夜の子育てを、ひとりにしない。
子育て世代の「孤育て」を社会で支える。
ヨナキリウムは、夜間の子育てにおける孤立を社会課題として捉え、毎週水曜22時〜翌6時に開く母子限定の夜間カフェスペースです。昼間中心に整備されてきた従来の子育て支援では届きにくい「深夜帯の不安」に着目し、2025年7月に新潟市西蒲区でオープンしました。
深夜帯に定期運営される母子対象の居場所としては、全国的にも非常に珍しい取り組みです。
夜泣きや授乳に追われる夜の時間帯は外部との接点が途切れやすく、精神的負担が大きくなりやすい状況にあります。
ヨナキリウムでは、安心して立ち寄れる場と人とつながることのできる環境を提供することで、夜間の孤立の軽減を図っています。オープンから約8か月で延べ86名(母子合わせて)が利用し、リピート率37.5%、利用者満足度100%を記録しています。
継続的な利用が生まれていることから、単発利用にとどまらず、安心して戻ってこられる関係性が形成される場として機能しています。
また、本事業は新潟市まちづくりパートナーシップ事業(補助金採択事業)として運営しており、行政と連携した取り組みとして実装が進められています。補助期間は3年間を予定しており、その後は自走可能な事業として継続していくことを前提に設計しています。施設内では母親同士の自然な交流やスタッフによる傾聴を行い、必要に応じて行政や専門機関への接続も実施しています。また、外出が難しい家庭に向けたオンライン配信も行い、時間や場所にとらわれない支援体制の構築にも取り組んでいます。
現在は行政関係者や専門職(西蒲区地域総務課、健康福祉課、新潟県こども家庭課、児童相談所職員、社会福祉協議会など)との連携も進み、地域における夜間子育て支援の新たなモデルとして実装を進めています。
滝沢 日向子(たきざわ ひなこ)/29歳
新潟県長岡市出身。結婚を機に新潟市西蒲区へ移住。
新卒で和歌山県の水族館に就職し、イルカのトレーナーとして勤務。
命と向き合う現場で、観察力・忍耐力・チームワークの大切さを学びました。
その後新潟へ戻り、専門学校講師として次世代育成に携わるほか、複数の仕事に挑戦しながら地域活動にも取り組んでいます。2024年には、地域の廃校となった小学校の再活用を目指し、任意団体「WHALE TAIL」を立ち上げました。
地域資源を活かし、人が集まり、地域の未来に繋がる場をつくることを目的に活動を行っています。
ヨナキリウムは、廃校活用事業の活動の一環として、西蒲区巻で日中に営業しているコワーキングカフェ「マキエキマエ」を訪れたことがきっかけで生まれました。
夜間の施設活用の可能性を模索する中で、「夜の子育てをひとりにしない」という想いに共感したマキエキマエのオーナー齋藤氏と出会い、構想段階から協働し現在の形へと立ち上げました。
前例のない取り組みであったため、地域や行政からの理解を得るまでに時間を要しましたが、対話を重ねながら形にしてきました。
現在では、行政や専門職とも連携しながら継続的に運営できる体制を構築しています。
私の強みは、「想いを形にする実行力・推進力」と、「関わるすべての人にとって無理のない形を考え、持続可能な仕組みとして組み立てる力があること」です。
一方的に誰かが負担するのではなく、三方良しの関係性が生まれる構造を意識しながら、場づくりを行っています。
プライベートでは7歳と4歳の子どもを育てる二児の母でもあります。
自身の育児経験の中で感じた夜間の孤独感が、ヨナキリウムの原点です。
水族館で培った命への敬意、教育現場での育成経験、地域活動での実践力を掛け合わせ、子どもと大人が安心して未来を描ける地域づくりに挑戦しています。
ヨナキリウムを通じて、夜の孤立をなくし、子育てを社会全体で支える文化を地域に根付かせていきます。
私が目指しているのは、「夜の子育てを、ひとりにしない社会」の実現です。
子育て支援はこれまで主に昼間に設計されてきましたが、実際に多くの不安や孤独が生まれるのは夜間です。
夜泣きや授乳に追われ、外部との接点が途切れるこの時間帯に、安心して頼れる場所や人が存在することは、母親の精神的安定だけでなく、子どもの健やかな成長にもつながる重要な要素です。
この取り組みの原点は、私が第一子の育児中に出会ったウェブ漫画「よなきごや」にあります。
初めての育児で夜泣きに悩み、心身ともに余裕を失っていた中で、「夜中でも安心して行ける場所がある」という世界観に感銘を受け、現実にも必要な仕組みだと強く感じました。
しかし当時、そのような場所は存在しておらず、「ないなら自分でつくる」と決意し、ヨナキリウムを立ち上げました。ヨナキリウムの取り組みを通じて、子育ては家庭内で完結するものではなく、地域や社会全体で支えるものへと認識を変えていきたいと考えています。
今後は、夜間の子育て支援を一部の取り組みにとどめず、運営条件や連携体制を体系化し、他地域でも導入可能な「夜間子育て支援モデル」として展開していきます。
すでに他地域からの関心や相談、実装に向けた動きも生まれており、地域ごとに展開可能な仕組みとして発展させていきます。その先にあるのが、子育てを「家庭内の責任」ではなく、「社会全体の営み」として支え合う社会です。
将来的には、夜間の子育て支援が特別なものではなく、全国どこでも当たり前に利用できるインフラとして整備される未来を目指しています。
ヨナキリウムでは、描く未来の実現に向けて、「場の運営」「支援ネットワークの構築」「モデル化」を軸に具体的な取り組みを継続的に実践しています。
まず、毎週水曜日22:00〜翌6:00の夜間帯に、母子限定の安心できる居場所を提供しています。
照明・音響・空間設計を、まるで海中や夜の水族館にいるような環境に整え、母親が心身ともに緊張を緩められるよう設計しています。単なるカフェ営業ではなく、「安心して滞在できる夜の居場所」として機能することを重視しています。
2025年6月には内覧会(プレオープン)を開催し、約35名が来場しました。子育て世帯をはじめ、新潟市西蒲区関係者、保健師・助産師などの専門職、子育て支援者、地域住民など、多様な立場の参加があり、夜間の子育て支援の必要性を共有する機会となりました。
同年7月の本格オープン以降、開業から8か月で延べ利用者数は86名(母子合わせて)、平均月間利用者数は約10名で推移しています。リピート率は37.5%と高く、継続的な利用につながっており、利用満足度アンケートでは「満足」回答率100%を記録しています。
開業から一年未満ながらも毎週利用が継続しており、夜間育児における「新たな選択肢」として地域に定着しつつあります。
また、母親同士が自然につながることのできる環境づくりを重視し、無理に交流を促さず、同じ時間に同じ悩みを抱える人が同じ空間にいること自体が安心感につながる設計としています。心理的安全性を最優先に運営することで、継続利用につながる関係性を育んでいます。
さらに、行政や保健師、子育て支援団体と連携し、必要に応じて専門機関へとつなぐハブ機能も担っています。地域の支援資源と利用者を結びつけることで、単なる居場所提供にとどまらない支援体制を構築しています。加えて、SNSを活用した情報発信やオンラインヨナキリウム、ライブ配信を通じて、外出が困難な家庭にも支援を届ける取り組みを行っています。
これらの活動により、実施約1年間で他地域からの相談が多数(推計30~40件)寄せられるなど関心が広がっており、視察受入は内覧会も含めるとこれまでに15回、テレビは地方ニュースから全国ネット、新聞も地方紙・全国紙、ほかWebメディア等、新潟県外からもご注目いただき、取材も累計10件以上にのぼっています。さらに、
・子育てアプリ「トモニテ」子育て大賞2025 団体部門 特別賞
・「イクハク」2025年度ベスト育児制度賞(孤立・困難抑止部門)
を受賞するなど、外部からの評価も得ています。
今後はこれらの取り組みを体系化し、運営条件・空間設計・連携体制を含めた実践ノウハウとして言語化することで、他地域でも導入可能な「夜間子育て支援モデル」として展開していきます。
ヨナキリウムは、夜間に孤立しやすい母親と乳児に対し、心理的安心と社会的つながりを提供することで、これまで見過ごされてきた「夜の孤立」の緩和に寄与しています。
オープンから約8か月で延べ86名が利用し、リピート率は37.5%を記録しています。利用者からは「夜にひとりではないと感じられるだけで安心できる」「気持ちが軽くなった」といった声が寄せられており、深夜帯における精神的負担の軽減という具体的な変化が生まれています。これは単なる満足度にとどまらず、母親の心理的安定と育児への前向きな姿勢の回復につながる重要な効果です。
夜間の強い孤立や慢性的な疲労は、産後うつのリスク要因の一つとされています。ヨナキリウムは、安心して立ち寄れる居場所を提供することで、こうしたリスクを未然に軽減する「予防型支援」として機能しています。
また、育児ストレスを一人で抱え込まず、悩みを共有できる環境をつくることは、家庭内の安定にもつながります。実際にこの場を通じて母親同士のつながりが生まれ、「困ったときはお互い様」という関係性が育まれています。これは行政サービスだけでは補いきれない領域を補完し、地域における共助の再生にも寄与しています。
さらに、行政や専門機関と連携することで、支援が必要な家庭を早期に把握し、適切な支援へとつなぐハブとしての役割も担っています。これにより、従来の支援体制では接点を持ちにくかった層へのアプローチが可能となっています。ヨナキリウムの取り組みは、夜間に特化した子育て支援の実践モデルとして、他地域への展開が可能な再現性を持っています。夜間に安心して頼れる居場所が各地域に存在することで、子育ての孤立は構造的に軽減されていきます。その結果、「子育ては家庭内の責任ではなく、社会全体で支えるもの」という価値観が、理念ではなく実装された仕組みとして社会に定着していきます。また、この取り組みは、子育て期の孤立感を軽減し、地域で子どもを育てることへの安心感を高めることで、少子化対策の基盤としての可能性も持っています。
ヨナキリウムは、一人の母親を支える場にとどまらず、夜間の子育て支援という未開拓の領域を社会に実装するモデルとして、すでに機能し始めており、夜間の子育て支援という新たな社会領域を切り拓いています。