムや東海道新幹線、東名・名神高速など経済発展に必要な社会基盤を整備した。我々は世界の国々に支えられ経済大国まで成長できたことを忘れてはならない。当時支援してくれた国々は、自国の利益のために手を差し伸べたのだろうか。同じ地球で苦しむ人びとがいるのであれば、見返りを求めず手を差し伸べることも必要である。そして未来を担う子供たちには、世界の現状を理解し、経済大国としての責任を自覚した、世界に貢献する日本人として、成長できる実体験の機会を創出する。
2015年からSDGSゴール6の達成に向けて「SMILE BY WATER」事業を推進し、アジア・太平洋地域の「水と衛生」に関する問題への解決に取り組んできた。国内での啓発運動により活動資金を集め、支援を必要とする国のリサーチを行い、持続性を担保しながら民間開発支援をしている。「SMILE BY WATER」のブランド化を図り、支援を必要とする国ごとにパートナーを選定し、アジア・太平洋地域の「水と衛生」に関する課題解決を加速させていかなければならない。

 

国際通貨基金(IMF)は、2014年衝撃的な事実を発表していた。世界のGDPを購買力平価で測った場合、中国が世界最大の経済国へ成長を遂げ、世界4大経済国のうち、3カ国がアジアの国であった。さらに2025年には、世界の人口の3分の2がアジアで暮らしていると予測している。人口で勝るアジアで急激な経済発展が実現した結果、世界のパワーバランスはアジアへとシフトしている。
我々は中華全国青年聯合会と未来志向な関係を構築するため、訪中・訪日事業を行ってきた。日中両国の次世代を担う青年の相互の理解は、これまで以上に必要になる。両国の経済的発展とアジア及び世界の平和に向けて、関係を深化させていかなくてはならない。また東南アジアで活動する国家青年会議所は、JCI AWARDSの受賞や女性の会員の比率など、我々が見習うところがある。アジアにおける国際的課題を共有するとともに、ビジネス交流を通して、明るい豊かなアジアの未来を共に描く機会を創出する。
またロシアに対しては、2016年の日露首脳会談において、我が国は8項目の「協力プラン」を掲示し、高い評価と賛意が表明された。その後は、JBIC・RDIFによる10億ドルの共同投資枠組みの設立、デジタル経済の実現に向けた協力関係など、互恵的な日露経済関係を進展させている。そして2019年9月よりロシア企業や研究所の常勤者への最長5年のマルチビザの発給や学生のビザ申請の簡素化の措置がなされる。
政府の打ち出したロシアへの「協力プラン」を加速させ、両国の発展のために、日本とロシアの起業家との経済交流や学生同士の文化・教育交流にも力を入れなければならない。極東地域の平和を実現するために、積極的な民間外交を推し進めよう。

 

国際の機会を各地の会員会議所へ提供するためには、JCIとの連絡調整が重要である。我々が位置するアジア・太平洋地域以外にもアフリカ・中東、アメリカ、ヨーロッパ地域会議に登録さえすれば、会員なら誰でも自由に参加することができる。海外の青年会議所の実施する素晴らしい事業や運動に触れることができるという、学びの機会も存在する。そして先人たちの弛まぬ努力によって、世界中からの信頼を集め、日本のパスポートは、190カ国と単独世界一となった。これを活かさない手はない。世界を旅すれば、人生における価値観が変わる瞬間が必ず訪れる。
国際会議における他国の会員との交流の機会を掛け替えのない時間とするために、言葉の壁を超えて通じあえる交流が必要である。JCIという組織が描く世界の恒久的平和に向けて、一体感を抱くことができる機会を創出する。

 

 

【原理原則を意識した効率的な組織運営】
マスコミの使命は、不偏不党の立場から国民に正しく情報を伝え、社会をより良い方向へ導くというものである。しかし、既存のマスコミは相次ぐ不祥事により、信頼性を低下させ、一方でインターネットやSNSの普及により、フェイクニュースが蔓延している。誤情報の拡散は人の命を奪う可能性すらあるにも関わらず、法規制はまだ整っていない。利益追求のために事実を捻じ曲げて報道し、デマを流しておきながら、言論の自由を盾にすることは決して許されない。我々は真実を報道する機関であることを第一義とし、一般報道のファクトチェックはもちろん、欧米諸国に比べて遅れているメディア・リテラシー教育について、教育機関や家庭における学習の必要性からも教科化を見据えた運動を確立する。そして人びとに有益なコンテンツを充実させ、報道機関としての存在価値を高めていかなくてはならない。またクラウドファンディングとの連携により、公益事業に対しての寄付については、税制控除を受けられ、資金調達と運動発信が同時に可能となる「ふるさと」納税に変わる画期的な報道機関へと進化させ、社会の発展に貢献していきたい。
そして組織の認知度や存在価値を高めるために、組織のブランディングに取り組む。
認知度やイメージといったものは受け手が判断するものであり、受け手が必要とする、或いは心の琴線に触れる情報を届ける広報戦略が必要である。我々は、2019年に報道機関として大きな一歩を踏み出している。ブランディングの視点で練り上げた新しい広報戦略と報道機関が連携することで、組織の認知度と存在価値を高めることができる。各地の会員会議所の活動は素晴らしく、発信する素材と土壌は整っている。我々は、総合調整機関として、地域を世界へ発信し、社会にインパクトを与え、組織のブランドを確立する。

 

日本青年会議所の予算の約9割が会員からの収入である。持続可能な組織として維持していくためには、会員数の拡大と並行して、外部からの収入の獲得が必要不可欠である。これは全国の会員会議所でも同様のことが言える。我々の運動に対して、外部からいかに共感を得るかを企画から練り上げ、クラウドファンディングを活用することでこの課題の解決に挑戦する。内外からの収入を予算執行するにあたっては、厳正な審査を行い、会計の透明化と財務体質の健全化を図らなければならない。
一人の無責任な行動や言動により、組織全体の信用が失墜する時代である。昨今の企業不祥事からも明らかなように、単なる法令遵守ではなく、倫理的責任を追求される事例もある。その倫理的責任を果たすためにも、組織のコンプライアンスへの意識を高め、徹底していくとともに、ガバナンスの強化も図っていく。

 

青年会議所はその名の通り、物事を会議で決定するという特徴を持つ。我々の会議には合議制による民主的な意思決定という良いイメージもあれば、長時間にわたる会議、効率が悪いといった負のイメージも残念ながら耳にする。厳正な議論を積み重ねて物事を決定するというプロセスを通して、信頼関係が築かれていく。会員企業や家庭生活に悪影響を及ぼさぬよう、効率的な会議運営のあり方を検証し改善しなくてはならない。そして活発な議論を巻き起こし、より良い運動をつくる貴重な時間となるように心がけていこう。

 

 

【組織連携による運動の最大化】
日本青年会議所は、本会と10の地区に編成された地区協議会、各都道府県に存在するブロック協議会から構成され、全国各地の692青年会議所を会員として成立している。世界を見渡せば128の国と地域に国家青年会議所が存在し、世界中には約15万5千人の仲間がいる。卒業された先輩諸兄姉も含めれば、世界の恒久的平和を希求する人びとが想像もつかない数で存在している。これこそが組織の最大の強みである。地区・ブロック協議会は、本会の運動を推進することだけに留まらず、会員会議所から一番近い存在として、心を寄せてほしい。そして我々は、密なる連携によって運動を最大化していこう。
意識変革運動とは、人びとの意識や行動を変えること。一人の発想に共感する者が集い、やがて大きな声となる。これが運動のはじまりである。その運動の拡大と継続が人びとの心を動かし、社会を変える起点となる。我々は自己の利益を省みず、勇気を持って社会のあるべき方向性を示し、責任ある発言ができる唯一無二の組織であることに誇りを持ち、運動を続けていこう。

 

 

【おわりに】
2011年の東日本大震災は、これまで漠然と描いていた未来が崩壊した瞬間だった。
広範囲に渡る激震と巨大な津波により、多くの生命や財産が失われた。さらには原子力発電所の放射性物質の飛散により、故郷は消滅の危機に瀕している。
多くの方々が、地震や津波で犠牲になった。
その中には、志半ばで帰らぬ人となった仲間もいる。

 

「生きる」ということは、当たり前のことではなく、奇跡の連続である。そして故郷は、唯一無二の心の拠り所である。どのような状況においても故郷を護ることができるのは、そこに住み暮らす人びとしかいないのだ。これが、震災で得た私の教訓である。
2020年には、あの震災から10年目を迎える。未だ復興は道半ばであるが、復興へ一歩一歩と前に進んでいくことが私の生きがいであり、原動力でもある。

 

震災後、只々呆然と立ち尽くし、将来に対する希望を失い、絶望感に浸る日々を送っていた。そのような私に、現実を受け止め、未来を切り拓く勇気を与えてくれたのが、この組織で出会った人びとである。青年会議所どころではないと感じたこともあった。しかし、青年会議所がなくなったら、故郷の未来はどうなるのだろうかと自問自答を繰り返した。
そこで導き出された答えは、夢を語り、希望に満ちた、世界に誇れる故郷の未来を描くこと。そう決意したら、再び前を向いて歩き出すことができた。

 

気付いたら、一緒に活動する仲間が集まってくれた。

 

挑戦する前から無理だと決めつける、そのような先入観は捨て、大きな夢を語り、仲間を集めて、未来を創ろう。我々は、必ず変化を起こすことができると信じている。
己の信じた道を突き進む、真実一路が世の中を変えるのだと私は思う。

 

先入観を捨て
夢を描き、仲間を信じて、新しい時代を創りだそう
軌跡を紡ぎ、奇跡を起こそう

 

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