2011年3月11日14時46分、わが国に東日本大震災が発生した。かつて経験したことのない大震災とその後の災害、さらには原子力発電所の事故により冷静に物事を判断するに「日本国」は瀕死の状況にある。かつて、世界の文明と富の中心として、隆盛を極めた国々が凋落し、表舞台から去って行った歴史は数多くある。
今まさに、日本は大きな岐路に立っているのである。
【はじめに】
東日本大震災は、わが国の歴史に永遠に刻みつけられる、未曽有という言葉ですら言い表せぬほどの凄まじい大災害であった。被災地域を中心に激甚な直接的被害のみならず、間接的に広く国内外に対しても大きな影響を及ぼし、その広範囲にわたる壊滅的な状況により、わが国は海外メディアから絶望視された。
私自身はちょうど東京の京橋に居合わせ、震度5強の地震に遭ったが、余震の続くなか、メディアを通して報道される三陸沿岸部の人びとや家々を、そしてまち全体を一瞬にしてのみこむ巨大津波の想像を絶する破壊力と胸を引き裂かれる悲惨な光景に吃驚し、涙が溢れ出て止まらなかった。
震源地から遠く離れた東京に居ながらも、絶望感と空虚感に一瞬押し潰されそうになった。しかし、そのような凄まじい状況下にあっても発災直後から被災者の救出、被災地の救援のために、日本全国各地から被災地に向かう自衛隊、警察、消防団の姿に我を取り戻し、勇気づけられた。電話は不通ながらもメールやSNSで地元の仲間からの安否確認や日本全国、世界中の仲間とのやり取りのなかで、自分が今、「生きていることの喜び」と「生かされていることへの感謝」をあらためて、心底実感するとともに、これから自分自身がこの未曽有の災害と、どの様に向き合い、考え、長期間にわたり、何をなさねばならぬか、明確になった。
「誰もひとりじゃない」
それは、全国各地からのボランティアの皆さん、JCの仲間たち、そして、何より自らも甚大な被害を受けた被災者でありながら、JAYCEEとして、いや人間として、より過酷な状況におかれている地域の人びとのために、と行動した被災地メンバーが確かな希望をくれたのである。このすべての皆さんのどんな言葉でも言い表せない「魂」のこもった、未来に向かってまっすぐに進もうとする姿を誇りに思うとともに、「日本の根源的な価値観は決して失われていない」「日本は大丈夫だ」と確信したのである。
がんばろうNIPPON 確かな一歩を踏み出そう
さあ、みんな、日本の復興創造に、JCの枠にとらわれず、凛然とした人間として取り組もうじゃないか。
【変わらないために変わる】
かつて、戦後の荒廃したまちを目の前にして、「新日本の再建は我々青年の仕事である。」との使命感から先輩青年たちが青年会議所の運動に灯をともした時も、わが国にとって大変な国難の時であった。そのような状況下においても、しっかりとした目的意識と強い目標意識を持ち、戦後復興に取り組むとともに、その先にある「明るい豊かな社会」の実現に向けて俯瞰的な想像力を持って弛まなく行動してきたのである。
そして、その戦後という激動の時代を、今の私と同じ青年期として、高い目標に向かって努力し、ひたむきに事業に打ち込むことで戦後復興の一端を担い、激動する製紙業界において凛然と生き抜いた大正生まれの祖父・祖母のことばは、時代が変わった今でも私に多くの学びを与えてくれる。
「テンポの速い時代です。知恵の勝負の時代です。知恵を絞り、頭を働かせてさっさと習う、どんどん覚える、考える。そのなかでなぜなのか?なぜダメなのか?どうすればよいのか?よどむことなくやれる根性を養う。そうすることのなかから、想像力が生まれ、新しいものが生まれる。行動をとらない人はダメです。すなわち、全知全能が一瞬にかつ一点にどれだけ集中出来るかが勝負なのです。甘えは許されません。でないと生き残れない時代です。」
「今の豊かさ」に慣れてしまった現代の日本では、その日さえ楽しければいいという刹那的な生き方で、目的意識や目標意識を持つことを忘れてしまった人が多くなったと思う。まずは、大きくても小さくても、何だっていい。みんなで夢や理想や目標を持とう。そうすれば人はそれに向かって一生懸命生きることができ、そのことが人生を充実したものにしてくれるのではないだろうか。
私は、「変わらないこと」ということは、日々是新に自らを成長させ続けなければならないのであって、単に現状から「変わらないこと」は単なる停滞であり、退化に等しいと考える。これは、「ひと」も「組織」も同じことである。現状に満足するのではなく、常に前を向いて俯瞰的に物事を捉え、自らが積み上げてきた知識と行動することにより得た経験を想像力へと昇華させることで新しいものを生み出し続けなければ「変わらないこと」にはならないのである。私たちの運動も組織も連綿と受け継がれてきた使命感と責任感を持って、さらなる高みを目指し、成長し続けるためには「変わらないために変わる」ことこそをプリンシプルとしていきたい。
【私たちに託された奇跡】
私が高校を卒業し、生まれ育ったまちを離れて上京した1991年。これから始まる自らの新たな人生に心躍らせ、明るいと信じてやまない未来に夢を描いていた。
しかし、その年、実体経済と乖離した狂乱のバブル経済の崩壊とともに、わが国の成長が止まった。それからの「失われた20年」、長期間にわたる景気の低迷、デフレ、円高に加え、巨額の財政赤字を抱えながら、急速な少子化の進展、生産年齢人口減少と高齢者激増、崩壊寸前の社会保障制度など、例をあげれば枚挙にいとまがない日本の構造問題と解決しなければならない課題という責任世代の私たちが背負わなければならない困難は途轍もなく重くなっていた。そこに東日本大震災と原子力発電所事故の加わった日本は、絶望的なほどの困難を背負うこととなった。
日本がその困難を背負いつつ再生を成し遂げ、今までどおり先進国のひとつとして生き残るには、まさに「奇跡」を起こさなければならないのである。
『君には二つの生き方がある。奇跡など起こらないと信じて生きるか、すべてが奇跡だと信じて生きるかだ』 アルベルト・アインシュタイン
わが国にも有史以来の幾度かの国難があった。古くは鎌倉時代中期、当時大陸を支配していたモンゴル帝国および服従政権であった高麗王国による二度の対日本侵攻である元寇、いわゆる文永の役(1274年)、弘安の役(1281年)である。
九州北部が戦場となった二度の侵攻を、いずれも鎌倉幕府の地頭・御家人が全国から集結し打ち負かした。そして、二度目の国難は、黒船来航(1853年)に象徴される欧米列強のアジアへの経済的・軍事的進出である。アジア諸国が欧米列強に次々と抑圧され、植民地化されていくなかで、明治政府による天皇親政体制への転換と国家に対する概念や価値観を一新することで、日本は短期間で立憲制度を確立し近代国家へと変貌を遂げた。さらに、三度目の国難は、大東亜戦争とその敗戦である。二度にわたる非人道的な原子爆弾による攻撃も含めた連合国軍の空襲によって、日本の大半の都市が焦土と化していた。しかしながら、国民が威風凛然と日本の再生に取り組み、世界第2位の経済力と現代の民主的な国家を創り上げ復興を果たしたのである。
『降り積もる 深雪に耐えて 色変えぬ 松ぞ雄々しき 人もかくあれ』 昭和天皇御製
そして、四度目の国難となる東日本大震災と原子力発電所事故に対し、今上天皇からの私たち国民に発せられたお言葉にも、国難と対峙する国民の姿を「雄々しい」と表現されている。和に基づく秩序とともに雄々しくあらんとすることは日本を貫く重要な価値観である。これこそが、日本人、もっというならば、日本民族の一番深いところに流れている精神のかたちなのである。国難に直面するやいなや、課題に正面から向き合い、挑み、励まし合い、人のつながりを大切にして、必ず立ち直るつよい民族なのである。
日本の「今の豊かさ」を守り、国際社会における役割と責任を果たすためにも、国家も国民一人ひとりも「変わらないために変わる」必要があるのではないだろうか。元寇の撃退、明治維新、戦後復興に続く「四度目の奇跡」を起こすため、しっかりと前を向いて、凛然とした行動を起こし、確かな物語を描いていこうではないか。
その物語の主役は、私たち青年である。
【日本の青年としての矜持】
日本には数多くの青年団体がある。それぞれの団体がしっかりとした責任感と使命感を持って活動しており、責任世代である青年が目的や手法は違えども、すべての団体の最終的なゴールは自らが住み暮らす地域や国の「明るい豊かな社会」に帰結すると信じている。今後も同じ時代を生きる青年として有機的な連携を図っていきたい。
私は、JCにはJCの哲学があり、「JCもある時代」と揶揄されるのに非常に抵抗感がある。JCは「青年の学び舎」として真摯に「学ぶ」ことにより、得た知識、経験を知恵に変え、「想像力」を鍛えることで「目的」と「手段」を理解し、如何なる場面においても正しい判断力と力強い行動力を発揮することが出来る「主導力」を涵養する機会である。そして、JC運動が長きにわたり必要とされているのは、私たちの哲学がしっかりと実践されてきたからに他ならないのであって、その原動力は地域で展開されているLOMの精力的な活動である。己を律し行動するJAYCEEの凛然たる姿が市民を魅了すれば、必ず地域は変わっていくのだ。私たちは、市民、行政、企業を有機的に連係させるインターミディアリーな立場で、地域に根ざした運動を清々しく展開しようではないか。「生き抜く力」と「生かされていることへの感謝」が漲る社会こそが、私たちが創造するべき「明るい豊かな社会」なのである。
そんな社会を実現するために、今まさに、日本は卓越したリーダーを切望している。いつの日からか日本には、和に基づく秩序を履き違えた人びとが多くなり、優れたリーダーシップよりも根回しやコンセンサスを得ることを優先するのが是とされるようになってしまい、卓越したリーダーが生まれにくくなってしまった。
今のメディアを見ても、少しでも頭角を現す人物が出てくると、理解のできない連帯感で引き摺り下ろそうとする風潮を否定できない。卓越したリーダーは、メシア(救世主)のように現れるのではなく、明確なビジョンを持ち、それを実現しようとする情熱とエネルギーを持った凛然たる人物をみんなで発掘し、育て、創り上げていくものなのである。だからこそ、今必要なのは「青年の学び舎」であるJCであり、自らがリーダーたらんとする気概を持って行動できる環境と自らの人生をも変えうる学びの機会、そして、ともに励み、励まし、生涯高めあえる貴重な仲間が集まっているのである。
自分の環境や人生を変える経験は個人を強くする。出向や諸大会・事業への参加というのは自分のガバナンスを変える経験であり、自分が気づかなかった自分を発見させてくれる機会である。自分のガバナンスを変える経験を通して「己を知る」ことが出来た人間は、自分の可能性に挑戦する闘争心や自分の限界に挑戦する冒険心により、「たくましく生き抜く」芯の強さを持つコツが出来ると確信を持って言える。地域のリーダーである理事長の皆さんには、ぜひ多くのメンバーを積極的に日本JC、地区協議会、ブロック協議会へ出向させていただきたい。そして、国内外で開催される諸大会・事業へも積極的に参加させていただきたい。必ずや
得た知識や経験を知恵に変え、「想像力」を持った地域リーダーとなりうる素地を身につけLOMに戻っていくであろう。
「環境は人を変え、人はまた環境を変える。」のである。
さらに、厳しい時代ではあるが、各々の地域には「本物」の志を持った多くの市民が存在し、自らを成長させ、地域に貢献する機会を模索している。JCの哲学からいえば会員の増強は私たちの基本運動である。私は、全国の理事長の皆さんとともに、同じ組織を預かるリーダーとして、この基本運動に決して諦めることなく実直に取り組み、「明るい豊かな社会」の実現に向けて本気で行動する自覚と覚悟を持った人材をひとりでも多く発掘するとともに育成していきたい。さらに、女性の活躍する場が少ない日本社会ではあるが、国民の半数は女性であるということをしっかりと認識し、市民の意識を魅了する運動を展開するためにも、同じ青年世代の女性会員の増強について積極的に取り組み、市民から最も頼られ、必要とされる青年団体へと確かな歩みを進めたい。
国難に直面した今こそ、創始の気概を胸に全国701LOM、40,000名のメンバーが日本の青年としての矜持を持って、日本の復興創造と青年会議所運動を義気凛然と進めよう。
【国家に対する信頼・信用を取り戻す】
「あなたが歴史を作ったのです。」
2009年8月30日、歴史的な政権交代が行われた。私たちを取り巻く様々な環境はどのように様変わりしたのであろうか。政治のレベルは国民のレベルであり、国民として、有権者として、私たちは結果に対して、その責任を負わなければならない。
今回の東日本大震災および原子力発電所事故に対して、日本政府の対応には、メディアを中心に初動対応、情報開示、復旧・復興支援策等、様々な見解が示されている。そして、それは国民それぞれにも考えるところがあるであろう。しかし、私たちはそれを称賛したり、非難したり、ましてや無関心になったりしても日本は何も変わらない。はっきりしていることは、わが国は民主主義の国家であり、主権者は国民である。つまり、国政を担う国会議員は、選挙という行動により私たちが選択したのである。それゆえに、私たち国民も自反尽己に努め、国家に対する信頼・信用を取り戻し、真の民主主義を実現するべく未来志向な行動を起こしていくべきではないだろうか。
私たちは、近年、国政選挙や各地の首長選挙を中心に、マニフェスト型公開討論会を全国各地で実施することにより、国民主権の確立に向けて取り組んできた。そして、これが定着してきたことにより、国民は政党や立候補者の選挙公約となるマニフェストをもとに、各々の違いを理解するとともに、政策本位の政治選択が可能になった。今後もこの取り組みを継続し、政治への参画の機会を創出していくことはもちろんのこと、公約であるマニフェストが実際にしっかりと実行されているか検証するために、主権者としての目線で取り組むことで、参画意識とリテラシーを高め、ひとりでも多くの国民が主権者としての責任を果たす行動に繋げていきたい。
また、わが国の選挙に対する投票率低下については憂慮すべき状態である。本来、選挙は民主主義の原点であり、主権者である国民が主権者権利として選挙という行動を通して代表者を選択し、政治を託すとともに、選択した代表者をチェックすることにある。世界の先進国でも、投票率を向上させるために苦慮し、登録制や選挙不参加者に対しパスポートを発給しないなど、様々な方策に取り組んでいる。それは、投票率は民意の声であり、民主主義の原点であることを重視しているからに他ならない。
私たちも、無関心という言葉で片付けるのではなく、主権者として、国民一人ひとりの幸せと明るい豊かな社会を実現するために、自らが住み暮らす国や地域をどの様なかたちにしたいのかについて、妥協することなく、真剣に向き合い、考えることが重要なのである。そのために、主権者である国民が、日本の未来を選択する権利と責任について、責任世代の主役として、投票率を向上させる運動に取り組むことで喚起したい。また、国民が積極的に参画する環境を整備するために、公職選挙法の改正についても、引き続き真剣に議論し、訴えていく必要があるのである。
【主権国家「日本」のプリンシプル①~戦後レジームからの脱却と領土・領海~】
1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効されたことにより、大東亜戦争の敗戦による占領政策は終了し、わが国の主権が回復した。占領政策の終了から60年目の節目を迎えようとしているわが国ではあるが、戦後すぐに開かれた戦勝国主導の東京裁判(極東国際軍事裁判)と連合国軍総司令部(GHQ)の採った占領政策により、未だに国民は敗戦の呪縛から解き放たれず、自立できないでいるわが国の「戦後」は終わっていない。大東亜戦争では、その歴史的背景や当時の日本を取り巻く状況により、無謀とも思える戦争に突入し、日本の都市の大半が焦土と化すとともに、筆舌に耐えがたい国難と言える悲惨な時代を経験した。そして、この敗戦の忌まわしい記憶と嫌悪感が国家否定の土壌となるとともに、GHQによる6年8か月にわたる占領政策のなかで、日本固有の価値観や継承されてきた伝統を否定する政策、戦争責任意識を植え付ける政策により、自虐的国家観と歴史観が深く国民の精神を蝕んだ。さらに、占領下での憲法改正、北方領土不法占拠の継続、国際連合における敵国条項の継続、教育界・マスコミの偏向体制等、戦後レジームは国家としてのアイデンティティとプリンシプルを失わせたのである。私たちは、広く青年世代に呼びかけ、未来を切り拓く責任世代として、大東亜戦争を総括するための運動を進めることで凛然とした誇りある国へとしっかりと歩みを進めなければならないのである。
また、四方を海に囲まれた海洋国家であるわが国の領土・領海に対して、主権国家として主権者である国民がしっかりとした知識と意識を持つことが何よりも肝要である。わが国は、未だ解決の糸口すら見えてこない領土問題と尖閣諸島付近で起きた中国漁船衝突事件に代表される領海侵犯問題を抱えている。わが国固有の領土である北方領土や竹島への不法占拠に対しては、相手国との交渉もあり、継続的な取り組みが必要であるが、領土問題は隣接地域だけの問題ではなく、国家的な問題であることを国民一人ひとりが、再度、認識しなければならない。領土問題解決への交渉は日本政府が担う外交課題ではあるが、国民一人ひとりが歴史的経緯をしっかりと学ぶことと、解決に向けて世論を喚起し、領土に対する国民意識が高まっていることこそが外交交渉に求められるのである。2012年は、3月にロシア大統領選挙、11月にアメリカ大統領選挙、12月に韓国大統領選挙、そして、秋には中国共産党大会も予定されている。世界の政治体制が転換期を迎える今こそ、領土問題解決に向けて前進ある確かな運動を進めよう。さらに、領海保護への取り組みは、単に国防の観点にとどまらず、世界で6番目の広さ(約448万平方キロメートル 出典:経済産業省発表)を誇る領海と排他的経済水域(EEZ)における海底資源の保全・活用の観点からも取り組まなければならない課題である。日本近郊の海底に埋蔵されており、近年注目されているメタンハイドレートは南海トラフ(東海地方沖から宮崎県沖)と北海道周辺海域に、6兆立方メートル(米地質調査所調べ)が存在する。これは、日本の天然ガス使用量の100年分に匹敵する量であり、有効な新エネルギー源として注目されている。
領海侵犯問題に対しては、実効ある領海侵犯対策を実施するために、「領海侵犯罪」を規定するための領海法改正等に向けて取り組むとともに、実効ある国土保護のために、自衛隊による領域警備を可能にするための自衛隊法改正等の法整備に向けて、領土問題とともに主権者としての国民意識を喚起することに取り組みたい。
【主権国家「日本」のプリンシプル②~自主憲法制定に向けて~】
なぜ日本人はこれほどまでに憲法に対しての意識が低いのであろうか。言うまでもなく、憲法は主権者である国民が制定する最高法規であり、その憲法を基に法律や政令・省令が国会や行政府において制定されるのである。日本人は古来より知性と教養を兼ね備え、極めて高い「徳」と「和」を持って生活をしてきた。そのためか生活のなかで法を強く意識しなくとも道徳的に上手くやっていくことが出来る国民性のため、法に対する概念や価値観も希薄なのかもしれない。また、戦後レジームにおいて現行憲法は世界に誇れる平和憲法であるとの偏向的な意識教育とともに、憲法改正に関する法律的な空白期間が長期にわたって継続されたことが、憲法議論をすること自体が「良くないこと」といった風潮の形成に繋がり、憲法に対しての無関心を増長させてしまったことも否定できない。法治国家としての原点である「日本国憲法」について、私たちは2005年より様々な切り口によって国民の意識喚起を推し進めてきた。
2010年5月18日には、憲法改正に関する国民投票法が完全施行されている。しかしながら、憲法審査会は2007年8月に設置されたが2011年11月まで一度も開催されていなかった。それは、憲法審査会開催に必要な審査会の委員数や運営手続きを定める「憲法審査会規程」の制定に応じない政党があったためである。2009年6月に衆議院、それに遅れること2年たった2011年5月に参議院でも憲法審査会規程が制定され、2011年11月、衆参両院にて初の憲法審査会が相次いで開催された。これからの新しい時代に対応できる国民の生命と財産を守るための「日本国憲法」について未来志向な活発な議論を切望するところである。
私たち国民も憲法議論を行うにあたっては、改憲・護憲が議論の中心となるのではなく、わが国の憲法について歴史を紐解き理解を深め、自然災害や領土領海に関する問題、さらには外国からの武力行使への対応までも想定した国民の生命と財産を
守る使命を果たせる憲法についてしっかりとした議論を展開しようではないか。
特に、今回の東日本大震災、原子力発電所事故など「想定外」なことが起こったとしても、安易に超法規的措置という法治国家として崩壊している対応ではなく、国家は非常時に「想定外のこと」が起こることを想定し、如何なる状況においても法治国家としての秩序を損なわないようにすることが議論の中心になるべきである。そのためには、現行憲法に欠落している国家非常事態対処条項の必要性についても、主権者の目線による憲法議論の活発な取り組みを通して高めていきたい。
【つよい国家のプリンシプル~教育こそが凛然とした国を創る~】
わが国は、地球規模で見るに現時点では天然資源の少ない国のひとつと言える。わが国における資源を考えるにあたり、人的資源こそがわが国を発展させる資源であり、人的資源を如何に強化、活用していくかが、日本の重要な成長戦略なのである。
しかし、わが国の重要な資源であるはずの人材も、戦後レジームにおける教育制度で育った世代は、その枠組みは「詰め込み」から「ゆとり」へと大きく変遷はしたが、歴史や伝統、文化までもが軽んじられる「学ぶ」制度のなかで、古来より継承してきた武士道に代表される精神文化、他を慮る心、モラルや道徳心すらも失われつつある。私たち青年世代は、学校教育のなかで教科では無かったが、道徳の時間が存在し、「徳育」らしい教育を受けた。しかしながら今日、徳性を欠いた若者が多くなった現状を鑑みると、道徳の時間とは名ばかりで徳育欠如の偏向教育の結果であると言わざるをえず、その結果が、極端な過保護養育、モンスターペアレントの出現、さらには、個の尊重を理念とする個人主義が利己主義へと変質し、国家への帰属意識の欠如とともに国家の象徴である国旗、国歌の軽視にまでつながっているのである。私は、自国の歴史を語れない、自らが住み暮らす国に誇りを持てない、国家への帰属意識もない、自虐的な意識や思想を持った人びとが、国家の成長戦略となりうる人材として、グローバル社会で通用しうる輝きを放つことなど期待できないと憂慮するのである。
2006年に改正された教育基本法では、「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。」(教育基本法 前文一部抜粋)と改正されるとともに、教育の目的に「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の発展に寄与する態度を養うこと。」(教育基本法第2条5項)等が追加された。それを受けて、2012年から「生きる力」を育む理念のもと、小学校、中学校、高等学校で新学習指導要領が順次全面実施される。これは、変化の激しい時代を生き抜くために、確かな学力、豊かな人間性、健やかな体を育むことを目指す内容となっており、私たちも日本JCが積み上げてきた青少年育成のための様々なプログラムや全国のLOMが展開している事業などを通して、自国を誇れる歴史観と確かな国家観を醸成する運動を展開するとともに、わが国の未来を切り拓く、リーダーとなりうる人材育成の機会を積極的に創出したい。
そして、未だ頭角を現していない、情熱とエネルギーを兼ね備えた地域や国家を変革しうるリーダーの原石が全国各地には必ずいるはずである。私たちは、そんな人材を連綿と築き上げてきた事業やプログラムを活用することで、インターミディアリーとして、地域の未来をデザインする地域プロデューサーへと育成していきたい。
さらに、全国に展開する有機的なネットワークを活用して、卓越した人材を発掘し、磨き上げることでこの国の未来を託す、世界で通用するグローバルリーダーを創り上げていかなければならない時が来たのである。
また、未曽有の災害を経験した私たちは、被災からも「学ぶ」ことが必要である。まずは、今あるJC災害ネットワークを、広域災害に対しても機能する救援相互ネットワークへと強化するとともに、JCの枠を超えて日本政府、行政、企業や他団体とも有機的に機能させる仕組みへと発展させ、想定外の災害に対しても被災地の復旧・復興に迅速に対処しうる実践的な防災・減災の災害教育に積極的に取り組みたい。
教育は「国家百年の計」に属するといわれる。国家も組織もしっかりと未来を切り拓く教育を実践していくことが何よりも大切であり、日本が国家として成長し続けるために、そして、グローバル社会において凛然たる国家であるために、教育こそがつよい国家のプリンシプルであり、日本の成長戦略にもなると確信している。
【今こそ日本をつよくする~グローバルな視点で見た「経済と地域の再生」~】
「失われた20年」と言われる長期の景気低迷、財政赤字、様々な国内問題に加え、東日本大震災と原子力発電所事故がわが国をおそい、「日本はこの危機を乗り切れない」と予測する国もある。しかし、日本は過去にも幾度かの国難に直面したが、雄々しい国民により感奮興起し「奇跡」を起こしてきた。しかし、「奇跡」といっても神風が吹くような神がかり的な僥倖を期待するのではなく、国民一人ひとりが一切の妥協を排し、「変わらないために変わる」自己変革により難局を乗り越えなければならない。
日本経済は、世界経済の構造が大きく変革するなか、過去築き上げてきた数々の成功モデルも大きな行き詰まりをみせ、構造的な問題と解決しなければならないいくつもの課題を抱えている。この20年間、景気対策により景気が上向いても国内の需要に力強さがなく、成長を外需に頼るものの、為替相場に大きく左右され、円高進行のたびに産業空洞化や生産拠点の海外移転を憂慮する構図が繰り返され展望が開けない。疑うところもなく、わが国の発展を牽引してきたのは「ものづくり」であり、製造業の国際競争力は今後とも維持していく必要があるが、企業経営の現状としては、「ものづくり」は新興国などの台頭により、厳しいシェア争いを強いられるとともに、製造業に限らず、日本企業の収益力は総じて苦戦している。この背景には、経済成長が鈍化することによって市場が飽和状態となり、売値が上がるインフレから売値が下がるデフレに転じてきたことのみならず、製造業の成長減退を補完する非製造業の生産性が低いことが影響している。
経済のグローバル化がますます加速するなかで、日本が今後も発展していくためには、今ある弱みを将来の強みへと変えていくことが重要であり、構造的な問題や解決しなければならない課題に対して正面から向き合い、議論を尽くしたうえでの解決策と一切の妥協を排した挑戦が必要なのである。つまり、経済の再生には、グローバルな産業革命への先陣争いに加わる以外に日本には進む道がない。2011年11月、ハワイで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)においてTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加方針が表明されたことにより、多くの問題と課題を抱えているTPPについても中長期的な視点に立った議論と理解を国民一人ひとりが深めていくことは喫緊の課題となったのである。
今の日本にとって、食糧自給率や雇用の観点からも農業の再生なしにTPPに参加するのは難しいと考える。しかし、日本を取り巻くグローバル市場は急速に新たな枠組みに向けて確実に進んでおり、待ったなしの状況であることも忘れてはならない。20年先、30年先にも、グローバル市場のなかでしっかりとした立ち位置を確保するためには、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)に対する戦略的な取り組みとともに、今こそグローバルな競争力を身につける再生のチャンスと捉え、農業や非製造業においても、構造変革と生産性を改善し、TPPに対しても正面から向き合い取り組んでいかなければならないのである。
グローバルな競争力を地域の視点から見ると「選択」と「集中」が求められることとなるが、日本の地域にはグローバル市場においてもその価値を発揮できる数多くの資源が眠っており、地域こそ日本を活性化させ再生する原動力となると考える。「自分の地域は恵まれた地域ではない」「何の資源もない」ということはないはずである。そこに歴史があり、人がいる以上、今までの生活の蓄積があり、その地域固有の価値、例えば農林水産物やその加工品といった地域産品、ものづくり職人や地場産業の技術、自然環境、街並みや景観などの観光資源等の「地域のたから」となる原石が眠っているのである。
地域がグローバルな競争力を身につけるためには、たからの原石を発掘し、どの様に磨き上げていくかが課題であり、ソーシャルキャピタルの活用で地域のたからを創出するとともに、感性価値により新しいものづくりとサービスのイノベーションを創造することでグローバルリソースへと昇華させることが必要である。グローバルリソースとなった地域のたからこそが地域再生の原動力であり、地域を活性化させ再生するのみならず日本をつよくするのである。感性価値によるイノベーションの創造により、地域においても「変わらないために変わる」確かな取り組みを進めよう。
【サスティナブルな社会実現のプリンシプル①~未来を切り拓くエネルギー政策~】
わが国は、これまでも未来に向けて安定的に維持・発展が可能なサスティナブルな社会の実現に尽力してきた。今回の東日本大震災と原子力発電所事故に直面し、わが国のエネルギー基本計画は根本からの見直しが迫られることは明白である。
安全・安心なエネルギー政策について、国家としてどの様な方向性を示すのか、国民としてどの様な選択をするのかを決断するのは火急の課題となった。現在、地域によってばらつきはあるものの日本における電力の約29.3%(2009年実績 出典:電気事業連合会調べ)が原子力発電によって供給されており、国家のエネルギー政策として、今後も現状のレベルを維持するため、新たに原子力発電所の危機管理を強化するのか、それともその費用を代替エネルギーの研究開発に投じるのか、あるいは分散させるのかについて、費用対効果と環境負荷をひとつの判断基準として、私たち国民が選択していかなければならないのである。
安全・安心な社会を実現するために、段階的に原子力発電に依存しない政策に進むことに異論はないが、感情論で政局に利用されるのではなく、エネルギー政策の転換に伴い、国民が負担するコストを明確に理解したうえで、国民の本当の幸せを考えた未来志向な議論が必要なのである。原子力発電所事故の4日後、原子力モラトリアムを宣言し7基の原発を止めたドイツ連邦共和国は、4月に原子力サミットを開催し、そのなかで環境省のノルベルト・レットゲン大臣は「すでに原子力廃止については、社会の合意が出来上がっている。この政策に追随しない政党や企業は、恐竜のように絶滅するだろう」と発言している。わが国は、現在、休転していた火力発電所を緊急避難的に稼働し対応しているが、未来を切り拓くエネルギー政策として「変わらないために変わる」ことが必然的に求められているなか、自然エネルギーに対する概念を一新して最大限活用する政策へと進まざるをえないのは世界の情勢を見ても明らかである。
私たちは、新しいライフスタイルへの転換とともに、エネルギーの安定供給、安全保障、経済性の確保、地球温暖化問題への対応等、エネルギー政策のプライオリティに対し、経済と環境の視点をしっかりと持ち、エネルギーと国民の幸せについて考え、エネルギーリテラシーともいうべき能力を確立する運動を展開することで、国民一人ひとりが当事者意識を持った、未来を切り拓くエネルギー政策に向けて凛然とした歩みを進めていきたい。
【サスティナブルな社会実現のプリンシプル②~未来の子どもたちへの約束~】
急速な少子化の進展、生産年齢人口減少と高齢者激増はサスティナブルな社会の実現に向けての課題であり、大きな経済問題でもある。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計(出生中位死亡中位推計)によると、65歳以上の人口が総人口に占める割合(高齢率)は2012年3,075万人(総人口12,661万人)で24.3%であるが、2052年には3,725万人(総人口9,306万人)で40%に達するとしている。少子化の進展により人口が減っていくということは、国内市場が縮小することであり、経済にとって打撃ではあるが、生産年齢人口減少と高齢者激増はもっと深刻な問題を包含している。もちろん、将来人口推計だけが経済成長率を決めるわけではないが、このままいけば日本経済の活力は落ちて構造的にマイナス成長とデフレが定着するにとどまらず、社会保障制度や財政まで行き詰まってしまうのである。人口を増やすのは簡単なことではないが、徹底した少子化対策により、高齢率の上昇を抑えることができれば経済活力の低下は抑えられ、社会保障制度も安定するのである。
わが国では、子ども手当などの子育て支援策が講じられているが、少子化対策としては不十分である。今、必要なのは、女性が働きながら子どもを産んで育てられる環境づくりを支援する政策であり、子育ての負担を軽減するとともに、働きながら出産・育児ができる環境づくりである両立支援策なのである。女性が働き続けられる環境は、保育所における待機児童の解消、出産・育児休暇がしっかりとれる環境作り、フレックスタイム等の柔軟な勤務体制の定着で実現可能であるが、近年、出生率が回復しているフランスでは企業に出産・育児休暇後の女性を休暇前と同じポストに復職させる義務付けまでされている。さらなる人口減少が予想され、成長力も停滞している日本で強力な両立支援策を導入することは、出産後の働く女性が増えることで即効性のある経済効果とともに、出生率の回復により、生産年齢人口の減少や高齢率の上昇に歯止めをかける効果が期待できるのである。強力な両立支援策を実行することで、先進国のなかでも女性の社会進出が遅れているわが国の大きな潜在能力を引き出さなければならない。サスティナブルな社会の実現に向けて、社会全体で取り組む環境づくりを行っていきたい。
【相互理解で日本の未来を切り拓く~近隣諸国との未来志向な関係の構築~】
今や世界経済を牽引する地域となった東アジアにおいては、近隣のアジア諸国との未来志向な関係を構築することは、わが国の成長戦略にとっても非常に重要な課題であることは言うまでもない。特に中国は、アジア地域の安定のため、協調してリーダーシップを取って行かなければならない隣国であり、2012年7月に日中国交正常化から40年目の節目の年を迎える。中国との間には、歴史認識、領海侵犯等、解決に取り組まなければならない課題や問題が存在しているが、その一方で、両国は互いに成長戦略におけるカウンターパートであることは明白である。
私たちは、1986年より中華全国青年聯合会をカウンターパートに相互理解と友好交流による民間外交を行ってきた。井戸を掘ってくれた先達に感謝しつつ、引き続き交流と事業を力強く推し進めていきたい。2009年には「日中中期ビジョン5カ年計画」を策定し、「伝統を受け継ぎ、未来を切り開き、友好かつ実務的に」を原則に5つの項目にわたる交流事業を積極的に推進することに合意した。これは、それぞれが協力関係を持つ関係機関や諸団体・関連組織を有機的に活用し、広がりのある活動を念頭に事業を展開していくこととなっており、2010年より地方の見聞を広め、地方都市同士の交流を促進する事業を各地会員会議所とともに行い交流を進めている。「日中中期ビジョン5カ年計画」には「災害対策や災害時のネットワークなどの情報の交換・相互支援」も含まれており、未曽有の災害である東日本大震災の経験も共有するとともに、新たな事業をともに進めることで相互発展に繋げていきたい。
今回の東日本大震災と原子力発電所事故においては、163の国と地域、43の機関に支援意図を表明していただき、126の国と地域、機関から物資支援と約175億円以上の義捐金(2011年10月17日現在 すべて外務省発表)をいただいている。そして、2012年はJCI ASPACが香港で、JCI世界会議が台湾で開催される。この機会を捉えて、支援いただいた諸外国等への感謝の意を伝えるとともに、東アジアから世界に広がる相互理解の機会を創出することで相互発展に繋がる未来志向な関係の構築に向けて確かな歩みを進めたい。
【国家青年会議所としてのプリンシプル】
2011年、日本JCは16年ぶりに国際青年会議所(JCI)の会頭を輩出した。わが国は、国際社会において先進国としてのしっかりとした責任あるリーダーシップを発揮することができない状態が継続しているが、私たち青年世代は類まれな傑出したリーダーを輩出するとともに、日本の精神文化である「OMOIYARI」を発信することで恒久的世界平和の実現に向けて確実に前進している。
今回の東日本大震災においては、近隣アジアのJCはもちろんのこと、JCIオペレーションホープを通して、世界中の仲間から早い段階より迅速かつ継続的な支援をいただいている。JCIのフィロソフィーのもとに志を同じくして集う世界中の仲間に、心から感謝するとともに、強い絆で結ばれていることを実感している。日本JCは、JCIにおいて、長きにわたり運営面、運動面で自らの役割を自覚し、積極的なリーダーシップを発揮するとともに行動を起こすことで世界にインパクトを与えてきた。恒久的な世界平和の実現に向けて、私たちが国際社会において、果たさなければならない役割と責任はまだまだ数多くあり、今後もJCIとともにその役割と責任をしっかりと果たしていきたい。
JCIは、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアムサミットにおいて採択された国連ミレニアム開発目標(UN MDGS)への取り組みを行っている。日本JCとしても、その趣旨を正しく理解する機会を民間レベルで拡大していくとともに、国連基金との連携で進めるアフリカの子どもたちに蚊帳を送るNOTHING BUT NETSキャンペーンに積極的に取り組むことで、2015年までのコミットメント達成に向けて引き続き協力していきたい。さらに、国連グローバル・コンパクトへのコミットメントを推進することで、出来るだけ多くの日本企業がサスティナブルな社会を実現するための世界的な枠組み作りに
参加し、世界共通の理念と市場の力を結びつける力により、サスティナブルな企業経営と企業価値を実現するとともに、創造的なリーダーシップを発揮することで次代の必要に応えていきたい。
日本の国益に寄与する外交は、日本政府が担うものであり、私たちは国家青年会議所(NOM)として、世界平和に寄与する民間レベルでの積極的な取り組みと民間外交により、日本の良き理解者を全世界に拡げ、未来を切り拓く相互発展の物語をしっかりと描いていこうではないか。
【有機的な組織連携が織りなす組織として~最も頼られ、必要とされる青年の団体~】
日本JCは、組織を構成する各地会員会議所が活動する各々の地域において、最も頼られ、必要とされる青年の団体として確かな歩みを進めるために、ガバナンスを一層強化するとともに、本会、地区協議会、ブロック協議会が有機的な組織連携を図ることにより、一貫性のある情報受発信と組織運営を行っていく必要がある。
そして、日本JCの組織である地区協議会は、日本全国を10地区に区分した各々の地区における総合調整機関であり、その会長は日本JCの議決権を持つ常任理事であることからも、本会と各地会員会議所を有機的に繋ぐコミュニケーターである。国内外で展開されている運動を各地会員会議所にしっかりと提供するとともに、広域的な問題や課題に対してのカウンターパートとして、責任ある運動をともに進めていきたい。また、各地会員会議所にとって最も身近な運動体であるブロック協議会は、全国47都道府県に根づいている伝統や特色を活かしつつ、各地会員会議所が行う事業を有機的に補完するにとどまらず、スケールメリットを活かした効率的で効果的な連携推進運動やアカデミー研修の場を提供するとともに、東日本大震災の復興支援においても実効ある救援相互ネットワークの調整役として主体的な役割を担うことで、負託と信頼に応えうる、きめ細やかなサービスを提供していきたい。さらに、本会は、公益に与する団体の責任において、組織の透明化、財務体質の健全化ならびにコンプライアンスの遵守をより一層強化するのはもちろんのこと、日本の未来を切り拓く青年の運動を実践する運動体として、責任ある運動の受発信を通して国民の負託と信頼に応えうる組織へと昇華させることに積極的に取り組んでいきたい。
日本JCは、2010年7月に公益社団法人として生まれ変わった。公益法人制度改革については、2013年11月をもって新制度に完全移行されるため、未対応の各地会員会議所は早急に取り組まなければならない課題となっている。法人格移行についての情報を一元管理するとともに、各地会員会議所の要望に添ったしっかりとした支援を行っていきたい。
日本JCは、62年にわたる連綿と受け継がれてきた組織であるが、「変わらないために変わる」自己変革を行うことで、各地会員会議所の負託と信頼に応え続けられる組織として、いつも各地会員会議所の隣でともに凛然とした歩みを進めていきたい。
【結びに~凛然とした誇りある国 日本~】
日本は、東日本大震災と原子力発電所事故により多くのものを失った。多くの尊い国民の生命、住み暮らしてきた家屋や生活の基盤となる仕事、もしかしたら、連綿と築き上げてきたコミュニティ、これからの未来に抱いていた夢や希望すらも失ってしまったかもしれない。今のこの絶望的な現実から逃げ出したくなることもあるかもしれないが、私たちは今ある現実を正面から受け止め、決して諦めることなく、また一からひとつずつ積み上げていかなければならないのである。今上天皇のお言葉にもあるとおり、私たちは雄々しい国民なのである。困難に直面した時こそ、正面から向き合い、挑み、励まし合い、人のつながりを大切にして、必ず立ち直る国民でありたい。
『歴史を振り返ると、国家が苦境に立たされた時代こそ、最も実り多い時代であった。それを乗り越えて初めて、国家はさらなる高みに到達するからである。』 サミュエル・スマイルズ
日本に「四度目の奇跡」を起こす主役は、「変わらないために変わる」行動を起こし、清々しく常に進んで止まざる青年である。全国のメンバーの皆さんとプリンシプルを持って「凛然とした誇りある国」日本を創造しようではないか。
青年、それはあらゆる価値の根源である。
そして私たちは青年である。