「厭離 穢土 欣求 浄土(おんり えど ごんぐ じょうど)」
混沌とした現代社会を真に明るい豊かな社会へと導くのは私たち青年の責務である。私たちは今、この国の悠久の歴史の中で光り輝く未来を信じて、学び、そして行動する責任世代であることを自覚しなければならない。
青年たちよ、須らく奮起せよ。そして、取り戻すのだ、日本の矜持を。
【はじめに】
1560年、今川義元が桶狭間の戦いで織田信長に討たれた時、今川軍の尖兵の隊長であった徳川家康は、命からがら故郷(岡崎市)の大樹寺に逃げこんだ。家康は己のふがいなさを悔やむと共に、総崩れとなった今川勢の前途を悲観し、もはや自分の命はこれまでだと考え、大樹寺にある先祖の墓前で自害しようとする。その時、時の住職、登誉上人に諭された言葉が「厭離穢土 欣求浄土」である。「お前は若い時から戦場に向かっているけれど、その心はただ敵を倒すだけにあるのか。功をたて、城を落とし、国を奪って、それでお前は何がしたい。乱世においては、武士が私利私欲のために戦っているので国土が穢れている。正しい目的をもって住みよい浄土にするのがお前の役割だ。」と説かれ、「志が小さい、もっと大きな志をもて。」と強く諭された。自身の為すべき役割に気づいた19歳の家康は、その後、この8文字を旗印に平和な国土の建設に邁進し、265年に及ぶ天下泰平の世を築き上げた。
人は、人生において幾度も挫折するものである。しかしながら、目指すべき夢が明確ならば、必ず乗り越えることができる。そして、幾度も困難を乗り越えた強靱な精神と情熱をもった人は、自信と誇りに満ちた活力ある人生を手にすることができ、周囲を希望の光で照らし出すことができる存在となる。家康は、様々な挫折を乗り越え苦しみを糧とし、夢や目標に向かって突き進んだことで、念願の天下泰平の世を築き上げることができたのだ。
「人生において最も大切なのは経験である。」
これまでの青年会議所の活動、運動を通し、どんな困難が立ちはだかろうとも不可能を可能にしてきた場面を何度も体感してきた私自身だから、そう断言できる。志を高くもち行動した者だけが得られる、かけがえのない経験がある。だからこそ行動するのだ。特に青年期における経験は、その先の人生を大きく変えてくれる。また、人生において「成功」は約束されていないが「成長」だけは約束されている。それだけに時代の変革者たらんとする私たちJAYCEEには、失敗を恐れない積極果敢なチャレンジ精神と行動力が、今求められている。それにより、人間的魅力をもった強いリーダーシップを得ることができるのだ。そして、世の中の営みはすべて「人」によって成り立っている。この不透明感が漂う現代社会にあっても行動的で意気あふれる人財が育ち、活力に満ちあふれた地域をつくり上げていくことが、必ずや「たくましい国」日本を創造していくのだ。だから、私たちJAYCEEから光り輝く未来に向けて奮起するのだ。
【この国を牽引する責任と使命】
JAYCEEの多くは、中小零細企業で経営に関わるメンバーである。私の出身地は地方都市であり、決して大きくはない経済圏において生業を立てている。私は、自分の会社においてはプレーヤーであり、そしてマネージャーでもある。その両方の役割を担いながら社業を営んでいるのである。2008年のリーマンショック以降、多くの中小零細企業が倒産した。会社が倒産して行き場を失うのは、経営者や経営幹部などのマネージャーたち、そして、従業員つまりプレーヤーたちも同じだ。だから彼らは自社の経営状態に関心をもち、社業の発展を心から願っている。そして、会社の繁栄の中に自らの幸せがあることを知っているのだ。
私たちと国や地域の関係も同じである。国や地域と私たちの生活は直結している。万が一、国が凋落すれば危険にさらされるのは私たち国民である。また、地域が衰退すれば、次世代の子どもたちに故郷をつなぐことができないかもしれない。国や地域をより良くしようと牽引するのは、決して政治に携わる人たちだけではない。だから、これからも私は心眼と矜持をもって国や地域に常に関わっていきたい。そして、それは決して難しいことではなく言い換えれば、人々が属する家族や会社といった身近な社会と接点をもち、大切に想うことから始まっているのである。家族を守り、友を助け、地域を愛し、国を想う。この国の一員である私が能動的に変わることから、水面を走る波紋のように社会が変わっていくのだ。だから先ず、私自身が責任と使命を感じ私の大切な人たちにとってかけがえのない存在になろう。そこにいなくてはならない存在になろう。そんな私の小さな変化から世界を変えられると信じている。そして、世界、国、地域、家族などに属している者として、自分の立ち位置を確認し何をすべきかを青年会議所で学び、そして行動しよう。誰よりも明るい未来を望み、日本を牽引するのは責任世代である私たち青年でなければならないのである。
【「たくましい国」日本のかたち】
今、どれだけの日本人が一国民であることに誇りを抱き、目の前にいる家族が住み暮らす地域、この日本の未来に希望をもてているのだろうか。日本というこの国を大切に感じ、その拠りどころとなる豊かな文化や先達が築き上げてこられた価値観、歩んでこられた誇れる歴史があるにもかかわらず、私自身にもこの国の未来に対する言い知れぬ不安が脳裏をよぎる。戦後の日本は国家として迷走し、本来あるべき日本とはあまりにもかけ離れた姿を形成してきたのではないだろうか。そして、その原因は、戦後のGHQ(連合国軍総司令部)の統治政策に見ることができる。GHQの占領政策の目的は日本国家の解体であり、日本を日本たらしめてきた、あらゆる価値観が否定され、日本人から矜持を奪う結果につながった。こうした状況の中で作られたのが現行の日本国憲法である。憲法の出自については、私たちも近現代史の検証や憲法問題の取り組みで明らかにしてきたが、押しつけられた憲法と批判するだけでは意味がない。これまで国家とは統治(権力)機構としての側面だけにとらわれがちであるが、歴史、伝統、文化を共有する歴史的な共同体と捉えるべきではないだろうか。
幕府使節随行員として清国へ渡った幕末の藩士たちは、欧米列強に国益を搾取され、国土を蹂躙されている清国を目の当たりにし愕然とした。そして、内乱が治まり、政情が一時的に保たれていることだけで安堵する清国の人たちを見て強い危機感をもったという。その危機感とは、直接国益が損なわれることに対してのものではなく、自分たちの力で自分たちの国を護ろうという意識がなくなってしまうことに対してのものであった。
国家を歴史的な共同体と見れば、今を生きる私たちの世代だけでなく、この国を創り今日の礎を築いてこられた先達の世代、そして、これから生まれてくるすべての日本人によって構成されているのが日本国家である。この過去から現在、そして未来へのつながりを強く意識し、私たちは先達の声に耳を傾け、未来への可能性を切り拓いていかなければならない。それが過去と未来のつながりに立つ私たちの責任なのだ。憲法は国のかたちの根幹であり、これまでの歴史、伝統、文化、そして受け継がれてきた精神性に立脚したものでなければならない。これまでの護憲、改憲といった二項対立の議論から脱却し、今こそ、私たちは未来に希望を託すことのできる国家像を、憲法論議を通じて描いてみたい。そして、青年らしく変えるべきは変え、守るべき理念は守ることを正々堂々と主張すると共に、全国各地でさらなる憲法論議が深まる運動を展開したい。そして、わが国の憲法が国民の手により築かれることを信じている。
【海洋国家・日本の姿】
自分たちの住む日本が四方を海に囲まれ、海から多くの恩恵を受けている海洋国であることを、私たちは認識しなければならない。日本は国土面積こそ38万平方キロメートルと小さいものの、日本の領土・領海とEEZ(排他的経済水域)を合わせた面積は447万平方キロメートルにも達し、世界第6位の広さを誇る。この数字をみれば、わが国が海洋大国であることが理解できる。そして、近年の調査では、南海トラフ、北海道周辺海域に、6兆立方メートルのメタンハイドレートが存在すると言われており、エネルギーの大半を海外からの輸入に頼っているわが国にとって、潜在的な可能性が期待されるところである。しかし、東シナ海では日中間のEEZが重なっており、日中中間線の4キロほど西側に位置する白樺ガス田の開発に、急速な経済成長によりエネルギー問題を抱えた中国が着手している。日本政府は鉱床が日中中間線を越えていると抗議するものの、開発は今なお続いており、絶対的にわが国の国益は損なわれているのである。1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が東シナ海の海底調査を実施した結果、尖閣諸島近海に埋蔵量豊富な油田がある可能性が高いことを発表した。その数年後に台湾、中国が突如として尖閣諸島の領有権を主張し始めたのだ。東シナ海ガス田開発問題もこうした歴史的文脈にあることを、しっかりと理解しなければならない。歴史的にみても尖閣諸島は、わが国固有の領土であることに疑う余地はないが、果たしてどれだけの国民がこのことに意識をもっているだろうか。領土・領海問題は、わが国の主権に関わる問題であり、私たちの無関心が国益を損ねていることを自覚しなければならない。私たち日本人は、北方領土、竹島を含め、この国の領土・領海を正しく理解し、そこにある大切な天然資源を未来に向けて守りゆく意識を高める運動に取り組んでいきたい。
【国家を構成する主権者としての義務】
2013年7月21日に実施された参議院議員選挙では、憲法改正、原子力政策、経済政策などが主要な争点とされ、結果は、政権与党(自民党・公明党)側の圧勝により衆参の「ねじれ」が解消されることとなった。この選挙では公職選挙法改正により選挙運動におけるインターネットの活用が解禁され、若年層の政治参画に対する一定のプラス効果は認められたものの、投票率自体は52.61%と振るわず、ネット解禁が投票率向上に必ずしも高い有効性をもつとは評価しがたい結果となった。世界に目を転ずれば、21世紀になってもなお、民主化を求め、自国の進むべき方向性を決める「一票」を獲得するために、様々な国の民主化運動に絡む流血の惨事が起こっている。こうした国々の人々の多大な努力と犠牲を横目に、わが国の「民主主義」を巡る情勢をみると、いささか恥ずかしい気持ちに苛まれる面があるのも事実であろう。誠に幸いなことに、私たち日本人は生まれながらにして「主権者」であり基本的人権も保障されているのは誇らしいことだが、果たしてどれだけの人が国益やこの国の未来を真剣に考え、各政党が掲げる政策や候補者の人物を吟味して投票しているだろうか。また、選ばれる政党や候補者側はどうだろうか。経済面では世界的に認められた地位を築いてきた日本であるが、政治面では、選挙における一票の格差が立法府の怠慢により未だに放置され、「地盤・看板・鞄」即ち、血統や知名度、資金を重視するいわゆる「三バン選挙」が未だに残り、選挙運動においては政策ではなく候補者名だけを街宣カーが連呼し、選良たちの集う国会や議会では野次の応酬が散見され、余り自慢できない現実が横たわっている。私たちはこうした現状を今一度しっかりと踏まえて、公正中立、不偏不党の公益社団法人として、日本の民主主義をさらに高度なものとするために、継続的に行動しなければならないと考える。有権者が選挙において果たすべき役割を自覚すると共に、政策本位による政治選択を行える環境の拡充に取り組み、国民の誰もが、地域を想い、国を想い、未来を描きながら政治参画できる社会にしていきたい。
具体的にはまず、従来から政策本位による政治選択を実現するために取り組んできた公開討論会をさらに進化させたいと考える。これまで、先達の10年以上に及ぶ運動展開によって、「青年会議所による公開討論会」は全国的に定着しつつあり、討論内容も年々進化し、手法においても候補者相互のクロストークにより深味のある議論が実現している例もある。本年は大規模国政選挙が予定されていないこともあり、身近な地方自治レベルにおいて、こうしたクロストーク型を原則としつつ、規模、内容のさらなる充実と、事前周知の徹底を図るなどして「実際に討論会に足を運ぶ有権者数」を劇的に増加させ、「地域住民が自らの共同体のあり方を真剣に考える」取り組みを図っていきたい。
また、PDCAサイクルにおいてチェック機能にあたるマニフェスト検証は、当選した政治家とその政策を評価するものとして、なかなか浸透していないのが現状であると考える。しかし、政策の実現は、政治を行う者だけの責任ではなく、有権者にも責任があり、政策について深く学ぶことで、有権者としての民度とリテラシーを向上させる機会として定着させるべきである。私たち有権者が選択した政策の進捗状況を確認し、次回の政治選択に対しての判断基準にするためにも、マニフェスト検証に取り組んでいかなければならない。
そして、2011年に運用を開始した「E-みらせん」は、若年層の政治参画を向上させること、候補者の考えをより多くの国民に周知すること、そして有権者の声を政治へ届けることなどを目的としている。少しずつ定着しつつあり、先の選挙でも多くの有権者、候補者が活用したと感じているが、まだまだ充分に機能しているとは言い難いことも事実だ。有権者がいつでも、何処でも候補者の政策を確認でき、政治家の人柄や政策をデータベースとして蓄積できる「E-みらせん」を、今後も国民に必要とされ、実用性あるものに進化させ、政策本位による政治選択を実現させたい。
【真の経済復興】
2012年12月26日に発足した第二次安倍内閣において安倍首相は、(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略、の「三本の矢」からなる「アベノミクス」を提示した。安倍内閣は最優先政策を経済再生と位置づけ、デフレ脱却に向け、金融・財政政策については既に「矢」が放たれ、アメリカのオバマ大統領をはじめ各国の政府関係者、有識者からも支持され内外の注目を集めたが、肝腎な成長戦略については未だ有効な具体策が提示、実行されておらず先行きには不透明感が漂う。この間、GDPの2倍超という世界最悪水準の公的債務を有するわが国は、国際社会からは、消費税率引き上げや社会保障見直しによる現実的な財政健全化が求められているのが実情である。そもそもわが国のような自由主義経済体制の下では、経済成長はひとえに民間セクターの努力により実現するものなので、まずは民間セクターに位置する私たち青年経済人が努力しなければ何も始まらない。
また、わが国は少子化に伴う生産年齢人口の減少傾向が続いており、こうした状況下で経済成長を実現するには、生産性の飛躍的な向上が必須となっている。一人ひとりが、この生産性向上の面からどのような経済再生への貢献ができるのかを真剣に考えることが、オール日本で経済復興に向け力強く前進させる上でのカギになる。このような状況の中で、私たち青年経済人は、日本経済および地域経済を支える中小零細企業としてどのように行動すべきなのだろうか。
今こそ、青年会議所の活動、運動を通じてマクロ、ミクロ両面における経済情勢に対する見識を高めると共に、TPP交渉の本格化や新興諸国の動向などのグローバルな環境変化を踏まえつつ、これをグローバル市場における1プレーヤーとしての戦略的かつ具体的な行動に繋げることにより、わが国の経済成長の担い手となるべく努力していこうではないか。私たちが青年経済人として、持続可能な経済活動を通じ、商品・サービス提供による社会貢献を行うことはもとより、雇用創出、納税、地球環境への貢献といった社会的責任をしっかりと果たし続けることが明るい豊かな社会を実現する上で何よりも重要であるという「当たり前だが難しいこと」を今一度、問題意識として共有しつつ、共に前に進めていきたい。
また、これから経済交流が進展するであろうロシア企業との関係構築の足がかりを日ロ友好の会と連携を図りながら進めていくと共に、現役JCメンバーであり、国会議員でもあるメンバーで構成されたJC議連とも連携し、オール日本で経済復興に向け力強く前進させたい。グローバル化する時代の中で、日本が生き残り、存在感を示し、世界を牽引していく「たくましい国」日本を創造するためには、私たちが青年経済人としての責任を果たし、真の経済復興が必要不可欠なのだ。
【この国を牽引するグローバルリーダーの育成】
失われた20年と言われるように、かつて日本が誇った技術力や経済力は、台頭する新興国との国際競争の中で相対的に力が低下しているように感じる。また、政治、経済、社会のシステムも行き詰まりを見せている。しかしながら、それ以上に憂慮すべきは、日本を支えてきた大切な価値観や他を慮る心といった日本の伝統的な精神性に国民の大半が価値を見出せなくなっている状況である。私たちが未来を切り拓くために選択すべき道は、先達が大切にしてきた世界に誇るべき日本の伝統や文化に立脚したものでなければならない。今一度、社会を覆う閉塞感を打破するために、日本の矜持を取り戻すべく過去に学び、現状を取り巻く幾多の問題を解決するための知識を得て、行動すべきときである。そのために自国を誇れる歴史観と確かな国家観を兼ね備え、柔軟な発想力と行動力で国民を牽引し、未来を切り拓き、グローバル化する社会の中で活躍するリーダーをわが国の貴重な人財として全国各地に育てていきたい。東日本大震災が発災し、社会システムが大きく変わろうとしている今、新しい「震災後」時代の礎を築き、この国を牽引する力強いリーダーの誕生を切望している。
【新しい「震災後」時代の礎を築く】
東日本大震災が発災した2011年、全国から多くのJAYCEEが被災地支援に駆け付けた。私たちのこの迅速な行動には、各方面から多くの評価をいただいたが、同時にいくつかの反省点も残した。OBを含めると20万人をも超えるJAYCEEのネットワークを有しながらも、必ずしも有機的に機能しなかった。青年会議所という組織の中で有事に対処する体制が確立されていれば、今以上にJAYCEEのネットワークを活かした支援活動ができたと感じている。
震災から3年が経つ。何らかのかたちで被災地支援に携わってきたJAYCEEには、卒業された方ももちろんいるが、今もなお各地会員会議所の中心で活動をしているメンバーも少なくないはずだ。人々と関わって得られる「ありがとう」という感謝のコミュニケーションによって、人も救われ、また自分も、自身の存在を再発見できて嬉しいと思う。そういった共助の領域で、純粋な行動から得られるものもJCではとても大切だ。そう思っているメンバーが全国にはたくさんいる。
『人間というのは、もともとその性は善である。しかし、その善が表に現れないのは、容れ物である環境が劣悪であるからである。』 上杉鷹山
私たちは、震災での反省を踏まえ、共助の領域で多くの人たちが確実に実働できる防災ネットワークの拡充と強化を進めるべきである。そして、災害時に備える防災の備蓄パッケージであるJC-AIDの普及に力を注いでいきたい。この2つのシステムを構築することで、社会に期待され、信頼される組織へと進化していくことは間違いない。これは青年たちが創立から62年の長きに亘り、地域社会に貢献しうる運動を積み重ねてきたJCだからこそできるものである。私は共助の領域で自己実現を叶える人たちを応援したいと心から強く思う。
被災地での復旧、復興はまだまだ進んでいない。「時計の針」は少しずつ進んでいるようにみえるが、時を刻む針の音は、まだまだ力強さを感じない。被災地の方々は、今見える未来から目をそらさず、恐れずに次の一歩を踏み出している。私たちと共に歩んでいくことで、夢や希望を叶えるべく、次の自分に成長できるのだ。今はまだ帰りたくても帰れない場所があり、小さくて弱い陽の光の中であり、見慣れない景色へと変わるかもしれない。しかし、必ず復興の先にある陽の光を浴びる場所は、優しい光であふれていると信じている。
だからこそ10年後、20年後に活かされるJC運動を見据え、真の復興がなされるその日まで、被災地に心を寄せる支援体制を整えていきたい。人と人、LOMとLOMがつながる支援を進め、被災地、そして日本の復興という「未来の地図」をしっかりと描いていこう。
【日本人としての「道しるべ」】
ここである意識調査結果を紹介したい。高校生に『自分の国に誇りをもっているか』の問いに「もっていない」と答えたのは48.3%だった。さらに『あなたの身の回りに「あのようになりたい」と思う大人がいるか』の問いに「いない」と答えたのは、小学6年生が19.8%、中学2年生が28.4%、高校2年生が30.5%であった。学年が上がるにつれて、自分の手本としたい大人がいなくなっていることが如実に顕れているのではないか。身近に手本となる大人がいない状況の中で自国に誇りをもてる子どもを育てるということ自体無理があるように思う。子どもは社会を映し出す鏡であり、まずは私たちが襟を正し、次世代に伝えていくべき日本人としての精神的支柱を取り戻すことから始めなくてはならない。取り戻すべき精神的支柱、それは「日本固有の美徳」を基盤とした道徳心だ。
明治初期の欧化主義に走った一時期を除き、わが国では「日本固有の美徳」を基盤とした道徳教育が修身科を中心に学校教育の中で行われていたが、大東亜戦争終結後のGHQの統治政策によって消滅してしまった。未だ学校で十分な道徳教育が行われない最大の原因はここにあり、子どもたちの規範意識の低下が問題だと見受けられる反社会的な事件や事故は後を絶たない。見習うべき手本となる大人が不在で自分の未来を描けない若者が「自分さえよければそれでいい」「今さえ楽しければそれでいい」といった刹那主義に陥るのはむしろ当然かもしれない。子どもたちの生き方が刹那的になれば、社会の秩序は低下し、結果として活力までもが低下してしまうのだ。伝えていくべき道徳心は、子どもたちが学校生活や社会に出てから生きていくために、必要な規範であり、心の指標となる。そして、国家や地域への帰属意識を醸成させる自尊心や公共心、他を慮る心は、これから子どもたちが、グローバル化が加速する時代を生き抜くために重要な価値観なのである。子をもつ親として、地域社会を構成する責任世代としての義務を果たし、日本が世界に誇る「日本固有の美徳」を子どもたちに伝えていこう。日本人に根付いてきた価値観である道徳心の醸成を、地域社会で育む運動として、地域の子どもたちは、地域で育てていくことを大人が自覚し、地域社会全体で次世代を担う子どもたちを守っていこう。「たくましい国」日本の創造には、多くの学びから培った自信と誇りからなる強さと、過去から引き継がれた日本人の道徳心からなる美しい精神性を兼ね備えた人財の育成が必要なのだ。
【意気あふれる人財の増強】
国や地域、さらには次世代のために活動する仲間が増えることは、この組織にとって大きな発展、強みにつながる。そして何より、各地域に同じ志をもったメンバーが少しでも増えることが、必ずや地域の発展やこれから生まれてくる子どもたちに明るい豊かな社会を残していけるものと考える。全国の会員増強の最前線には、トップリーダーである理事長と会員増強担当者の背中がある。そして、地域への想いを伝える多くのメンバーがいる。本年も、ブロック会長には各地のニーズを集約し、卓越したリーダーシップを発揮していただき、組織力を活かして彼らを力強く応援して欲しい。
現在、全国のメンバーの平均在籍年数は4年5カ月である。青年会議所という学び舎において4年、5年で卒業してしまうメンバーが増えてきているのが現状であり、20代、30代という貴重な青年期に多くの経験や機会を逃している同世代の方々がいるのは非常に残念なことである。特に私は、この学び舎で多くを経験し学んできたからこそ、そう感じるのである。本年は、より多くの若さあふれるメンバーを迎え入れるために、若い世代をターゲットにした会員の増員を推進していきたい。
また、組織や地域、国家を主体的に牽引し、輝かしい未来に向けて弛まなく行動する意気あふれる人財を多く育成しなくてはならない。これまで、日本JC及びJCIが積み上げてきた各種プログラムを活用して、私たちが思い描く理想の社会を実現するために公共の担い手として自己研鑽に励む人財をより多く育てていきたい。常により良い変化を生み出すために学び、行動し続けることのできるリーダーたちが、互いのつながりの中で切磋琢磨し、輝かしい未来に向かって牽引しうる意気あふれる人財の強化が必要である。
【活気に満ちあふれた地域による持続可能な社会の実現】
現在、わが国においては急速に少子化が進行し、人口の減少と高齢化が同時進行している地域が数多く見受けられ、その現象は特に地方圏において切実な問題となっている。地域を自立的に活性化する取り組みが真に問われ始めている。地域における産業や生活空間としてのまちは、静態的に存在するものではなく、環境変化のもとで地域毎に変化を見せ、また同じ地域内でも時代と共に変わっていく。逆に、環境変化に対応できなければ産業もまちも空洞化する恐れがある。グローバル化などの国内外における環境変化は地域間及び都市間競争をも生じさせ、その結果として「都市」の空洞化が生じることは否めない事実である。グローバル化の進展など地域を取り巻く環境変化のもとで、地域経済の自立的発展に重要なのは、やはりその地域を構成する「人」ではないか。活気に満ちあふれた地域を創造するには、人が集うことから始めなくてはならない。地域の過疎化や高齢化は、日本全体の活力を低下させる問題であり、全国696の会員会議所が喫緊の課題として取り組まなければならない。地域のことを想い、愛する能動的な人々が多く集う地域は必ず活性化する。そんな人々が関わり集う仕組みづくりを継続していかなくてはならない。
これまで、地域に潜在する歴史的文化、人物、食材などをはじめとする資源を発掘し、多くの人々が関わり「地域のたから」へと昇華させてきた。その過程で多くの地域住民が関わり、企業参画を含めたコミュニティ活性化を促し、人と人、企業と地域をつなげた社会関係資本を生みだしてきた。次に注力すべきは、全国へ、世界へ向けて発信することではないか。そして、同時に地域の起爆剤になりうる「地域のたから」であるのかを見直す機会も必要だ。真に社会関係資本というつながりが構築された「地域のたから」であり、地域の人々が魅力を感じているのか。資源の発掘、人、企業、地域の関わりなど、「地域のたから」へと昇華していく過程をチェックすべき時期にきたと考える。今一度、プロセスイノベーションを起こし、そこに集う人々が魅力を感じ、未来に対して希望をもてる「地域のたから」を生み出していこう。
【エネルギーの地域資本化による持続可能な社会】
これまで環境問題やエネルギー問題について議論を重ねてきた。京都議定書の発効や化石燃料の価格高騰、そして、福島第一原発事故によって、再生可能エネルギー、水、廃棄物、森林などの環境アセットへの注目が集まっている。特に、ソーラーや風力などの再生可能エネルギーの普及などは、地域性が極めて高い。私は、環境やエネルギーの問題を、地域と結びつけた議論にシフトチェンジしていきたいと考えている。持続可能な社会を実現するためには、地域資源のローカリゼーションが欠かせない。エネルギーをはじめとする地域資源を循環させることが、地域のコストを下げる。地域資源には、自然や生物などの自然資源、歴史的な建造物などの歴史的資源、それらを人の知恵や技術で活かした人的資源、地域の人たちの協働や信頼によるネットワーク、文化や暮らしなどの社会資源、貨幣や循環の仕組みをつくる経済資源、エネルギーを供給するインフラやパブリックスペースなどの物理資源などがある。こうした地域の資源が、そこに暮らす人々の生活と密接に関わり、経済的に循環することで、地域のマーケットフロントにつながり、マーケットの拡大や地域コストを下げる流れが生み出されるのではないだろうか。エネルギーや環境への取り組みを通して地域を活性化する手法を新たに模索し、活気に満ちあふれた地域の実現に向け、エネルギーの地域資本を次世代に残したい。
【「JC版 新・日本風景論」】
2013年6月22日、日本の自然信仰や独特の芸術文化の象徴として、富士山と三保の松原が世界文化遺産に登録された。多くのメディアが取り上げ、多くの国民が歓喜している姿は記憶に新しい。まさに「日本のたから」から、「世界のたから」へ昇華した瞬間であった。今では、富士山への登山者や三保の松原の景観を楽しむ人々がさらに増えているようだ。これにより多くの人々が関わり、自然との共生を生み出し、日本人、そして世界中の人々の心に深く根付くきっかけになったことは間違いない。私たちは、このように少しでも多くの「地域のたから」や「日本のたから」を国内はもとより、世界中へ、さらに次世代に発信し伝えていくべきだと考える。
日本が近代化を進める中で、当時の先達がエポックとして取り上げていたものに「日本風景論」というものがある。これは、志賀重昂氏が明治初期クラーク博士のもと日本の近代を切り拓いた内村鑑三、新渡戸稲造らが学んだ札幌農学校(現北海道大学農学部)の第五期生として自然を愛し、人を愛し、自らを厳しく律する道を学んでいく中で、1894年(明治27年)に古典文学からの豊富な引用と、地理学術語を駆使し、日本の風土がいかに欧米に比べて優れているかを情熱的な文章で綴ったものである。この発刊は、日本人の景観意識を一変させた書物であった。各地域に存在する「地域のたから」を地域に住まうすべての人々が認識し、各方面へ広く知らしめるために、「JC版 新・日本風景論」を編纂したいと考えている。これには、「地域のたから」だけではなく、これまでの日本の歴史、特に近現代史を検証し、過去から未来へと続く日本人として大切にしなくてはならない伝統や文化、美しい精神性などを「日本のたから」として盛り込み、私たち責任世代の青年が次世代に残すべきもの、すべてをこれに集約していきたい。
【地域を牽引する地域プロデューサーの育成】
地域の活性化に向けて、これまでも多くの対策が実施されてきた。しかし、それらがすべて実を結んでいるかといえば、残念ながら特定の地域であったり、一定量、一過性においてであり、より精査され、細分化された対策を考えていく必要性を感じている。地域の疲弊は地理的条件や人口減少、大手民間企業の撤退や海外製品の流入による産業競争力の低下など、その度合いや性質が異なり、打開策も様々にあるべきだと考える。しかし、行政が行う政策だけではそれが画一化されやすく、課題別解決といった視点からは非効率な状態と言わざるを得ない。これからの地域活性化において重要視すべきは、その土地においての課題と原因を分析し、地域ごとの特性を活かしながら、自ら解決に向けて行動する人財の育成ではないか。広い視野と深い見識、卓越した想像力と豊かな人間性を身に付け、常に社会への問題意識と確固たる使命感をもち、積極的、主体的に行動できる地域のプロデューサー、つまり地域の核となる人財の育成が必要である。本年も、特色あるそれぞれの地域特性を踏まえつつ、地域独自の育成手法によって、意気あふれる地域プロデューサーが全国各地に誕生し、活気に満ちあふれた地域へ導いてくれることを強く願っている。
【恒久的世界平和の実現に向けて】
世界に目を向けてみると、紛争や貧困、環境問題など多くの問題が山積しているのが事実である。私は、これらの問題を解決できるカギを握っているのは日本人ではないのかと考えている。東日本大震災が発災し、災害に遭いながらも日本人としての礼節を重んじ、他を慮る心を示した人々を、誇らしく思ったのは私だけではなかっただろう。また、その姿に対して世界各国から賛辞の声が贈られたことは記憶に新しいところだ。あの時「世界が注目していた」のは、日本人の美しい精神性であった。日本が今日のすさまじいグローバリゼーションの荒波の中で、これまで通り生き残っていくためには、今、改めて日本の自画像を日本人一人ひとりが再認識し、日本らしさを追求すべきではないか。JCIにおける国家青年会議所としての立ち位置をしっかりと自覚し、リーディングNOMとしての責任を果たすべくメンバー一人ひとりが、「和を以て貴しとなす」の精神でJCIとの連携の中で民間外交を行っていくと共に、「世界に誇る日本文化」を国際交流の中で発信していただきたいと考えている。
また、世界にある8つの課題解決を目的として、各国が取り組んできた国連ミレニアム開発目標(UN MDGS)は、2015年に目標達成の期限を迎える。JCIと国連とのパートナーシップにおいて、特に注力しているマラリア撲滅に向けた運動であるJCI NOTHING BUT NETSキャンペーンを本年も力強く推進しなければならない。これまで以上に多くの方々へ普及させる仕組みを考え、確実に実行していくと共に、これからを担う子どもたちに国際社会が抱える多くの課題に対して取り組む姿勢を養い、グローバルな視点で行動できる担い手を育んでいきたい。
【近隣諸国との未来志向な関係】
今や世界中が相互に関連し依存し合っていることから、世界の平和と繁栄なしにわが国の平和と繁栄はありえない。これまで日本青年会議所も民間外交の一翼を担ってきたが、その目的は様々な国の人々との友好、相互理解を推進することにより世界の平和と繁栄に貢献することに他ならない。今後も人と人との心通う交流を積み重ね、信頼関係を築くことで互いを理解し合う気持ちを育てていき、国際社会の中でポジティブに影響を与え続ける国でありたいと願う。長年に亘りこれまで継続してきた、個人レベル、地域レベルのより深く好意的な民間交流は、アジアの安寧に貢献しうるものであると確信している。アジア諸国との青年らしく爽やかな国際交流を本年も引き続き行っていきたい。
また、アジアの安寧に欠かせない中国との関係構築には、井戸を掘り、交流を継続されてきた先達に感謝しながら、引き続き未来志向な関係構築に向け協働していきたい。現在、中国との間には領土・領海問題や歴史認識問題などの課題を抱え、友好的な関係が構築されていないのが実情であり、2009年に策定された「日中中期ビジョン5ヵ年計画」に基づいて進められるべき友好的な交流が進んでいないのが現状である。カウンターパートである中華全国青年聯合会と、今後も未来志向な関係が築けるよう日中友好の会と連携を図っていくと共に、「日中中期ビジョン5ヵ年計画」に代わる新たなビジョンを描く1年にしていきたい。日本と中国の未来志向な関係構築がアジアの安寧につながると確信している。
そして、加速度的に外交が進むロシアにおいての関係も注力していきたい。3年前、私はロシアを訪れた時、衝撃を受けた。アメリカとの冷戦時代やあまり交流が無かったロシアの印象は、私にとってすべてが「冷たい」というイメージだった。しかし、ロシアの学生との交流や、ロシアを訪れてみるとそのイメージとは全く違っていた。緑があふれ自然豊かで、建物や街の景観もとても美しく色鮮やかで、一人で街角に立っていると「何か困っているのかい。」と親切に声をかけてくれる人ばかりで、とても「温かい」印象を受けたのを記憶している。国と国との政府間交渉では、国策として北方領土返還に向け少しずつ動き出そうとしている。そんな中で、私たちが長年に亘り民間外交を担ってきた役割を今一度、大きく昇華させる絶好の機会ではないかと考える。北方領土返還に向けた運動の一環として未来志向な関係を構築すべく、これまで進めてきた日本とロシアの学生による交流を引き続き進めていくと共に、北方領土返還後のビジョンを描いていきたい。とても温かみを感じるロシアの国民とどのような関係を構築していくべきか、共生していくべきかを民間レベルで考えていかなければならない役割を担っているのは、私たち責任世代の青年である。
【日本のファンを世界中に】
2013年のJCI ASPAC光州大会のハンドオーバーにて、ASPAC大会旗が日本に渡された時、胸が高鳴る想いだった。そう、2014年は、JCI ASPACが山形の地で開催される。アジア各国のメンバーを迎え入れるにあたり、開催地である山形青年会議所を最大限支援していかなければならない。ホスト側である日本のメンバーには、この機会をチャンスとして捉え、参加するすべてのメンバーがより多くのものを享受できるよう、大会や企画、設営などに主体的に関わっていただきたい。
また、これまで世界各国のNOMのリーダーを育ててきた国際アカデミーにも多くの日本のメンバーに新たな刺激や価値観を創出する機会として参加いただくと共に、世界各国のリーダーたちと強固なネットワークづくりに努めていただきたいと強く願っている。そして、この二つの機会で日本のファンをアジア各国はもとより、世界各国に増やすことができたら、どんなに素晴らしいことだろう。参加するすべての海外メンバーにはもちろんのこと、その参加したメンバーが自国に戻ってから、それぞれの国民に日本の素晴らしさを伝えてもらえるよう大会、事業を構築していきたい。さらに、より多くのメンバーに参画いただき、アジアへ、そして、世界へポジティブに影響を与えていきたい。青年らしい爽やかな交流を各国のメンバーと共に行い、2015年に開催されるであろうJCI世界会議金沢大会への物語を描いていきたい。
また、2020年に開催が決定した東京オリンピック・パラリンピックにより、私たちには日本の輝かしい未来に向けての希望が生まれた。6年後の希望に向け、すべての国民が一つになって歩み続けていただきたいと願っている。戦後日本が高度経済成長を成し遂げる中で一つの希望としてきたように、新しい「震災後」時代を乗り越え、「たくましい国」日本を創造していく上で一つの希望にすると共に、世界に向け日本の「たくましさ」を発信していきたい。
【強固なネットワークを活かしてLOMと共鳴する運動】
現在、メンバー数の減少、さらなる会員の成長が喫緊の課題となっている。まさに組織力が低下してきたと言えるのではないだろうか。この現象が経済情勢の悪化だけでは割り切れないことは、多くのメンバーが知っているはずである。青年会議所という組織自体の魅力を実感できないメンバーの増加や、地域の人々のニーズの多様化に起因しているのだと考える。まさに青年会議所の存在意義が問われていると理解できる。青年会議所は、40歳までという限りある時間を共有し、夢を語って互いに切磋琢磨し、刺激し合いながら、人間としての魅力を高めていく団体である。つまり、私たちは人々の意識を変えていくJCという運動体を通して日々学び、考え、行動しているのだ。
日本JC本会・各協議会への出向を通して、自己の成長と地域や国や世界の発展のために、多くのメンバーが多種多様な価値観で物事を多面的な視点で捉えることのできる人財へと成長する機会につなげていただきたい。大きなフィールドであなたの力を存分に発揮していただきたいと強く願っている。意気あふれる人財を育成するために、日本JC本会・各協議会は、出向するメンバー一人ひとりが必ず成長する機会となるよう組織を運営していきたい。役職を担うものは、次なる人財を育てることを忘れず、全国各地の次代を担うリーダーを発掘し、育てて欲しい。
そして何より、すべての活動、運営は各地会員会議所やメンバーのためにあることを忘れないで欲しい。青年の運動は、間違いなく各地会員会議所が原動力であり、日本JCは、全国の地域が抱える課題に対して、協働して取り組むべき課題を抽出して応援していきたい。また、これまで日本JCは、本会と各協議会が一体となって各地会員会議所の応援団としての役割を果たしてきたが、これまでの組織運営や事業の構築を見直すべく、日本JC本会・各協議会が担うべき役割を今一度検証し、活気に満ちあふれた地域の実現に向けて運動する各地会員会議所を力強く応援し続ける組織へと進化させていきたい。
さらに、全国696会員会議所の強固なネットワークを活かした運動をこれまで以上に力強く推し進めたい。35,000人に及ぶ青年経済人の声を背景に、組織力を活かし、社会にインパクトを与える本気の市民意識変革運動を展開していくために、LOMと共鳴する一年にしたいと心から願う。
【結びに】
「人は城、人は石垣、人は堀。」
すべてのものごとの始まりは私たち人からなのだ。私たち自身の成長こそが、社会を変革する原動力となり、次世代に誇れるものを残していけるのだと考える。しかし、一人ひとりの成長が様々な方向に拡散し、組織の進化につながらないということが起きてはならない。組織全体が進化するためには、一人ひとりが一つの方向に向かって成長していくことが必要になる。まずは、メンバー一人ひとりが同じベクトルに向かって学び、経験の中から成長するという姿勢ですべてに向き合うことが重要なのだ。学ぶ姿勢が、国や地域、さらには次世代のために何かを考え、最高の価値を創り出すことにつながると信じている。意気あふれる人財への成長と、強い組織への進化を起こしていこうではないか。
「すべての出会いは偶然ではなく必然的なものであり、必ず意味がある。
だから、この一瞬を大切にしたい。二度とないこの一瞬を大切にしたいと願う。」
この言葉を胸に、多くの出会いの中で、私はどれだけ成長できたことだろう。
青年会議所という学び舎において、一つひとつ積み重ねるそのすべては、自分を成長へと導いてくれていることを確信している。
共に学び、考え、決意し、行動しよう。
美しき日本の輝かしい未来に向けて、羽ばたこうではないか。
意気あふれ、活気に満ちあふれた「たくましい国」日本を次世代に引き継ぐために。