公益社団法人 日本青年会議所
東北地区 秋田ブロック協議会
2026年度 会長意見書
秋田ブロック協議会 会長 山﨑 正和
【はじめに】
2013年、私はまちを盛り上げ、雇用を生み出すと息巻いて地元へ戻りました。実際は、がむしゃらに働き、夜中まで成果を追い求める日々で、1日会社を空けることさえ大きな決断でした。そんな中、青年会議所に入会して間もなく豪雨災害がありました。先輩の行くぞ、の電話で仲間たちはすぐに集まり、泥をかき出し、被害に合われた方のために汗を流しました。先輩方の背中に、人のために動くことのかっこよさを見ました。綿密に計画を立てる人、笑顔で現場を盛り上げる人、静かに支える人、さまざまなリーダーシップに触れ、こうなりたいと心から思いました。仕事と青年会議所では100:0で現場仕事に時間をとられていた自分も、いつか経営や青年会議所活動に時間を使えるようにと、少しずつ現場を整え、役職を全うする準備をしてきました。秋田ブロック、東北地区、日本、そしてJCIアカデミーへの出向を通じて、地域や家族、自分自身を広い視点から見ることで、自分の生活をよくするということは、自分の地域社会がよくならなければ達成されない。すべては自分の考え方次第だと気付いたのです。家庭にも変化があり、利他を大切にすることで得られる自身の豊かさ、それこそが、私が学んだ生き方です。リーダーシップの育成と個人の開発を掲げている組織でありますが、人の成長とは価値観の肯定的変化であり、よくなりたい、よくしていきたいと願う素直な心、そういった真の心こそが、家庭を、まちを、日本を優しく強くしていくのだと確信しています。
【ブランドマネジメントの強化と地域価値の創造】
秋田の地域課題が複雑化し、多様なステークホルダーとの協働が求められる今、青年会議所自身がブランドとしての一貫したメッセージと信頼性を持つことは極めて重要です。これは単なる広報活動ではなく、組織が社会に示す姿勢そのものです。秋田ブロック協議会は2026年基本理念真の心が生み出す幸せな秋田へ基軸に、地域に対して一貫した価値を届けるブランドマネジメントを推進します。私たちの取り組みの一つひとつが、県民から見て信頼できる組織、地域の未来を託せる青年として認識されるためには、事業の質だけでなく、情報発信・姿勢・行動・パートナーとの連携を統合的にデザインする必要があります。そのために、各LOMと協力して統一したメッセージやビジュアルの活用を推進し、県内8LOMの運動が相乗効果を生むための広報戦略を構築します。さらに、家庭防災・カーボンニュートラル・人財育成など、ブロックとして重点的に進める事業を、秋田の未来を変えるブランドストーリーとして位置づけ、住民や行政、企業、メディアと共有していきます。ブランドとはロゴや言葉ではなく、私たちの行動と一貫性によって形成されるものです。真の心をもって取り組むその姿勢こそが、地域の信頼となり、未来への共感を育てる力となります。
【家庭から始まる防災文化の確立】
近年、日本各地で地震・豪雨などの災害が増加し、私たちの生活はこれまで以上に災害と隣り合わせになっています。とりわけ、能登半島地震での教訓は、行政や専門機関による支援には限界があり、最初の砦となるのは家庭であるという現実を突きつけました。秋田でも豪雨被害が発生し、多くの家庭が生活再建の困難に直面しました。この経験から、私たちは家庭単位で備え、即応できる力を身に付ける重要性を痛感しました。
青年会議所が提唱する FCP(Family Continuity Plan:家族継続計画)は、まさに家庭での防災力向上の基盤となるもので、秋田にこそ必要な取り組みです。秋田ブロック協議会として、県内12LOMが一体となり家庭内防災力のモデルを構築することで、地域の防災文化を根本から変えていく取り組みを推進します。単なる備蓄や訓練の促進にとどまらず、自治体・学校・企業とも連携し、家庭から地域へ、防災意識が連鎖する仕組み」の確立を目指します。これにより、災害時の被害軽減と迅速な復旧につながる強靭な秋田を実現します。
【日常から始めるカーボンニュートラル推進】
気候変動は世界規模の課題であり、日本の地方都市にも例外なく影響を及ぼしています。豪雨・高温・積雪の変化など、秋田の生活基盤を揺るがす環境変化はすでに進行しています。その一方で、日本の温室効果ガス排出量の約15%を占めるのは家庭部門です。つまり、家庭の行動変容なくしてカーボンニュートラルの達成は不可能だと言えます。そこで秋田ブロック協議会では、家庭を地域最小の環境ユニットと捉え、日常の中で無理なく続けられる行動を普及させる取り組みを進めます。省エネ家電の活用、節電・節水、リサイクル、子どもたちの環境教育など、誰もが実践できるアクションを、LOMと行政・企業・学校との連携を通じて広く発信していきます。また、県の再生可能エネルギー資源や森里海の豊かな自然を活かし、秋田らしい環境教育モデルを構築し、全国に誇れる取り組みへと昇華させます。環境活動は我慢ではなく、楽しさや家族の学びにつながるものであると感じてもらえる仕掛けづくりを進め、未来世代が希望を持てる持続可能な秋田を次の時代に引き継ぎます。
【人財育成とリーダー養成】
人口減少と会員減少が進む中、経験が十分に積めないまま役職を担うメンバーが増えています。これはLOMの運営だけでなく、組織文化や事業品質にも影響を及ぼす課題です。だからこそブロック協議会には、若手メンバーが短期間で成長し、自信を持って役割を果たせる環境づくりが求められています。2026年度は、ブロックアカデミーを「実践型リーダー育成機関」と位置づけ、体系的な育成カリキュラムを再構築します。JC理念の理解や地域課題研究に加え、課題発見力・企画構築力・チームビルディング・プレゼンテーションスキルなど、社会でも通用する力を身に付けられるプログラムを展開します。また、先輩世代と若手をつなぐメンタリング制度を導入し、成長を実感できる機会を提供します。若手の成長はLOMを強くし、ひいては地域の未来を創る力になります。秋田の若者が自分も地域を良くできると自信を持てる土壌を整えてまいります。
【LOM間連携と地域発信の強化】
秋田ブロック協議会の最大の強みは、各LOMの距離が近く、相互支援の文化が根付いていることです。この強みをさらに進化させ、県全体の運動力へと高めます。合同懇談会では、単なる情報交換にとどまらず、地域課題の共有や共同事業の創出を促す場へと発展させます。秋田ブロック大会では理念を力強く発信し、県内の青年会議所が一体となる象徴的な場をつくり上げます。また褒賞事業では、各LOMの優れた事例を県全体の財産として共有し、メンバーのモチベーション向上と質の高い事業の循環を生み出します。これらの取り組みを通じて、LOM同士が刺激し合い、協力し合うことで、秋田全体により大きな社会的インパクトを創出します。
【持続可能な協議会運営とLOM支援】
会員減少に伴って、各LOMの負担は年々大きくなっています。ブロック協議会は、負担を増やす組織ではなく、支える組織でなければなりません。2026年度は、委員会数の最適化と事業スリム化を実施し、人的負担と財政負担の両面を軽減します。そのうえで、理事長ミーティングではLOMが抱える課題を丁寧に吸い上げ、必要な支援を迅速に提供できる体制を整えます。また、情報共有の効率化や運営ルールの明確化により、誰もが参加しやすい協議会運営を実現します。 協議会はLOMに寄り添い、未来をともに描くパートナーであり続ける。その姿勢を徹底してまいります。
【結びに】
1970年に発足した秋田ブロック協議会は、県内各地青年会議所と日本青年会議所、地区協議会をつなぐ連絡調整機関としての役割を担い、半世紀以上にわたり地域に根差した運動を展開してきました。社会情勢が急速に変化し、人口減少・少子高齢化が進む秋田においても、私たちは真の心を基盤とした運動を通じて、人々の幸福感を高め、次世代につなぐ責務を果たしていかなければなりません。2026年度、秋田ブロック協議会は、真の心が生み出す幸せな秋田へ基本理念とし、地域に希望と誇りを育む活動を推進してまいります。社会が不透明さを増す中で、人々が未来に希望を描くことは容易ではありません。しかし、私たちが真の心をもって互いを思いやり、挑戦を続ける限り、幸せな秋田を創造することは可能です。秋田ブロック協議会は、次世代に誇れる地域の姿を残すために、仲間と共に歩みを進めてまいります。真の心が生み出す幸せな秋田へ。今こそ、勇気と誇りを胸に、共に未来への一歩を踏み出しましょう。