公益社団法人日本青年会議所
関東地区 千葉ブロック協議会
2026年度会長 望月 大輝
初めに
2025年は昭和換算で100年目を迎え、我々の住まう千葉県では、様々な変化が起こりました。戦前から第一次産業を主な産業とし、高度経済成長期を迎え東京湾の埋め立てが進み、京葉工業地帯が形成されたことにより、鉄鋼、石油化学、電力などの重化学工業が集積し、一次産業に加え全国有数の工業県へと変貌を遂げました。人口の推移では、昭和初期約140万人から令和7年には約627万人まで増加しました。大きな成長を遂げ、近年においては、デジタル化をはじめとした効率的な結果を得られる時代となりました。
華やかな成長を遂げてきた一方で、産業構造の変化や人口増加の背景には、見過ごせない課題が存在しています。多くの一次産業は重要な役割を担っていますが、経営体の減少や従事者の高齢化といった問題に直面しています。人口面では少子高齢化が進行し、自然減の影響から2060年には千葉県の人口が約515万人にまで減少すると予測されています。さらに、人口増加が見られる自治体がある一方で、9市13町が消滅可能性自治体に指定され、危機感は強まっています。これは、地域コミュニティの崩壊や人とのつながりの希薄化を招き、激甚化、頻発する自然災害への対応力を低下させる要因にもなっています。こうした課題を真正面から受け止め、持続可能な地域社会の再構築をいかに果たすかが、これからの鍵となります。
今問うべきは、果たしてあの時代に思い描いた未来は実現されたのであろうか、ということです。我々は、かつて夢見た物質的な豊かさを手に入れました。生活は便利になり、技術や情報も高度に発達しています。しかしその一方で、心の豊かさや社会の持続可能性といった目には見えない価値は静かに失われてきたのではないでしょうか。今の社会は、かつて思い描いた理想の到達点ではなく、むしろ今こそがより確かな未来を描き直すべき時なのです。
我々JCは、意識変革団体である以上、まず自らが地域課題に向き合い、若き能動的市民として主体的に変化をおこす責務があります。県内24LOMは、それぞれの地域で課題を明確化し、まずはメンバー自身の意識変革が求められます。我々は今、不確実性の時代に生きています。だからこそ希望が持てる未来を構想する力が必要です。また、利便性が高い時代に生きているからこそ、自らを磨き、研鑽し続ける中で社会に潜む課題に気付き、それを問い直す勇気が必要です。過去と現在の整合性を回復することが、明るい豊かな社会の実現への第一歩なのです。そしてそれは、我々JAYCEEはもとより市民一人ひとりが、今を生きる主人公として意識を変革し、希望を使命に昇華することによって千葉県を次の世代が選びたくなるような地域にすること。それが我々の使命であります。
【人財育成としてのアカデミー】
近年、千葉ブロック協議会は、会員数の純増を果たしていますが、2025年度のヒアリングより、JC運動の本質や理念に対する理解がメンバーに十分に行き渡っていないという課題が浮き彫りになりました。会員拡大と並行して千葉ブロック協議会では、人財育成を目的としたアカデミー事業を力強く実施していく必要があります。
何故我々はJCに属しているのか、このまちにJCが存在する意味は何か、この問いに誰もが自らの言葉で答えを持つことが我々JAYCEEのアイデンティティーであります。
まずは、千葉ブロック協議会が、県内24LOMの新入会員やさらに理解を深めたいメンバーを対象に、定期的にJCI Achieveを開催し、JCの理念、目的、存在意義を見出すことで、LOMの運動に参画しやすい基盤を構築します。メンバーがLOMを超えた横の繋がりを実感することで、志を同じうする仲間創りの機会とします。
さらに、各LOMの主要な役職を将来担うべく人財の育成を目的としたアカデミー事業を開催します。それは、同じ目標を持った仲間同士が研鑽し、共走する環境を提供することにより、自らが意識変革をしてJAYCEEとしての高みを目指すリーダーの育成に寄与します。
2026年度は、協議会のスケールメリットをいかしたアカデミー事業を実施し、若き能動的市民として理念共感から行動変容へ繋げる場として、県内24LOMに機会を提供します。知識の伝達だけではなく、対話と挑戦、実践と内省を通じて、多くの意識変革を起こすアカデミーこそが、恒久的なLOMの発展に繋げる最重要施策であります。
【希望を使命に変革する会員拡大】
まちの未来を創造するのも、人財を育成するのも、それは人であります。JCにおける会員拡大とは、使命を持つ人=仲間を迎え入れる行為です。
現在、県内24LOMはそれぞれの活動地域において固有の資源と課題を抱えております。まず我々が行うべきは、地域の未来を構想することであると考えます。我々はそれぞれの地域の未来像を描ききれているでしょうか。このまちにどうあって欲しいのか、我々は何を引継ぎ、何を変え、何を創り出していかなければならないのか、この問いへ真正面に向き合うことこそがJCの本質であり、それは拡大への出発点ではないでしょうか。
まずは、我々が恒久的な会員拡大を理想とするのであれば、誰を入会させるのかではなく、誰と未来を創るかが重要であると考えます。そのためには「理想の共有」として、地域の未来ビジョンとJCの存在意義を明確に語ること。次に「使命の共鳴」として、自分もその未来を共に創りたいと思える環境を創ること。最後に「共鳴から共走」として、理念に共感する新入会員に対し支援と実践の場を提供すること。この3点の循環を促すために、千葉ブロック協議会が、県内24LOMに対し、活動地域の5年構想の策定を支援し、志で繋がる仲間の連鎖を創る一助となる事業を開催します。この取り組みは、各LOMがまちの未来を担う人財を迎える土壌づくりにも繋がります。さらには、広域的な5年構想を策定することで、県全体の未来を描き、地域の有機的な繋がりから希望を使命に変革する機会を創出します。そして、LOM訪問を通じて会員拡大支援と、県内24LOMの拡大状況を常に共有できる環境整備をすることで持続的な会員拡大を図ります。
千葉ブロック協議会として各地域の未来構想を明確にし、3点の循環をキラーコンテンツとした会員拡大を推進します。
【連携と変革による共走の推進】
多様な地域課題に向き合うには、JC単一で運動が完結するものではなく、行政や民間企業、市民との連携が不可欠です。そして持続可能な発展には、技術革新に強い企業や大学、研究機関との連携を強化し、AIなどを活用した地域課題解決を図ることが重要です。JCには日本全国、さらには世界と繋がるネットワークが存在し、それを強みとした千葉ブロック協議会は、それらの連絡調整機関としての機能を果たし、現代の社会課題に毅然と向き合う必要があります。
まずは、県内24LOMの発展に向け、JCI、日本JC、関東地区協議会と連携し、連携推進会議を引き続き開催します。有益な情報を共有し、各事業や大会への参加を促進することで、最新のJC運動を学ぶ機会を創出します。また、2026年度には県内で十数件の選挙が実施される予定です。現在、県内の首長選挙の投票率をみると30%~50%で推移しており、都市部においては特に低下傾向です。千葉ブロック協議会は、一人でも多くの市民へ主権者意識向上を図るため、県内24LOMの公開討論会の開催を支援します。そして、県内24LOM、関係諸団体と連携を強化し、災害対策意識を高めることによってJCが災害時に迅速に対応できる組織になることを目的とした事業を開催します。
現代のJC活動には、地域の実情に即した柔軟な組織運営への見直しが求められています。人口構造や働き方、地域のあり方が大きく変化する中、LOMの運営もその変化に対応すべきです。千葉ブロック協議会は、相談窓口を設け、LOM間の連携を通じて課題や悩みを共有・解決し、持続可能で柔軟な組織運営を支援してまいります。
【未来を照らす共走の舞台 千葉ブロック大会】
ブロック大会は、JC運動の最大の発信の場として位置づけられます。2026年度のブロック大会では、参加した県内24LOMのメンバーに対しLOMを超えた繫がりと、ブロック協議会のスケールメリットから得られる学びを実感できる機会を提供します。また、開催地の地域課題解決への足掛かりになるものを発信することで、参加した市民誰もが地域を愛しみ、地域の未来に対して希望を使命に変革する機会を提供します。
令和6年度の千葉県総合計画の指標によると、将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合は、小学生で80.5%、中学生では66.2%と報告されています。中学生になると夢を持っている割合が減少する理由は、進学や将来の職業について具体的に考える機会が増え、現実的な制約や選択肢を意識するようになるからです。一方でこの意識とは、自らで将来の選択肢を狭める行為でもあります。地域の未来を創造するうえで、現在の子どもも主人公であり次代の当事者でもあります。ブロック大会では固定概念に捉われないキャリア教育の推進や、地域との連携を通じて、子どもたちが成功体験を積み上げることによって、将来の夢や目標を持ち続けられるような取り組みを行い、地域と子どもの未来を繋ぐ架け橋となる場とします。
参画したメンバーが、地域の希望を己の使命と意識変革し、県内24LOMの有機的な繋がりから千葉一心への着地点であり出発点となりえるものを共創します。
【持続可能な協議会運営の実現】
会議体であるJCの事業運動はメンバーの負託を請けた議決権保持者の意思決定により決まります。そのためにも諸会議は効率的かつ円滑に、そして厳粛に運営していく必要があります。千葉ブロック協議会の事業は、県内24LOMの貴重な付加金により成り立っているからこそ、会議運営にはコンプライアンスを遵守した健全かつ透明性の高い財務運営が求められます。
まずは、諸会議を円滑に運営するためにも、参加者が会議の意義目的を事前に理解する必要があります。年間の事業フレームを正確に管理し、スケジュールを遵守することで、そこからさらに効率化が生まれます。時にはオンラインを活用し、タイムコストを最適化することで質の高い運動を生み出すための議論の場を提供します。
また、千葉ブロック協議会が連絡調整機関としての役割を果たすためには、県内24LOMと、日本JC、関東地区協議会と連携を図り、迅速かつ正確な情報を発信し、LOMが質の高い状態を保つ一助となります。会員会議所会議は、千葉ブロック協議会の事業運動に対し、県内24LOMの意思決定を仰ぐ厳粛な場であると同時に、理事長が集う貴重な時間であります。互いの地域課題や進捗状況、未来を語らう機会を新たな形で提供することにより、共鳴が共走となり、より質の高い協議会を目指します。
むすびに
今、世界では、いくつもの紛争や恣意的な目論見により、先行きが見えない混沌とした情勢に陥っていることは事実です。我々が唱和するJCI Creedの理念が一人でも多くの人々に浸透し、共感を得られればどんなに豊かな社会を築き上げることができるであろうか。
私は、2011年にJCに入会をしました。その年は言わずと知れた東日本大震災の発災の年でもありました。LOMの同志は、いち早く情報を集めLOMをあげて幾度も復興支援に向かいました。JCについて理解が浅かった私は、津波による被害で、ビルの上に船が跨るほどの壊滅的なまちの中、復興を信じて懸命に行動する先輩の背中を目の当たりにしました。私は、その行動力に心を打たれたと同時に、何のためにここまで行動するのかと疑問を持ちました。しかしその疑問は先輩の一言で直ぐに解決できました。「俺たちを必要としている人が目の前にいるじゃないか」それ以来、この言葉を胸に、当時見た先輩の背中を追いかけ走り続けました。委員長として担当例会の成功に流した嬉し涙、副理事長として歯がゆさに流した悔し涙、理事長として感謝にあふれて流した感動の涙、そして出向を通じて初めて出会えた尊敬できる同志たち。私のJCストーリーは、何物にも代えがたい一生の誇りとなる財産を築かせてくれました。
JC運動とは、今を引き受け、未来を創る責任ある世代の行動であります。その運動とは地域のためであり、仲間のためであり、何より自分がどう生きるかを問うためにあります。県内24LOMがスクラムを組めば、JC運動によって決して悲観的ではなく、極めて現実的に希望に満ちた千葉を創造できます。まずは私自身、宿命に生まれ、今という運命に挑み、使命に燃ゆる行動から、県内24LOMの目的が達成できるように貢献します。
明るい豊かな地域社会の実現のために、共鳴から共走する使命感に満ちた千葉へと変革します。