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公益社団法人日本青年会議所 2022年度 会頭所信 中島 土

JCなんかにまちは変えられない。
JCは二代目三代目のサロンだ。
こんな時代にJCなんてやってられない。


JCが、まちでこんな風に言われていることを、
あなたも少なからず耳にしたことがあると思う。


僕は悔しくてならない。


国や故郷がピンチの時に立ち上がり、
誰よりも先に動き出し、
家族も社員も守りながら、
前を向き続けた70年は嘘じゃない。


私たちの力はこんなもんじゃない。


大丈夫。


あなたもJCも、ここからだ。


私は、あなたとJCの力を信じています。

JCに所属するあなたは、あなたのまちをより良く変えていくポテンシャルを既にもっています。なぜなら、JCは、まちをつくる「運動」を、あなた自身が起こせるようにすることを使命としているからです。

JCは、まちや社会全体を青年の目線から幅広く捉え、問題のある仕組みを自ら見つけ、より良く変えていくことができます。ターゲットを絞った社会活動ももちろん素晴らしいのですが、持続可能な地域をつくるために、多種多様な、幅広い社会課題解決へ果敢に挑戦することがJCの特筆すべき強みです。

また、商売でつながり自社の利益を上げることを本質的な目的とするのではなく、メンバー一人ひとりが、できる範囲の中で社会へ無条件で奉仕をしようとする純粋な動機をもっていることも大きな特徴でしょう。

このような無償の愛を前提にしているからこそ、JCに所属する私たちは、まちや社会を具体的により良くし、幸せを生み出し続ける運動をつくることができるのです。その運動を起こすには、まちを形づくっている「仕組み」を変えていかなければなりません。仕組みを変えることで、地域は良くなり続け、社会は変わり続けることができます。

私は、そのような社会を変え続ける仕組みのことを「幸せを生み出し続ける装置」と呼んでいます。

40歳を目前とする今、人生はおよそ後50年そこそこで終わるでしょう。いや、もしかすると、今日、何かの拍子に終わりを迎えるのかもしれません。二度とない人生を考える時、もう一人の私が、私を突き動かします。

「このままで良いのか」

こんな厳しい時代の中でも、JCに所属し、まちを少しでもより良くしようと力を尽くすあなたは、故郷にとって尊い存在です。地位や名誉もかなぐり捨て、真心をもって世のため人のために汗を流すあなたこそ、まちの名も無きヒーローです。

二度とない人生をどう生きるべきか、一緒に考えましょう。そして、「幸せを生み出し続ける装置」をつくり出すために、一緒に行動を起こしましょう。



【JC運動とは】

青年会議所は、何をなすべきなのでしょうか。それは、JCI Mission(青年会議所の使命)にある、青年に「発展と成長の機会を提供する」そして、青年が「まちをより良くする運動をつくることができるようになる」ことです。

当初、私はこの言葉の意味を、なかなか理解することができませんでした。しかし、過去のある出来事がきっかけとなり、その意味がようやくわかったのです。

2014年、LOMの委員長を務めた際、例会企画の責任者を担当することになりました。当時は、存続できなくなる自治体「消滅可能性都市」が全国で話題となり、それぞれの地域がこの社会課題をどのように解決するか走り出した頃でした。

私は、JCを通じてこの課題解決に貢献したいと思い「私たちはどう向き合う!?ふるさとに迫る人口減少問題」のタイトルで、有識者によるパネルディスカッション公開例会を開催しました。今でも、課題の捉え方は間違っていなかったと思います。

例会の約1週間前、300名程入る会場に、メンバーも含めわずか100名弱の動員予定であることがわかり、それから慌てて知り合いや社員に声をかけました。結果的には、200名弱の参加を頂き、その後の報告議案を協議する理事会では「みなさんのおかげで動員が成功しました」と感謝を伝えました。一定の参加者数を確保できたことに、少し誇らしかった自分がいたのです。

しかし、その企画はまちの役に本当にたったのでしょうか。市民に、人口減少社会の到来を警鐘するための例会は、それ自体には意味があったかもしれませんが、この1度限りの例会企画が、社会に希望をもたらす変革の起点となったのでしょうか。私は、このプロジェクトは失敗だったと思っています。もちろん、共に汗を流したメンバーや、参加下さったパネリストをはじめ全ての関係者に深く感謝していますが、私の力不足によって、まちをより良くする運動をつくることができませんでした。

私は、この少しほろ苦い経験から、「自己都合で場を取り繕い、手法が目的化し、社会を変えたのかよくわからない」プロジェクトのことを、「JCごっこ」と呼ぶことにしました。これは、JCごっこで満足してしまった経験を自戒するための言葉です。私は、例会を企画できるという素晴らしい機会を、まちの発展に活かすことができなかったのです。



【成長とは、前提の獲得】

私たちは、JC運動の意味を、改めて見つめ直す必要があります。本当の意味で、地域社会の発展に貢献できているのであれば、JC運動は必ず大きなムーブメントとなって、社会を変え続けていくはずです。しかし、それができなければ、かつての私のJCごっこのように、その場限りで終わってしまいます。だからこそ、私たちは社会を変え続ける仕組みをつくらなければならないのです。

では、どうすればそのような仕組みをつくることができるのでしょうか。それには「成長」が必要です。JCで獲得できる成長とは、単なる「スキルアップ」のことではありません。読めない会計が読めるようになること、できなかった英語が話せるようになること、これも確かに成長です。そのようなスキルアップは大切ですが、しかしそれらのスキルではムーブメントは起こせません。ただ、会計や英語が得意な人になるだけです。では、成長とは何か。それは、損得だけで物事を考えず、人を愛し、人のために無条件で奉仕できるようになること、です。

他者は、基本的にわがままです。時に、あなたにとって不都合で不愉快な存在であることもあるでしょう。もちろん、あなたの人生を支え、豊かにしてくれる存在でもあります。しかし、JCに所属するあなたは、どこの誰とも知らない、あなたのまちに住む誰かのために奉仕をしようというのです。そんなことが、自分の幸せだけを前提としている人に可能でしょうか。人に無条件で奉仕する、こんな非合理的で無茶苦茶なことが、利己的な人間に可能なわけがありません。

このように、人のために自己を犠牲にするような、非合理的なことを可能にするのは「愛」しかありません。愛を当たり前のこととして受け入れ、自分以外の人に奉仕できるようになること、愛を前提として社会活動ができるようになることが、JCにおける成長です。

経済的発展による利益の追求は、間違いなく必要です。私たちJCメンバーは、青年経済人としてその責務を負います。しかし、経済的発展をただ追い求めれば良いというわけではありません。それを追い求めることによって、人を思いやる愛がなくなっていくのだとすれば、経済的発展が、社会的発展に悪影響を与えているということになります。私たちは、経済をリードしながら、互いを思いやることができるようになる社会的発展も牽引しなければならないのです。

思い起こせば、愛を前提とした無条件の奉仕が大切だと気が付いたのは、JCでの出会いからでした。2013年、ブロック協議会の総務委員長を務めた際、入会3年目の私はそれまで議案というものを見たことがありませんでした。ハイパーリンクもアジェンダも、背景も目的も見たことも聞いたこともない中、「他の委員会の議案をチェックし、君も議案を書くように」と指示があったのです。

まさに、JCど素人とも言える私は途方に暮れました。役割を受けてはみたものの、最後まで責任を果たせるのか不安で一杯でした。しかし、その時、私を助けてくれるメンバーが現れました。直属の上長である運営専務です。彼は毎日、私のために、議案の見方や運動のつくり方等、寝る間も惜しんで懇切丁寧に教えてくれました。ほぼ初対面からチームを組んだにもかかわらず、そして、決してそこから経済的な利益が互いに生まれるわけではないにもかかわらず、ただただ私の成長を願って自分の大切な時間を使ってくれたのです。

私はこの体験から、JCでは、人に無条件で奉仕することが前提になっていることを知りました。愛が前提になっているのです。以来私は、自分にできることであれば、見返りを求めず人に奉仕するようになりました。この時、私はJCの前提を受け継ぐことができたのだと思います。このような経験は、みなさんにもあるのではないでしょうか。

改めて、JCにおける成長とは、愛という前提を受け継ぎ、人に無条件で奉仕ができるようになることです。

私はこの受け継いだ前提を、一人でも多くの人にお渡ししていきたいと思っています。一方、今は自分のため、身近な人のためにJCに取り組むメンバーもいらっしゃると思います。それも、本当に尊いことです。しかし、当初は自分のためだけに入会したメンバーも、JC運動に力を尽くす中で、少しずつ自分自身の価値観の範囲が広がります。いつの間にか、誰かのために役立ちたい、私のまちをより良くしたいという社会的使命を帯び始めます。それがJCの魔法です。焦らずじっくり腰を据え取り組んでいきましょう。そして、前提である愛を共に受け継ぎ、広げていきましょう。



【幸せを生み出し続ける「装置」をつくる】

みなさんもご存じの通り、実際に、全国の多くのJCメンバーが、運動を起こし、社会課題解決の仕組みをつくり、持続可能な地域づくりに貢献しています。そのような、人々を幸せにする仕組みのことを、あえて「装置」と呼びたいと思います。

装置と呼ぶ理由は、私たちがつくる運動は社会を自動的に良くし続ける機械のようなものだからです。装置は、ルール、慣習、ヒト、モノ、カネ等が集まって自走している仕組みのことです。

例えば、地域のお祭りに参画し市民と共に故郷を盛り上げる活動や、著名な講師を招いての講演等は、多くの人から感謝され大変な評価を頂いています。それも、社会にとって必要とされる大切なJC運動です。しかし、その日に見た笑顔は、持続的なものではありません。毎日、そして、10年、30年、100年とその笑顔を守り続けるためには、一回だけの事業構築では難しいはずです。

運動には、まちの現状を維持するものと、現状を変えて成長し続けるものがあります。もし現状が衰退の方向に向かっているのであれば、まちの現状を維持する一回の事業だけでは近い将来笑顔を守ることができなくなるでしょう。目の前の笑顔はあまりにも魅力的ですが、それだけではなく、リーダーは社会の大きな潮流こそ見極めなければなりません。

その潮流とは、あなたのまちにおいて笑顔が増える流れにあるのか、笑顔が減る流れにあるのかです。今、目の前の笑顔の数以上に、その潮流を捉えることが重要です。

JCは単年度制です。1年でプロジェクトの成果を出すことは決して簡単ではないと思います。1年が過ぎれば、役割もやるべきことも大きく変わります。だからこそ私たちは、単年度を越えた社会の大きな潮流を見極め、その潮目を変える装置をつくらなければなりません。

あなたがJCに居続けなければ幸せを生み出すことができないといった属人的な仕組みではなく、仮にあなたが担当ではなくなったとしても、または、誰が担当しても、たとえJCが関わらなくなったとしても、幸せを生み出し続ける強固な装置をつくることができれば、社会はより良い方向へ変化し続けます。

初めはうまくいかないかもしれません。そして、今までのやり方を変化させることが少し怖いかもしれません。しかし私たちが、準備段階から、社会の大きな潮流を捉え、1年間のJC運動のストーリーをデザインし、ゴールから逆算して事業や例会を構築し、それにヒト、モノ、カネ等が自走する仕組みが内蔵されていれば、その装置は機能し続け、地域や社会を持続的に発展させていくはずです。

私は、この考え方に賛同頂ける多くのLOMと共にJC運動を進化させ、幸せを生み出し続ける装置、社会を変え続ける仕組みをつくる体制を、より一層強化することに尽力したいと考えています。



【愛を広げ、社会に希望を生み出そう】

新型コロナウイルスの蔓延によって、社会のあらゆる階層で「分断」が広がりつつあります。

経済においては、人の導線に左右されにくい情報や通信等の「製造業」と、飲食や宿泊、交通等、人々のリアルな移動を基本とする「非製造業」との間に、景況感の大きな違いが表れています。それは、K字経済とも呼ばれ、その二極化は今も広がり続けています。

また、地域社会においては、新型コロナウイルスへの恐怖感から生まれる誤解や偏見によって、様々な差別が起こり、多くの人が傷ついています。感染よりも、感染による言われなき社会的批判の方が怖いと言う人もいます。いつ誰が感染してもおかしくない状況にも関わらず、誹謗中傷にあうリスクを誰もが抱えてしまう、息苦しい世の中になっていると言えるでしょう。

このように、コロナ禍によって分断してしまった社会や人をもう一度つなぐものは何でしょうか。この殺伐とした世の中で、傷ついた社会と人の心を癒すものは何でしょうか。

それは、愛です。
愛は、人を温かくつなぐからです。

愛を前提にもつ私たちJCメンバーが、運動によって愛を広げることができれば、経済や人の分断をつなぎ止め、間もなく到来するウィズコロナ、アフターコロナの新しい社会へ、多くの人が希望をもって歩みを進めることができるようになると信じています。

そこで、私は、あなたと共に、JCの組織力を最大化させ、経済・社会・国際それぞれの課題を解決する、幸せを生み出し続ける装置をつくり、愛という前提を広げることで、地域と日本、そして世界に、希望のあかりを灯したいと考えています。



【組織力の最大化】

愛が溢れる社会を構築するために、まず、JCは「社会に最も必要とされる組織」へさらに進化しなければなりません。

一方、2021年5月現在、全国のLOMでは、29名以下のLOM数が398、約60%を占めており、また、会員数は過去10年で約19%減少していることから、将来的な組織力の低下が懸念されます。加えて、地域では過疎化が進み、人口減少や少子化も歯止めがかからず疲弊し続けています。

LOMには、地域の青年に、発展と成長の機会を提供する、プラットフォームとしての役割があります。地域の発展には、より多くの青年にJCを通じて地域をリードできる人財へと生まれ変わる機会を、今後も提供し続けなければなりません。それが私たちの使命だからです。

そのためには、オールJCの力を結集させ、社会との様々なインターフェイスを通じ、私たちの理念に共感する、前向きな人財を多く採用する必要があります。メンバー数を純増させ組織力を高めることで、地域をリードする若き人財を増やし、JC運動を最大化しましょう。

あわせて、地域の社会課題を解決し、幸せを生み出し続ける装置を開発する団体としてのイメージを獲得していきます。ブランディングとは、そのブランドを好きにさせる営みの事です。では、その好きや嫌いを決めるものは一体何でしょうか。最新の脳科学の研究によると、人は、合理的な思考や言語を扱う大脳の外の部位(大脳新皮質)と、感情・信頼・忠誠心を決定する大脳の内側の部位(大脳辺縁系)をもっていますが、意思決定をする大脳の内側の部位は「言葉を扱えない」ことがわかっています。

つまり、感情を論理的に言葉で表現することはそもそも不可能なのです。人間は論理と感情の2つの自分をもっているからこそ、ブランディングは、この情緒的な「好き」という感情を揺さぶらなければなりません。

そのためには、これを専門とするクリエイティブディレクター等と協働し、私たちの組織や運動が、市民の皆さんに「好き」と感じてもらえる最短ルートをとる必要があります。専門家のノウハウも活用し、JC運動を最大化することで、ブランディングを強化します。

また、社会には、組織や個人を表彰するアワードが多く存在します。中には、優れた事業や商品そのものを表彰し、それを世の中に広げることでより良い社会を構築しようとするものもあります。JCがもつアワードの強化に加え、社会と強く結節する外部アワードの獲得も目指すことは、組織の一層のブランディングマネジメントに貢献し、運動を最大化することにもつながるでしょう。



【成長のための共通プラットフォーム】

さらに、JCメンバーが優れた装置を開発していくための、教育体制を強化します。メンバーの平均在籍年数が約4年と短期化が進む中、青年が全国どのJCに入会しても、JCの理念を学び、運動を起こすことができる人財となる、共通のプラットフォームをつくり上げなければなりません。

共通のプラットフォームとは、都会であろうと地方であろうと、誰がどこに入会をしても一定の質が確保された均質な教育を受けることができる、言わば、学習指導要領のようなものかもしれません。しかし、その内容は学校のような単に読み書きそろばんができるようになることを目的とするのではなく、社会から求められるJCメンバーの資質を定義し、入会後の早い段階からその資質を磨くことができるものです。例えば、JCの理念の理解、まちのビジョンを構想する力、ミッションへのコミットメント、柔軟な思考、多くの人を巻き込むコミュニケーション力等が挙げられるでしょう。

このような、全てのメンバーが資質を磨くことができる標準カリキュラムを整備する一方で、地域のニーズに合わせた個性的な教育が行えるよう、バランスを取ることも忘れてはなりません。各LOMのもっている個性的で効果的なプログラムを、プラットフォームの中で位置付け、その効果を最大化することを狙います。そのような学びのプラットフォームを、単年度を越えて全国共通に実施することができれば、地域を良くし続ける装置を開発できるメンバーをより増やしていくことができると考えます。

JCには、このプラットフォームを実現するための、質の高いコンテンツがすでに用意されています。その一つが、JCプログラムです。JCの学びには、一緒に学ぶ、教えあって学ぶ、やってみて学ぶの3つの方法があり、その中でも、メンバー同士が「教えあって学ぶ」JCプログラムは、組織の理念や志を理解する上で効果的な手法です。また、日本青年会議所がJCIと、34年に渡り開催を続けてきた国際アカデミーには、極めて質の高い、グローバルな教育ノウハウが多く蓄積されており、毎年多くのリーダーを育成・輩出しています。

この教育のための共通プラットフォームは、共感頂けるLOMと共に、主に新規に入会した1~2年のメンバーの皆さんから運用をはじめ、それを、単年度を越えてブラッシュアップしながら一定期間継続することで、運動をつくることができるメンバーを、一層増加させたいと考えています。



【運動を生み出す新しい手法】

他方、JC運動を最大化するためには、運動を生み出す会議そのものの運用や慣習も見直さなければならないと考えています。あなたと一緒にチャレンジしていきたいことは、意思決定のあり方そのものを、変化する時代に合わせて問い直すことです。

JCには優れた理念があり、それを実現させるための手段としての会議運営が、今日まで大きな成果を生み出してきました。しかし、5Gがすでに始まっている超高度情報化社会では、理念を実現させる手法を新たに問い直すことができるはずです。

現在、会議で使用する議案には、資料を大量に添付したものが多数散見されます。もちろん、それは議案を成立させるための努力の結晶です。しかし、一つの意思決定に膨大な時間と労力を掛けてしまっているという証拠でもあります。

あまりにも変化の速い現代社会では、また、単年度制のJCにおいては、修正が比較的容易す。何故なら、生産性を向上させるには、JCに限らず、あらゆる活動の中で、意思決定迄の時間とコストを最小化することが求められるからです。

そこで、JCも、より一層生産性を高め、運動を最大化するために、会議や意思決定のあり方そのものを効率化する取り組みを進めたいと考えています。

例えば、その内容は、ウェブ会議を取り入れるというだけでなく、様々なアプリケーションやクラウドサービスを活用するIT化、ロバート議事法に限らない会議の運営方法、さらに、意思決定の権限移譲など、デジタルツールの活用と会議の本質を問い直し、ルールを見直すことを同時に行っていくことが考えられるでしょう。

そして、それが、社会をより良くし続けるJCの新しい内部装置となればと願っています。



【経済から幸せを生み出し続ける装置をつくる】

<資本主義をアップデートしたい>

私は、中小企業を代表するJCから、公正な資本主義を守り、「正直者が馬鹿を見ない」より良い経済体制へとアップデートするためのムーブメントを起こす必要があると考えています。

資本主義は、人が生きたいように生きることができる優れた自由経済装置です。何をどれだけ売り買いするか、どれだけの物をどのように生産するか、または、どれだけの賃金を得たいか支払いたいか等、誰もが自分の意思で決めることができるのは、この経済体制によります。

しかし、この自由な生活を支える資本主義が今、大きな危機に直面しています。連日ニュースで報道されるように、一部の超巨大グローバル企業が多くの富を独占した上、様々な方法によって税金の支払いを回避することで、富の再分配が現状失敗しています。また、そのような企業がつくりあげたプラットフォームは、もちろん極めて便利が良いものですが、圧倒的な資本力によって他の企業を駆逐し、覆すことのできない格差が世界的に生まれています。このままではアンフェアな社会構造が固定化してしまうでしょう。

このように、現在の資本主義は、構造的な欠陥が浮き彫りになっています。企業利益の最大化や成長に貢献する一方、巨大な経済格差を生み出し、さらに、環境破壊を引き起こす等、バランスを欠いていると言わざるを得ません。

そのような中、2020年、世界経済フォーラム年次総会、いわゆるダボス会議は、コロナによる社会変化を受け「グレート・リセット」をテーマとしました。つまり、持続可能な世界を築くために、資本主義を再定義すると宣言したのです。

これは、行き過ぎた株主資本主義に対し、株主に加え、従業員や地域社会、取引先企業や環境に対し富をバランス良く還元しようとする新しい資本主義「ステークホルダー資本主義」を目指すというものです。

日本では古くから「売り手良し、買い手良し、世間良し」の三方良しという経営哲学が唱えられてきましたが、このステークホルダー資本主義は、そのような商道徳に、「ガバナンスの原則」「地球」「人」「繁栄」の4つの柱を基にした、数字で説明可能な指標を設けようというものです。これに取り組む企業の貢献度が、具体的に測定され、検証が可能となることは、商文化における大きなブレークスルーです。

世界は動き出しました。このより良く変化しようとする世界経済の潮流を好機と捉え、私たちから資本主義をアップデートし、愛が溢れる経済社会の実現に貢献しなければなりません。


<脱炭素社会の実現をリードする>

このままでは、地球環境の悪化によって、次や、その次の世代が安全安心に生活を送ることができなくなってしまうことに議論の余地はありません。地球環境の改善は、今、解決しなければならない最優先の課題です。

世界は今、脱炭素を掲げ、エネルギー政策が猛烈な勢いで見直されています。菅義偉首相も2020年10月の所信表明で、2050年を目処に温室効果ガス排出量の実質ゼロを明言しました。初めて脱炭素への期限を切ったこの宣言の意味は大きく、政府の方針が明確に示されたこととなりました。

一方、世界のトップ企業は、それよりも以前から再生可能エネルギー100%使用を目標に取り組んでおり、日本の企業は少し遅れて、脱炭素への取り組みを加速させているところです。

このような急激な脱炭素社会への変化に、戸惑いを覚える企業人が多くいることを私は知っています。しかし、社会の潮流ははっきりと決まりました。正しい、正しくないの議論は、もはや時代遅れでしょう。今は、決まった潮流の中でいかに企業パフォーマンスを最大化するか、リーダーの腕が試される時代となりました。

現在、大企業を中心に脱炭素へのコミットメントが発表されています。しかし、大企業だけでは、脱炭素という大きな目標を達成することはできません。日本の企業数の内、全体の99.7%は中小企業だからです。

そこで、多くの中小企業経営層が集まるJCが、脱炭素をどうすれば経営に取り入れることができるかを議論し、さらに利益になる形で自社経営への実装に貢献したいと思います。そして、その成功事例を広く社会に展開することで、地球温暖化を防ぐという大きな目標の達成へ、私たちがリードしたいと考えています。

食料廃棄の問題も、脱炭素と大きなつながりがあります。私たちが毎日食べるごはんは、様々なエネルギーによって支えられています。一方、その食料が、年間600万トンも無駄に廃棄されています。これは、毎日、10トン車の大型トラック約1,600台分という莫大な食品を廃棄していることとなります。食料がつくられ、運ばれ、保存される過程には多くのエネルギーが費やされているため、食料廃棄は、食料のみならず、エネルギーの無駄遣いにもつながっているのです。

さて、振り返ると、今から約20年前、JC発の「MOTTAINAI運動」は世界に受け入れられ、その精神性は各国へ広がり、無駄を減らすことに貢献しました。

当時、MOTTAINAIの精神は、消費者の道徳心に働きかける、愛が溢れる運動でしたが、現代において、600万トンの食料廃棄を減らすためには、生産者とサプライチェーンが一体となって取り組む必要があるでしょう。何故なら、今のサプライチェーンマネジメントでは、消費者が残さず食べれば、生産者側はもっと売れると考え、その生産量を増加させ、結果、また食料廃棄が起こるという悪循環が生まれやすいからです。

さらに、環境、社会、ガバナンスの3要素をもって、マネーの新しい流れを生み出すESG投資が、世界的に大きな潮流になりつつある中、MOTTAINAIは消費者サイドから生産者サイドへ、そのバトンが渡されたと言えます。

また、このESG投資は、かつての大量生産・大量廃棄につながった量的価値への信仰から、多種多様なイノベーションを起こし、持続可能な社会をつくり出す「質的価値」へパラダイムシフトを起こすでしょう。

過剰な食料生産と廃棄を減らす取り組みが、評価され、努力が報われるような、質的価値の仕組み化、言わば、MOTTAINAI2.0の装置化こそ、経済とのバランスを取りながら脱炭素を実現するための方法になるのではないでしょうか。

<あなたの企業から幸せを生み出す>
私は、経済的利益のみならず、JCメンバーの企業が「幸せを生み出し続ける装置」を実装することで、従業員やその家族をはじめ一人でも多くの人がより良く生きることができる社会をつくり、広げていきたいと考えています。

幸せになりたい。これは、誰もが願うことです。しかし、国連の「世界幸福度ランキング」によると、日本は156か国中62位となり、国内総生産(GDP)世界第3位と比較すると、経済と幸せの実感の間に大きなギャップがあります。また、残念ながら自ら命を絶つ方は、昨年に比較し増加し続けています。

そのような中、ダボス会議のクラウス・シュワブ会長は「世界の社会経済システムを考え直さなければならない。人々の幸福(Well-Being・ウェルビーイング)を中心とした経済に考え直さなければならない」と述べ、企業経営の中で、従業員や関わる全ての人の幸せを追求することを求め、それは、加速度的に全世界の注目を集めています。

このWell-Beingを仕組み化し、まず、あなたの企業が実装できれば、間違いなく、あなたも、社員の皆さんも、より幸せになるでしょう。そして、そのように、企業そのものが幸せを生み出し続ける「装置」へと進化することで、社会に愛を広げることもできます。

この世界的な社会の新潮流を活かし、企業経営の文脈から幸せを広げ、より良い社会と人生の実現に貢献しましょう。

<次に迫るゲームチェンジ>
私は、日本こそが、次のゲームチェンジを起こす鍵を握り、世界をリードすべきと考えています。

アメリカでは、現在大豆などの植物性タンパク質からつくられた代替肉がブームになっています。日本では、まだまだ馴染みのないこの代替肉ですが、2025年には世界の市場規模が3兆円を超えるという試算もあります。

これは、完全菜食主義者であるヴィーガンだけでなく、肉を食べる人からも支持されています。その理由は、味が良いということだけでなく、健康に良いこと、そして、ほんの少しの罪悪感からの開放が理由です。

また、欧米では、アニマルウェルフェア(動物の福祉)を意識した企業活動が顕著です。鶏の平飼い、飼育環境の改善、生体販売の禁止など、アニマルウェルフェアに取り組むことを促す法律ができ、また、それを謳った商品やサービスが数多く生み出されています。一方、日本では、まだまだアニマルウェルフェアへの取り組みは大きな動きになっていません。しかしこれは、昨今の脱炭素社会へのゲームチェンジが欧米から起こった事態と酷似して見えます。

二酸化炭素は環境に良くないという意見には賛成も反対もあり、日本は京都議定書の苦い経験から、やや後ろ向きの対応を取り続けてきました。しかし、環境問題とは別に、温室効果ガス排出権取引が始まり、様々な制度が国際的に出来上がっていく中で、化石燃料から自然エネルギーへのゲームチェンジが起こり、日本は欧米の背中を追いかける形を余儀なくされています。

おそらく、このアニマルウェルフェアもまた、動物が可愛そうだと思うかどうかとは別に、新しい国際的な枠組みによって、そう遠くない将来にゲームチェンジが起こるだろうと考えています。

今、先んじてアニマルウェルフェアに取り組み、経営に活かす努力を始めることは、この大きな国際社会の潮流の先頭を走り、ビジネスチャンスを手にする事ができることを意味します。そして、この仕組みを通じ、命を大切にするという愛を社会に育むこともできます。

どのように社会にこの動きの重要性を伝えるのか知恵を絞り、希望をもたらす変革の起点となれるような運動を生み出していきましょう。

<スポーツを活かした社会と企業づくり>
私は、企業がスポーツから学び、スポーツを経営に活かすことで、企業の力を最大化したいと考えています。 スポーツには、多様性を重んじるインクルージョン、参加の喜びを感じるエンゲージメント、相互理解を推進するコミュニケーションが溢れています。

日本青年会議所は長年に渡り、「JCカップ」を運営してきました。これは、地域の未来を担う子供たちに、サッカーを通して、勝利からも敗北からも学ぶ「グッドルーザーの精神」を養うことに貢献しています。

一方、これらのスポーツがもつ価値観やグッドルーザーの精神は、スポーツのみならず、企業経営にも活用できるはずです。JCカップを通じた子供たちへの教育に加え、働き方やライフスタイルが多様化する社会の中で、企業がスポーツを経営資源とし、そこから学び続ける組織を社会に増やすことで、企業の力をより高めたいと考えています。

<地域経済をリードできるのはあなた>
社会が、私たち青年経済人に最も期待していることは経済の牽引です。

しかし、その牽引を誤れば、厳しい未来が待ち受けている可能性もあります。その厳しい未来を回避し、笑顔を守れるのはJCメンバーのあなただけでしょう。あなたが戦わなければ、あなたの地域の未来は、あなたの想像通りになるはずです。

今こそ、立ち上がり、アイデアを実現し、経済をリードして欲しいと願います。その地域に住まう多くの勇敢な青年が、「量だけではなく質」で勝負し、経済から幸せを生み出し続ける装置を一緒につくり、愛が溢れる地域と日本を実現しましょう。



【社会に幸せを生み出し続ける装置をつくる】

<JC独自のまちのビジョンをつくる>
私は、LOMと力を合わせ、あなたの「まちの中期ビジョン」を共に構築したいと考えています。どのまちにも、行政が策定する総合戦略や総合計画と呼ばれる、政策や予算の骨格となるビジョンがありますが、青年の目線が必ずしも取り入れられているとは限りません。また、まちの発展に必要な政策が網羅されているとも限りません。

だからこそ、まず、その総合戦略等のビジョンが、まちの持続的な繁栄に貢献するものか検証し、その結果、不足や改善点があれば、次代に責任をもつ私たちこそがビジョンをつくらなければなりません。もし、既にそれが素晴らしいものであれば、より良くすることもできるでしょう。

そこで私は、LOMが、故郷をより良く変え続けるための、独自のまちの中期ビジョンを、多くの関係者と共に検証・策定していけるよう強く支援します。そして、その独自の中期ビジョンを元に、単年度の運動を企画し、まちに広く深いインパクトを与えられるようにしていきます。

そのような運動が継続できれば、いずれは、LOM独自のビジョンが、行政が策定するビジョンにも影響を与え、あなたのまちの繁栄のみならずLOMの発展にも貢献するでしょう。また、運動をつくる唯一無二の青年組織として、他団体との差別化戦略も図ることができ、メンバーの増強にもつながるでしょう。

まちがあってこそ、国が成り立ちます。最終的には、全国それぞれのまちが輝くビジョンを結集させ、希望溢れる我が国のビジョンを確立したいと考えています。国難の今こそ、私たち青年の知恵と情熱をもって、より良い故郷と日本の未来を描きましょう。

<子供は社会の宝物>
私は、子供を産み育てたくなる社会をつくることで、未来の地域と日本を守りたいと考えています。

新型コロナウイルスの蔓延は、日本経済に大きなダメージを与えるにとどまらず、少子化の急加速をも引き起こしています。厚生労働省の発表によると、2020年の出生数は戦後最小の84万人となり、また、民間のシンクタンクは、2021年は80万人を割る可能性があるとの試算を発表しています。これによって従来予測より、18年も少子化が早送りされたこととなります。

想定を遥かに上回って進む少子化は人口減少のペースを速め、日本や地域社会に大きなダメージを与えることになるでしょう。長期的には、我が国の存続にも関わる重大な社会課題です。

現在、JCは「子供を生み育てたい社会」をつくることを目的に、企業や行政等と連携しベビーファースト運動を展開することで、社会に大きな潮流を生み出しつつあります。私たちは、この流れをより確実なものとしなければなりません。

そのような中、2022年7月には参議院議員通常選挙が実施され、少子化克服が大きな争点の一つになると言われています。今こそ、子供を産み育てたくなる社会を実現するための議論と仕組みを、親世代である私たちからつくり出す必要があります。そして、社会の雰囲気もつくっていきたいと考えています。

<生きたいように生きられる社会をつくる>
私は、誰もが生きたいように生きられる、差別のない社会をつくりたいと考えています。

私たちは、誰もが思い込みの中で生きています。普段は問題になりませんが、この思い込みによって、思わず他者を傷つけてしまう場合があります。このような思い込みは「偏見」と呼ばれますが、あらゆる偏見をゼロにすることはできません。思い込みによって私たちは行動しているからです。だからこそ、「私は必ず偏見をもっているのだ」ということを、常に自覚し、注意深くあり続けることが大切です。

例えば、米国メジャーリーグのインディアンスは、原住民に失礼な名称であるということで、その名称を改称することとなりました。そこまでするのかと驚くかもしれませんが、そこに傷つく人がいるのであれば、謙虚に見つめ直す姿勢は評価されるべきです。

私の知っていることや情報はすべて正しいわけではない。この健全な疑いの視線を常にもつことが、偏見を是正するためにまず必要ではないでしょうか。

日本社会に目を向ければ、ジェンダーギャップ指数ランキングは世界の中で121位、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校が発表しているLGBTQランキングでも、66位と低迷しています。このように日本は、世界に比べ、まだまだ、誰もが生きたいように生きられる社会ではないと言えます。

これは、性別等の、本人の個性ではない属性の違いを根拠に、無意識のうちに決めつけを行ってしまうためと考えられています。そのために、ギャップを改善する制度をつくったとしても、この心の奥底にある思い込みが意識せず働くことによって、誰もが活躍できる社会の実現を遅らせているのです。

そこで、私たち青年から、性別による役割分担意識をはじめ、無意識の思い込みからなる「内なる偏見」を改善し、今こそ、多様な人財が活躍できる社会の土壌を築かなければなりません。

私たちがリードし、偏見のない、希望する誰もが活躍できる、そして活躍したくなる社会を実現しましょう。

<国民の幸せを守る>
日本青年会議所は長年、憲法の在り方の議論に取り組んできました。憲法の公布から75年が経ちましたが、戦後間もない頃のアナログ社会とは違い、現代はインターネットによって瞬時にあらゆる人と情報がつながる超高度情報化社会です。国境の概念や、企業という箱でさえも、当時と全く異なっています。

憲法改正の手続きを定める改正国民投票法が成立した今、国家のあるべき姿とは何なのか、どのように国民の生命と財産を守るのか、改めて現代にふさわしい憲法を考える時ではないでしょうか。

周辺国に目を向けると、現在、ミャンマー市民は非常に厳しい内政状況に置かれています。彼らの生活が突然厳しい状況に変化したのは、憲法のたった1行の文章が問題になったからです。それによって、地域の自立は奪われ、生活や行動や考え方の自由まで奪われました。そして、多くの人々の命も奪われたのです。憲法は身近なものではないと感じるかもしれませんが、私たちの生活を根っこから支えるとても重要な文章です。

憲法は何だかよくわからない綺麗事が書いてある文章では決してなく、私たちの人生を左右する重大な文章であることを、改めてミャンマー情勢は教えてくれます。香港も、憲法が問題になったわけではありませんが、やはりたった一行の法律の文章によって、このような事態になっています。

私たちは自分ごととして、幸せを守るためにどのような憲法をつくるべきか、そして守るべきか、叡智を結集しなければなりません。多くの考え方があることは重々承知しています。だからこそ、どのような憲法が必要なのか、様々な立場の専門家に学び、論点を絞り、国民の幸せを守ることができる憲法の形を議論できる場をつくっていきましょう。

<命を守るレジリエンス>
私は、試練や困難から、素早く立ち上がることができる社会をつくり、命と経済を守りたいと考えています。

世界は、大きなリスクに晒され続けています。近年では、2001年9月11日の同時多発テロ、2008年のリーマンショック、2011年3月11日の東日本大震災、そして2020年のパンデミックと、世界規模に影響を与える出来事が後を絶ちません。

グローバル化した社会では、世界のどこかで起きた事件が、瞬く間に世界中へ伝播してしまうため、リスクを予見することが極めて難しくなっています。リスクが予見できない以上、回避することは困難です。

そこで重要になるのが、レジリエンスです。レジリエンスとは、問題が起きた際、いち早く回復できるようになることです。レジリエンスの根幹にあるのは、人、モノ、カネ、情報の流れの回復です。せき止められた流れを素早く回復させることができれば、ダメージを最小限に留めることができます。

人流と物流は、交通網に依存しています。地域と地域をつなぐ幹線道路が1本しかなければ、そこが寸断されたとき、回復が遅れます。大阪と東京は、太平洋側をつなぐルートが発達していますが、日本海側を通るルートが開通することで、高いレジリエンスが期待できます。西に目を向ければ、大阪と福岡をつなぐルートがありますが、大阪から四国を通って九州に至るルートが新たに開通すれば、やはり高いレジリエンスが期待できるでしょう。

金融と情報に目を向ければ、クラウド時代では、高度な通信インフラが網目状に整備されていることが重要です。そして、その通信インフラの一つとして注目されているのが、宇宙です。宇宙を経由した、通信インフラが確立されれば、発災時、重要な通信手段になりえます。

人流、物流、そして情報の流れを止めないためのレジリエンスを獲得し、国や地域の強靭化を実現することで命を守りましょう。

<スタートアップのムーブメントをつくり出す>
日本青年会議所はTOYPという、傑出した青年を世に送り出すためのコンテストを開催しています。2021年には405件のエントリーを頂き、その規模を拡大すると共に、社会的に高い評価を得ることもできています。

TOYPにエントリーする青年は、そのような社会環境の中でも、リスクを取り、夢を実現させようとする若き起業家等のトップランナーです。私たちがそのような青年と接点をもつことは、社会や多くのJCメンバーに成功モデルを広げることにもつながっています。さらに、長年の開催によって、若き起業家の人財バンクとして情報が蓄積されており、JC運動における力あるパートナーとして協働することも可能です。

しかし、今の日本のスタートアップ企業数は、先進7カ国の中で最下位となっており、若い起業家を中心とした青年を世に送り出す、この装置の社会的役割は、相対的に大きなものになっていると言えます。

一方、若者が次々に起業し、スタートアップが日本社会を牽引するような規模で拡大するためには、もうひとつ踏み込んだスタートアップ支援や、支援策を生み出し続ける装置の開発が必要です。

TOYPのコンテストを開催する目的が、社会をリードできる若者を発掘・育成することにあるのだとすれば、コンテストの開催に加え、社会の潮流をつくる挑戦も可能ではないでしょうか。



【世界に幸せを生み出し続ける装置をつくる】

<自由と民主主義の連帯>
世界の民主主義は、今揺らいでいます。

昨年、香港では、多くの学生が民主主義を守るために立ち上がりました。しかし、それでも民主主義を守ることはできませんでした。ミャンマーでは、選挙に不正があるとして、軍の力によって選挙結果が捻じ曲げられました。アメリカでもいまだに不正選挙の疑いの火種がくすぶっています。また、欧州では、思想が極端に偏った政党の台頭が見られます。

スウェーデンの調査機関V-Demによると、民主主義を標榜する国や地域に住む人口は世界の中で3分の1でしかなく、他の3分の2は権威主義や独裁主義などの非民主主義に統治されています。つまり、民主主義は少数派にあるといえるでしょう。

しかし、私たちは、自由と民主主義が普遍的価値として大切であることを知っています。自由に発言でき、好きな人に投票ができ、命が権力の気分次第で奪われないことは、絶対に守るべき価値です。しかし、自由に考え、自由に会いたい人に会えることは、世界では少数派なのです。

現在、国家間における政治的対立の緊張の度が増していると言わざるを得ません。しかも、このような政治状況を打開する術は、残念ながら、今のところ見当たりません。自由と民主主義は、先人たちの多くの犠牲の上に成り立っています。そして私たちメンバーは、JCI Creedにおいて法による支配を尊ぶように、この価値を信じています。そんな状況だからこそ、私たちはJCのネットワークを駆使し、青年経済人としての交流を一層深くし、政治状況を超える民間の交流を通して、社会の流れを変えていく努力をしていかなければなりません。

国家をつくっているのは人間です。人間を形づくっているのは言葉です。言葉によって、人間をより良い方向へ進め、そして国家の関係を改善するのです。

<青年の対話によって相互理解を深める>
私は、JCの理念と、これまで先達が築き上げたリソースを用い、近隣諸国との関係性をより進化させるための、対話の場が必要だと考えています。

私たち日本の青年会議所は、長年に渡り、東アジア各国の青年会議所と民間外交を重ね、対話を続けてきました。その結果、韓国の青年会議所とは、両国間の姉妹JC締結数が96にも及び、国家のみならず、ローカルのつながりも強固なものとなっています。また、2006年には、JCI世界会議ソウル大会において、恒久的世界平和の実現を目指すJCIの理念に則り、両国相互のメンバーが、真の平和構築に向け永久に協働していくことを誓った「日韓平和推進協働宣言」を表明しています。

2022年、JCIアジア太平洋地域会議(ASPAC)が日本の堺高石で開催されます。これを好機と捉え、国家青年会議所として大会の成功を支援すると共に、JCI Creedで謳う「国家の主権を超越した同胞愛」によって結集するJCIのメンバーとして、青年による対話の力をより確かなものにするための場をつくりたいと考えています。

他方、世界第二位の経済・軍事大国となった中国との民間外交も引き続き推し進めていかなければなりません。今、「米中冷戦」と言われる両国の覇権争いに世界中が巻き込まれ、それは政治や経済に大きな影響を及ぼしています。日本にとって、中国は最大の貿易相手国であり、また、日系企業の海外拠点数も中国が最も多く、経済関係は一層緊密になっており、政治・経済共に、中国との良好な関係構築の重要性が増しています。

日本とロシアにおいては、旧ソ連が1956年に日ソ共同宣言で戦争状態を終結、国交を回復させましたが、我が国固有の領土である北方四島が不当に占拠され続けているため、いまだ平和条約が締結されていません。日本は粘り強く返還交渉を継続することが必要ですが、ロシアは、2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合する等、領土拡大への野心を隠しておらず、解決への道のりは決して平たんでは無いでしょう。しかし、同じ極東にある国同士、経済を軸とし、良好な関係を築く必要性があることは疑いようがありません。

そのような中においても、日本青年会議所は、1970年に初めて北方領土視察団を派遣、また、1985年に公式訪中団を派遣して以来、長年に渡って、中露両国と相互理解を深める、民間外交の太く強いパイプを守り抜いてきました。これは決して容易なことではありません。東アジアの発展と繁栄のために、このパイプをさらに強く太く、有意義なものへ進化させるために努力していきましょう。

<新たな貢献の形を模索する>
私たちが推進するSMILE by WATERは、過去5年間に渡り、アジア各国への支援を通じSDGsGoal6「安全な水とトイレを世界中に」の達成に貢献してきました。

それは、単に物資等の支援に留まらず、水に関わる世界の課題を持続的な形で解決しようと挑戦した結果、事業そのものがJCの手を離れても、現地の方々が当事者意識をもち、自らの手でその仕組みを継続・発展させているプロジェクトもあります。

この中期に渡る各国での支援の在り方を、時間が経過した今こそ検証し、世界の青年会議所をリードする国家青年会議所として、新しい持続可能な支援体制を構築する必要があるのではないでしょうか。

「青年会議所が日本一のSDGs推進団体になる」との宣言を総会決議した私たちのシンボリックな運動として、より一層進化させていきましょう。



【最後に】

まちをより良くすることは決して簡単なことではありません。あなたがどんなにまちを良くしたいと願っても、行動を起こさなければ変わることはありません。誰かが考え、具体的に実行したことだけが社会を変えるのです。

知識は、あなたの力になります。
装置は、まちをより良くし続けます。
そして、愛は、人々をつなぎます。

こんなにも尊い運動ができるのは、JCメンバーである、あなただけです。

新しいことに挑戦する時、失敗を恐れる心が芽生えるかもしれません。しかし、前向きに挑戦する中で生まれた失敗は、次の「成功」のための貴重な材料となります。例え、あなたがJCで失敗したとしても、次の世代のメンバーがそれを教訓とし、きっと成功へとつなげてくれるでしょう。

さあ、昨日までのあなたを超えましょう。

できっこないを恐れず、新しいJC運動に一緒に挑戦しましょう。

あなたの一歩が、あなたのまちになります。

大丈夫です。

あなたなら、必ずできます。

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