結の精神と豊かさに溢れた誰もが夢を描ける東北の実現

会長意見書

公益社団法人日本青年会議所 東北地区協議会

会長意見書

石田 全史

(所属:一般社団法人浪江青年会議所)

 

 歴史を振り返り、いつの時代も変化の原動力となり、進化の起点となって、社会を変革してきたのは、“青年”である。そして、今まさに混沌とした時代を切り拓くことができる“青年”は、我々JAYCEE以外の他にいない。今こそ、東北の未来を切り拓くために、物事の本質を見極め、真実一路の精神を持ち、確かな一歩を踏み出そう。

 

【はじめに】

 1915年、一人の青年の核心から「自由な社会と経済発展」の実現を掲げ、新たな社会をリードするに相応しい人材の育成を目的として、アメリカ・ミズーリ州セントルイスにおいて、今日に至る青年会議所運動がはじまったのである。青年会議所の理念におけるコミュニティとは、社会問題に青年が関わり、それらに青年を巻き込んでいくというものである。すなわち青年の運動のはじまりであり、変わることのない理念である。

 1951年2月、我が国の主権が回復する以前に「新日本の再建は、我々青年の仕事である」と、志高く国際社会への復帰と戦後復興を成し遂げるために、日本青年会議所が設立され、同年5月に国際青年会議所(JCI)へ正式加盟を果たした。現在、その広がりは、世界中130の国と地域に117の国家青年会議所、4,780の会員会議所、そして約163,000人の会員を有する国際組織へと成長し続けている。私は、この組織の偉大なスケールメリットに、未来を創る可能性と魅力を感じるのである。

 2011年3月11日、東日本大震災による地震と津波、さらには福島第一原子力発電所の放射性物質飛散事故が発生した。震災発生から6年目を迎えるが、沿岸地域の復旧、震災からのまちづくり、被害に見舞われた方々の生活再建となる復興公営住宅整備の遅れなどが一部の地域で目立っている。また、原発事故による被害は、放射性物質の除染、住民の帰還、企業や住民の損害賠償、中間貯蔵施設の整備や廃炉への工程など、果てしないほどの問題と課題を抱えている。しかしながら、震災以前においても平穏無事に暮らせるほどの環境が整っていたわけではなく、幾多の問題や課題を抱えていた。その一つに、地方の人口減少の深刻さがあげられる。地方は、出生率の低下、労働環境の改善を求める若年層の首都圏や地方中枢都市への流出による生産年齢人口の減少、それらが誘発する過疎化と高齢化、さらには被扶養人口の増加による社会保障給付費の増大、また出産や育児、教育環境の整備の不十分さなど、負のスパイラルに見舞われている。そして、地域を構成する「人」の減少が進むことで、地域循環経済の低迷から、衰退への一途を辿っている。

 我々は、ありとあらゆる手段を用いて、東北地方全体で、定住人口の促進と交流人口の拡大を基盤として、地域の魅力と特異性を活かしたまちづくりを推し進めることが必要である。一方、郡部や農山村地域においては、人口減少を時代の変化として捉え、その変化に対応する長期的な戦略を持って、地域再生を果たしていかなくてはならない。そして、我々には、それぞれの地域においてリーダーシップを発揮し、持続可能な魅力ある地域へと発展させていく責務がある。

 地域の活性化を「点」とするならば、自らが住み暮らす地域の問題を解決し、発展させていくことだけではなく、地方という「面」での成長を視野に入れた戦略が必要である。つまり、地方に目を向けた広域的な成長を実現するための知識と行動力を持つ人材を育成しなければならないのである。我々は、何事にも当事者意識を持つことから行動を起こし、人びとの幸福につながる健全な経済成長を成し遂げるとともに、心のゆとりや生きがいなど、真の豊かさが実感できる東北地方の再興に向けて邁進しなければならないのである。そのために、東北地区協議会としての存在意義を明確に示すことが必要であると考える。

 

 世の中をより良く変えるには、まずは自らの意識が変わり行動することである。

 

【自立した新東北の創造】

 我々が住み暮らす東北は、人びとの心の拠り所となる大きな祭り、寒さの厳しさを支えてくれる温泉郷、寒暖の差が生み出す美味しいお米、またそれを原材料に作られる銘酒の数々、世界に誇れる食や文化・歴史が息づく地方である。さらには、結の精神とも言うべき、お互いを助け、支え合うという優しい心を持つ人びとが住み暮らすところでもある。

 我々の先人は、今日に至るまで幾度となく訪れた、飢饉、震災、津波、豪雨、豪雪などの災害を経験し、その都度支え合い、時には励まし合いながらも力強く立ち上がり、今の美しく逞しい東北を築き上げてきた。

 しかし、現在、郡部や農山間地域は、人口減少が生み出す幾多の問題に直面しているのである。地域循環経済の低迷、過疎化、少子化、高齢化という問題は、深刻さを増して、町や村を消滅の危機に追い込んでいるのである。その打開策となる地域の活性化にとって重要なのが、若者にとって自らの生まれ育った故郷への誇りや愛郷心という心の奥底に広がる感覚を抱くことと生活に欠かせない働く場の確保である。すなわち、経済的豊かさを求めるばかりではなく、心のゆとりや生きがいという真の豊かさを高めていくことと持続性のある雇用と仕事なのである。

 若者が、帰ってこないと嘆く前に、帰ってきたくなる環境を創りだしていこうではないか。我々は、地域社会における経済活動と社会貢献を両輪として活動しているのである。我々自身の成長が地域の成長と言っても過言ではない。そして、国家を形成するのは地域であり、地域の自立、活性化が日本のさらなる強みとなり、国家繁栄の礎となる。近年、特に地域の自立が問われる中、地域と地域が競争と協調の関係を持ち、それぞれの持つ魅力と特異性を伸長させ、東北地方の一体的、且つ自立的な発展を成すことが必要であり、互いに切磋琢磨することで、自立した新東北を創造していくことができると確信している。

 「2010年代運動指針」と東日本大震災後に策定された「自立した新東北」再建ビジョンの経過検証と東北地区内77会員会議所が共感できる、隠れた“魅力”の発掘から、東北人の誰もが誇れる新たな価値を創り出し、それらをコト消費へとつなげる戦略から、東北人の新たな心の拠り所を創りだそうではないか。東北に愛して住み暮らす我々だからこそ、新たな心の拠り所を創り出すことができると確信している。これらをもとに、愛郷心と「結」の精神を広め、東北の人と人とのつながりの再生に大きく貢献したい。

 これからの東北の未来に向けて、故郷と子供たちのために、誇りと愛郷心を育む事業を東北各地で展開していこうではないか。

 

 全ては、自分自身が故郷の魅力について、熱く語れる人間になることからはじめよう。

 

【未来を切り拓く青年の集い】

 今からおよそ1200年前に古代国家とも言える「日高見の国」(現在の岩手県胆江地域)が存在した。そこでは、互恵の精神が根付き、平和な暮らしが送られていた。当時の日本は、大和朝廷による国家支配の嵐が吹き荒れた暗黒の時代。その刃も当然「日高見の国」にも向けられたのだ。攻め入る大和朝廷に勇猛果敢に立ち向かう救世主がいた。その名は、阿弖流為。阿弖流為が率いる蝦夷(日高見軍)は、延暦8年(西暦789年)5万余人の大軍に応戦し、一度は勝利を治めるも、長期戦となり陽動作戦で戦い続けたが、遂に力尽き、延暦21年(西暦802年)大和朝廷征夷大将軍坂上田村麻呂に降伏し、河内国椙山にて処刑された。如何なる勢力にも屈することなく、愛する故郷のために、勇猛果敢に立ち向かう阿弖流為の愛郷心と行動力こそ、東北人のアイデンティティである。

 本年、東北人のアイデンティティの根付く奥州市において、我々の運動、地域の魅力や特異性の発信による活性化、さらには、東北地区内会員の友情をより一層育む場として、東北地区内77会員会議所の会員が一堂に集う機会を創出する。

 ここで我が国の繁栄を支える地方や地域の問題や課題を認識するとともに、解決策とも言えるまちづくりの根底にある人びとの意識を変えることの重要性を発信し、当事者意識を奮い立たせる集いとしたい。さらには、同じ志を抱く東北地区内77会員会議所の会員とともに、これからの輝く東北の未来を描きたいのである。

 また、未来を切り拓く青年の集いを主管する喜び、感動、成長を実感できる機会を創出することで、持続可能な地域発展と会員の成長につながるこの機会を好機と捉える思考を引き出していきたいのである。

 

【先駆者としての視点と行動力を兼ね備えた人材の育成】

 青年会議所は、人生最後の“学び舎”である。しかし、学ぼうという姿勢がなければ、時間もお金も無駄に費やしてしまう。青年会議所は、個人の資質を向上させ、地域を担う人材へと成長することができる絶好の機会を提供する。私の思うリーダー像とは、誰よりも先駆けて、常に誠実で己を律し、誰の支えもなく自立している力強さと、他を思いやり、温かく手を差し伸べることのできる優しい心を持ち、加えてどんな苦難や変化にも対応できる柔軟性を備えていることである。つまり、物事の本質を見極める力を持ち、人の幸せに貢献できる覚悟と行動力を備えた人物であると考える。

 まずは、青年会議所の生い立ちについて学ぶことで、組織の存在意義と使命、我々の可能性について理解を深めてほしい。そして、東北地区内各地を廻ることで、魅力や特異性、まちづくりを体感することで得られる価値観を養い、創造力を高めることで、LOMや地域で活躍できる力を培ってもらいたいのである。

 この一年で学んだことが必ずや地域を輝かせることのできる覚悟と行動力を持ったリーダーへと成長することができると確信している。一期一会の機会を全うし、東北地区内を歩き廻り「百聞は一見に如かず」という体感による新たな価値観の創造に期待している。

 

【震災の教訓を活かし、安全・安心のまちづくり】

 2011年の東日本大震災を経験した私たちは、地震や津波の脅威はもちろんだが、人の命の尊さを実感した。またそこには、顔や名前を知らない相手でも互いを助け合い支え合うという共助の精神があり、一つの家族のように同じ空間で過ごしていたことを思い出す。そして、我々は、国内外から多くの支援をいただいたことによって、今を生かされているということを忘れてはいけないのである。絶対に風化させてはならないこと、それは、あの時に抱いた感謝の心と恩返し・恩送りをしなくてはならないと決意したことである。

 現在、地球温暖化による気候変動や火山帯、活断層の活発化により、いつ大きな災害がどこで起きても不思議ではない状況下にある。その中でも東北地方は、豪雨、豪雪、地震、津波などの被災経験と初動時・長期にわたる支援のあり方などの実体験による知識から、日本各地の地域防災力の向上に貢献できる減災・防災の先進地域である。日本本会の救援相互ネットワークのさらなる進化へ貢献すると同時に、東北地区内会員の災害情報掲示板である「TADSネット」を震災当時のアーカイブをもとに、迅速、且つ効果的な支援に対応できるよう再構築しなければならない。さらには、東北のみならず、他地域災害における情報の掲載など、被災地支援につながるものへと進化させる必要がある。

 

あの日あの時支援をいただいた方々に、感謝をカタチで返すことが我々の責務である。

論ずることに終わることなく、行動で示していこう。

 

【磐石な組織体制の構築に向けて】

 JCI Creed、JCI Mission、JCI Visionの唱和からはじまるJC活動、これらは我々の運動の基盤となる綱領・使命を確認する大切な儀礼である。
 国際組織へと成長・発展を遂げてきた歴史や儀礼の意義と意味についても理解しなければならないのである。そして、JC宣言と綱領、東北JC宣言なども、祖国や地域に対する志や一体感を確認する同様の機会であることを忘れてはいけない。
 我々青年の使命を共有し、一言一句覚悟を持って唱和しようではないか。

 本会・地区・ブロック協議会における運営費は、会員の皆様からお預かりした大切な原資である。公益社団法人として、明確な資金使途はもちろんのこと、透明性のある会計処理を行い定款諸規則に則った事業の実施が必須である。そして、組織における財政・規則の審査体制を強化しなければならない。また、本会との連携を図り、地区内会員会議所の会計相談窓口を開設し、法人格維持に関する支援を行う体制の構築も必要である。

 東北地区協議会の担いとして、役員・出向者への機会の提供から成長を促進し、地域や所属する青年会議所で活躍できる人材の育成に務めるとともに、各地会員会議所の運動の情報収集を行い、世界に広がるネットワークを活用することで、各地会員会議所の地域で行う尊い運動を周知することができる。また、本会の方針や協働運動などを、ブロック協議会を通じて、伝播すると同時に、それらに対して抱く疑問や意見等を集約し、より良い事業・運動へと昇華させるために本会へ具申することである。

 

責め心のない厳しさと馴れ合いでない優しさを持って

磐石な組織体制を構築し、一体感「東北は一つ」を共有しよう。

 

【新たな夢を抱く】

 新・東北3つの夢として、2013年公益社団法人日本青年会議所会頭の輩出、2014年ASPAC山形大会の開催、2015年全国大会東北八戸大会の開催を大成功に治めることができた。この機会で多くの人びとの成長と東北の底力を発信、さらには、震災からの支援に対する感謝を伝えることができたと考える。ここから、我々や後輩たちにとって、あの東日本大震災から復興した輝く東北と世界をも魅了した「結」の精神を発信すべく、新たな「夢」を抱くことが必要である。
 目標を持つならば、志を高く掲げ、何事にも果敢に挑戦することが大切である。
 東北の未来をより輝かせる「夢」を共に描こうではないか。

 

【終わりに】

 短歌に勤しむ生前の父が私にいつも言い聞かせてくれた詩がある。
 それは、元帥海軍大将 山本五十六の「男の修行」である。

 

苦しいこともあるだろう。

云い度いこともあるだろう。

不満なこともあるだろう。

腹の立つこともあるだろう。

泣き度いこともあるだろう。

これらをじっとこらえてゆくのが

男の修行である。

 

 人生には、逆境もあれば、順境もある。

 逆境は卑屈を生み、順境はうぬぼれを生み出す。

 人は、常に前向きに修練を重ね、素直に生き抜くことが美しい。

 なぜなら、修練の先にある自己の成長が、明るい豊かな未来を創り出すからである。

 

過去は変えることはできないが、未来は変えることができる。

そして、未来を変えるということは、「今」の自分を変えることである。

「今」を大切に、故郷に誠実に、そして自分に素直に生き抜こう。

これからを生きる人びとのために

夢と希望に満ちた輝く東北を実現しようではないか。

青年会議所は、未来を創る同志の集いなのである。

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