過去の受賞者のその後
特定非営利活動法人ファイアーレッズメディカルスポーツクラブ 鶴谷隆さん

2021年に開催された第5回価値デザインコンテストで、異能ベーション賞を受賞された、特定非営利活動法人ファイアーレッズメディカルスポーツクラブ 鶴谷隆さんにお話を伺いました!

 

(※開催当時の所属:一般社団法人ベンチャー型事業承継)

事業のご紹介をお願いします。

「スポーツを通じて、青少年の健全な精神と身体を育み、社会に貢献する人材を育成する」というビジョンのもと、小学生、中学生向けに、スポーツと勉学と医療の面から子供たちの育成をサポートする事業を行っています。
現在は地域の子供たちが平日200名くらい所属しています。(※2023年3月時点)

大きな取り組みとしては2つあって、一つはスポーツを体系的に教えるスクール事業です。
「ファイアーレッズメソッド」を構築していて、「どうやったらうまくなるか」を理論的に教えています。
もう一つは、指導者の育成と活躍の場を作ること。現在指導者が20名所属していますが、スクールが広がれば、スポーツ選手のセカンドキャリアの場となります。今は野球と女子バスケットボールが中心ですが、今後スポーツの種類も、スポーツクラブも増やしていく予定です。
僕自身が大学野球までやっていた経験もあって、スポーツ選手の可能性を、セカンドキャリアも含めてサポートしていきたいなと思ったのが事業を始めたきっかけです。

「公立学校の部活動がなくなる」と聞きましたが…

教員の過剰労働問題や、少子化による生徒数減少にともなって、部活動の地域移行、外部委託が始まっていきます。
そういうところに入っていきたいという思いもありますが、部活動の外部委託を狙っている会社と連携しながらやっていけたらと思います。
外部委託を地域のボランティアに頼る場合もあると思いますが、ボランティアって、いい面もあれば良くない面もあるんですよね。いちばん大きな弊害は、ボランティアであるということが甘えになってしまう場合があること。有識者が有償でやるという今の流れの中で、ファイアーレッズ独自のメソッドを持って、子供たちを指導していきたいです。

ファイアーレッズ独自のメソッドの特徴を教えてください。

メディカルの部分がすごく重要だと思っています。
僕は学生時代、けがをして思うように投げられなくなった経験があるんです。
だからこそ、小さいうちから、正しい技術と正しい知識で、長くスポーツができるような身体を作っていきたい。
それから、学習面もしっかりサポートするのも我々の特徴です。
スポーツだけしかしていないと、スポーツがダメになったときの広がりがなくなってしまいます。学習もしっかりしておくことで選択肢が拡大するんです。
eトレ・スタディサプリなどを活用して、各自勉強させるんですが、その進捗管理やモチベーションを保つことをファイアーレッズがやっていく。
学習塾に何万円もかけて通うよりもかなり低価格で学習できます。

「野球だけやってたらいいやん」っていうお子さんは、勉強もあると聞くと嫌がりませんか?

「近い将来、高校や大学で本当に野球に集中したいなら勉強する必要がある」と伝えています。
高校で勉強ができないと補修で練習に参加できなかったり、試合に出場できなかったりするんですよね。
それに高卒でプロに行ける人なんてほんの一握り。大学に行って野球を続けるとするなら、やはりある程度の学力がないと厳しい。
だから、「長く野球するために、勉強しといた方がいいよ」って話します。
それに、勉強することは、学校の勉強のためだけではありません。必ずスポーツにも活きてくるんです。
そんな風にきちんと説明すると、大抵の子供たちは納得しますね。

起業まではどんなことをしていたんですか

大学で野球を続けたのは、プロ野球を目指したいという思いだったんですが、3年生くらいで、自分はプロに行けない、ということを悟って就職したんです。
選んだ会社は野村証券。厳しい会社だと聞いて、そういう環境に身を置いて自分を成長させたいと思って入社しました。3年半くらい営業。それから2年くらいは資金調達の部署。そのあと、野村證券として若手の跡継ぎの人の支援が必要ではないかということで、ベンチャー型事業承継に出向したんです。
野球を離れて必死に頑張っているうちに、僕はプロ野球選手にはなれなかったけど、スポーツを通じて社会貢献をしたいなという思いが出てきたんですね。
そんなとき、価値デザインコンテストのことを教えてもらって。
まだアイデア段階だったんですが、じゃあ一度形にしてみよう、と思ってエントリーしたんです。そこからすべてが動き出した感じですね。昨年野村證券も退職して、いよいよ、というところです。

今後の展開

まずは、埼玉県内で3店舗展開 ということを目標に動いています。
店舗のモデルを作れたら、全国に広げていきたいですね。
そのためには場所と人が必要になります。指導者志望の人達にどんどん来てもらってはいるけど、やっぱり広がりに限界はあるので、今後は全国のスポーツ指導者の方たちとどんどんつながって、学習や医療の体制をこちらから提供していきたいと考えています。

これから卒業していく子たちが、高校、そしてその先で活躍してくれて、そのあとまた指導者として戻ってきてくれたらなと思っています。

やっぱり、全員が全員プロになれるわけではない。
野球を「あきらめる」とき、その後の人生をポジティブに捉えられるような、そんな人づくり、環境づくりをしていきたいです。

(取材:社会課題解決推進委員会 副委員長 川上智之、委員 関谷昌子)