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唐鎌会長対談

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茨城発ベンチャー企業×唐鎌会長 対談vol.1

茨城ブロック協議会 唐鎌会長×株式会社リーバー 代表取締役 伊藤俊一郎様

24時間・365日スマホで医師に相談できる「ドクターシェアリングプラットホーム」の機能と健康観察ができる機能を持ったアプリを提供する、つくば市に本社を構える株式会社リーバー 代表取締役 伊藤俊一郎様に、今後の茨城県の進むべき姿、そして青年経済人に求めることなど、様々な質問に応えていただきました。

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余裕が無いと新しいことは生まれない

唐鎌)本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。まずは、本日JCからこの話を貰った時の感想をいただけますか。

伊藤)JCさんの名前は有名です。私自身は、地元のライオンズや倫理法人会に加入しております。あまり参加できておりませんが、異業種の集まりは良いものだと思います。JCは若い経営者の集まりで、親や祖父から事業を承継しているメンバーが多いイメージです。日本全体が元気になるには、スタートアップ、ベンチャー、地盤がしっかりしているいわゆる地元の会社が元気にならなくてはいけないと思います。

唐鎌)ありがとうございます。リーバーさんは大変素晴らしいサービスを提供していらっしゃると思うのですが、どのような経緯でそのアイディアが生まれたのでしょうか。

伊藤)今の会社を始めて8年になります。会社を経営するようになって色々考えるようになりました。時間をとって考える時間をもつことはとても重要なことで、余裕がないと新しいことは生まれないと思います。考える時間をもてていれば、イノベーションが生まれると感じています。

しかしながら、立ち上げた当初の2、3年は全く余裕がなかったです。その時期を乗り越えてからは少しずつ自分と向き合う時間がとれるようになりました。考える余裕があるという状態は、本当に恵まれていると感じています。私の同期をみると、病院の勤務で考える余裕すらない方が多いと思います。

仲間と今の課題や将来のビジョンについてブレインストーミングして、こういうビジネスが流行っているとか、こういうビジネスモデルが出てきたとか、情報交換の時間をもてることも大切だと思います。

特にJCの中では、色々な新しいビジネスが生まれているイメージがあります。僕も経験がありまして、異業種同士が付き合ってお酒を飲みあうのは、非常に良いアイディアが出てくると感じておりますので、良い場がJCにもあると思っています。

唐鎌)ありがとうございます。実は、JCに誘われた当初は時間もなかったですし、入会を断っていました。ただ、JCをやってみて一番良かったのは、時間の使い方を覚えたことだと感じています。伊藤様のおっしゃる通り、JCの仲間と新しい会社を立ち上げた事もございます。先生は、元々お医者さんだと伺っておりますが、どういった経緯で会社を立ち上げたのでしょうか?

伊藤)企業する前は、心臓外科医として10年間、真面目に病院の勤務に従事しておったのですが、振り返ってみれば病院の中のことしか知らなかったです。開業や起業の意識は0でした。心臓外科医として境町の病院に勤めていた時、境町まで1時間車で毎日通勤しておりました。その車の中で、思考の遊び、空想遊びをするようになりました。

「このまま心臓外科医を続けていいのか?」。と自分に問うてみると、老人ホームが今後高齢者に必要になると思いました。それなら老人ホームを始めるにはどうすればいいかを毎日考えるようになりました。毎日1時間、頭の中で空想遊びとして考えるのが楽しくなりまして、その後3か月半で起業の意思を固めました。

実は、父と祖父が昔事業をやっていたのですが、その経営は上手くいかず、倒産したことがありました。小さいころから会社経営の難しさを近くで見ていて、会社経営なんてやっては駄目だと思っていた程でした。だから医者の道を選んだのです。勤務医であり、サラリーマンなので社長になることに興味は0でした。

でも頭で空想遊びを続けていたら、不思議と会社を作りたくて仕方なくなっていたのです。2014年のころだったと思いますが、もう止まらなくなってしまいまして、それからは老人ホーム立ち上げの為にどうやったら借金ができるのか、頭をひねりました。そして借金のめどが立ち、心臓外科医をやめて、2015年におよそ10億円を借りまして、事業をスタートしました。

老人ホームとクリニックを開業したのですが、最初は老人ホームに入居者が全く入らなかったのです。潰れる危機を感じ、必死に営業するのですけど、上手くいかなかったのです。その時に、たまたま他の老人ホームから訪問診療在宅医療依頼があったのです。

老人ホーム、個人宅に訪問診療を拡大して、運良くそれが伸びました。当初の想定とは違ったのですが、今もなんとか生きています。(笑)

ゴールは無い、まるで生き物みたいなもの。

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唐鎌)現在のアプリは、いつごろから開発しようと考えていたのでしょうか。

伊藤)アプリ開発を思いついたのは、2016年頃でした。起業して2年目の時です。

高齢者には、在宅医療をすることでこちら側からスタッフを派遣することで問題なかったのです。しかし、若い人たちもどうにか医療を受けられる環境が欲しいはずと思っていました。スマートフォンでお医者さんに相談したり、家に来てもらったりしたらすごく便利だろうなと考えました。

でも、そんなのは誰しも考えたことがあるはずだと思うのです。友人にお医者さんがいれば、簡単に相談出来ると思いますが、そうではない人は難しい。2016年に思いついて2017年に会社を立ち上げて、2018年にサービスを開始し、今に至ります。もしかしたら皆さんの中でも、お子さんが学校に通う際にうちのリーバーを使ってくださっている方もいるかもしれません。実は現在、全国の教育現場で「健康観察アプリ」としてのリーバーの活用が広がっております。

唐鎌)ありがとうございます。今お話をいただきました、全国の教育機関で健康観察アプリとして使ってもらっているお話ですが、学校が導入してきたのは2018年に開発してからすぐだったのですか。

伊藤)元々、個人向けに医療相談を提供していたのですが、当初は「医療相談」というものが社会的に理解されていなかったので、利用者がなかなか伸びませんでした。そこで、新たに医療相談とストレスチェック機能をセットにしたパッケージを法人向けに販売をし始め、徐々に伸びてきたころにコロナが来ました。テレアポで法人営業を行っていたのですが、コロナで皆さんステイホームをしていたこともあり、テレアポをしても全然担当者につながらなくなってしまいました。このままではまずい‥と思いましたね。

そんな時、厚生労働省から体温チェック、症状チェックを必ずしてくれという通達が来まして、チェックシートの用紙に書いてもっていく。そんなのおかしいと思ったんですよね。紙に書いて持ってくるなんて、調子が悪いなら家にいるべきじゃないですか。

その当時もコロナで最も死亡リスクが高いのは高齢者と言われていましたので、そのリスクの高い高齢者施設を運営しているスタッフ達がこのような紙の運用で調子が悪いのに会社へ来てしまったら、入居されている高齢者いうつしてしまい、大変なことになると。そこで、高齢者施設に入居されている方々の命を守るためにもこの紙のシステムを変えないといけないと思い、今の健康観察アプリ機能の前身となる「体温チェック機能」を開発し、高齢者施設向けにサービス提供を開始しました。ただこれも、全く売れませんでした。介護スタッフも高齢者が多かったですし、スマートフォンを使用する人口が多くありませんでした。その時に、自分の子どもが保育園に通う際、体温チェックをしていて、「これは小中学校、保育園に提供できるのでは」と思いつき、学校現場に提案したところ、つくば市、つくばみらい市の教育委員会がすぐに受け入れてくださいました。そこから近隣の市町村や全国でも導入が広がり、今では全国1500校以上の学校で導入され、毎日40万人以上が使用してくれています。

唐鎌)良くも悪くもコロナ感染拡大が岐路だったのですね。

伊藤)そうですね。そして想像通りいかないのが事業だと感じました。

唐鎌)それにしても、もの凄いスピードでの事業展開ですよね。2016年に思い立って2018年にはアプリ提供。

伊藤)それでも僕は遅すぎたと思っています。失敗してもいいから早く市場に出してみて、間違えていたら方向転換することが大事かなと。

唐鎌)アプリは従来とは全くの新分野への展開ですよね。進めるにあたり、アプリ開発予算、エンジニアの確保とか、多くの問題があったと思いますが、どのように解決していったのですか。

伊藤)それこそお酒を飲む友人の中に、知り合いにインド人のエンジニアいるよとか。僕はエンジニアの知識もないしエンジニアの友人もいなかったです。そのインド人の方がプロトタイプ作ってくれて、なんとか今のアプリへと繋げていっています。

唐鎌)アプリのプロトタイプは、大体どれくらいの作り替えで今の形になったのですか。

伊藤)今もそうだがアプリに完成形はなく、常に作り替えています。皆さんが使っているTwitterやFacebookも少しずつ変わっていっているのはご存知でしょうか。なので、ゴールはない。まるで生き物みたいなものなんです。人間も変わるし、対象者も変わる。それに合わせてアプリも変わります。2、3年たつとデザイン全体が陳腐化してしまう。会社も同じだと思うし、常に変わり続けなければいけない。完成はないと感じています。

唐鎌)ありがとうございます。ちなみに、海外では同業者のようなアプリはあるのですか。

伊藤)いっぱいあります、日本だけでも何件かあります。LINEさんには、オンライン診療のアプリがありますし、海外にはオンライン診療遠隔医療が進んでいる地域もあります。

前向きな気持ちで事業に取り組むこと、常にポジティブにとらえる。積極的な考え方を大切にする。

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唐鎌)ヨーロッパはホームドクター制度が普及していると思います。1人で数多くの患者を受け持つ、データの共有展開についてはどう思われますか。また、そのような展開は今後お考えでしょうか。

伊藤)イギリスではホームドクター(GP/General Practitioner)と呼ばれる方が、いわゆるかかりつけ医として、地域の住民を受け持つしくみが浸透しています。日本でGP制度がすぐにうまくいくかというと難しいと感じています。日本は専門分野の開業医化が進みすぎたと思います。良い意味で取ってほしいのですが、専門馬鹿を量産してしまった現状があると思います。医療は日進月歩で進歩していて、一つの分野がもの凄く深いんですよ。例えば心臓なんかでも循環器内科の先生たちが心臓についてもの凄く詳しくなっている。

日本において、体調を崩した方がイギリスのホームドクターのようなサービスを受けるには、「遠隔医療体制の構築」が重要になると思っております。
例えば、当社のリーバーオンラインシステム上には各専門分野の先生方が、380名います。この先生たちに、皮膚科の相談をしたら皮膚科に詳しい方たちが答えてくれます。本当に医療機関の受診が必要であれば、医療機関の受診を。市販薬で良くなるなら市販薬をお勧めするとか。日本で総合臨床医が足りていない新たなソリューションの形で、スマートフォンがかかりつけ医になるみたいな。

遠隔医療上に、各専門分野の先生が370名います。この先生たちに、例えば皮膚科の相談をしたら皮膚科に詳しい方たちが答えてくれます。本当に医療機関受診が必要なら、医療機関受診を、市販薬で良くなるなら市販薬をお勧めするとか、日本で総合臨床医が足りていない新たなソリューションの形。スマートフォンがかかりつけ医になるみたいな。

唐鎌)ありがとうございます。お話をお伺いして、伊藤様は地域の方の為。というイメージがありますが、我々青年会議所も地域に根差した活動を目標としています。我々のような地域団体が目指すべき方向性のアドバイスはありますか。

伊藤)あまり偉そうなことは言えないですが、皆さん勉強会もよくやられているので到達していると思いますが、前向きな気持ちで事業に取り組むこと、常にポジティブにとらえること、積極的な考え方を大切にすること。そのうえで地域住民とwin to winの関係であり、SDGs等の公的な社会使命を守ることが重要だと考えます。良いサービスであれば広がるはずですし、広げなくてはいけません。

在宅医療は、半径16kmしかサービス提供できないんです。それを日本中に敷き詰めて人口カバー率100%提供を目指したいと考えています。何故そこまで無理してやるかというと、困っている人たちが世の中にいる。それなら多少自分がリスクをとって苦しくても世の中に広めなければいけないと思っています。

遠隔医療は、つくば市と大阪府・市のスーパーシティー構想の事業尾に採択され、2030年の未来の街をつくばで実証しようという計画で内閣府から予算を頂いています。私たちもつくば市で遠隔医療デジタル医療の分野で実証していこうと考えています。大阪とつくばで、僕たちが2030年の未来をしっかり実現することができれば、全国に同じモデルを広げることができるし、日本のベストプラクティスを世界に広げていくことで日本は高齢化先進国ではあるが、その中で持続可能な、サスティナブルな社会を作り上げることが僕の会社の責務だと思います。

冒頭話したように、僕には他のお医者さんより時間があります。お医者さん達は今も寝る間も惜しんでというような状況で尊い仕事をしてくれています。だからこそ、僕としては考えに考えて、頭が擦り切れるくらい考えるのが仕事だと思っています。他の先生たちができないようなリスクもとってでもやらなければいけないと思っています。

唐鎌)今のスーパーシティー構想で実証しようと思っていることを、差し支えなければ教えていただいてもよろしいでようか。

伊藤)例えば、夜、子供が熱を出した。その家には子供が3人います。その時、シングルマザーのお母さんは、子供たちが心配で受診にいけないんですよね。そんな時に、スマートフォンで、遠隔診断で相談できて、必要なら家まで来てもらって、このような形や、サラリーマンの人で頭が痛くてスマートフォンで相談できて、偏頭痛で薬を処方しましょうと。そうしたらドローンが飛んできて市販薬を届けてくれるとか。

これは何が起こるかというと、世の中を便利にしながら社会保障費の低下につながります。例えば救急車を呼んでしまうともの凄いコストがかかってしまうし、家に帰れなくて1泊入院していきましょうといった可能性もあります。そうすると社会保障費がもの凄くかかってしまう。そうではなく、お医者さんが家に訪問することができたら入院しなくて済んだり、自宅に市販薬が届くことで医療機関する受診する必要がなかったり、社会保障費が適正化されて本当に必要な人に届くシステムとして社会に活かされると思うんです。

例えば、お子さんの将来、お金がないので手術ができません。そんな未来があってはいけないと思います。ICT、デジタルの力を使ってサステナブルな医療を絶対に達成する必要があります。つくば市では、実現に向けてサービスを提供していきたいと思います。

唐鎌)とても面白いです。それが実現されたら、素晴らしいですね。まるで夢のようなお話です。

伊藤)人間が中心の世界であると思います。人間が便利である、でも脱炭素社会ではないけど、自然に迷惑をかけてはいけないし、でも過剰な社会保障費をかけてもいけない。やはりサステナブルというのは絶対重要だなと考えています。

つくばに、茨城県に恩返しがしたい。

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唐鎌)この度、茨城ブロック協議会では、「できる」と「ほしい」を結ぶビジネスマッチングという事業を始めさせていただきました。リーバー様でもし、こういった会社と繋がりたい。などあれば教えていただけますか。

伊藤)今50名以上の会社はストレスチェックが義務化されています。実はそういうのを知らない人が多くて、つい最近でも、1000名以上の会社でストレスチェックを導入していない会社が存在していました。それってコストの部分なので、後回しになりがちなんです。でも会社は人ありきですから、僕たちの会社だと月間11円、一人あたり年間130円でできるんですよ。ジュース1本の価格で従業員のメンタルヘルスを守れたりサポートできたり。

体温チェックも本来であれば会社でもするべきで、体温チェックはお子さんが今一番されていますが、昔は体調悪くでも出社するのが美徳とされていました。今は、体調が悪いからこそ、しっかり休むのが重要で、子供たち以上に大人たちがやらなくてはいけないと思います。

唐鎌)リーバー様の「できる」サービスとして、是非我々のメンバーの会社でも広めていきたいです。会いたい人や、なにか欲しい業種などありますでしょうか。

伊藤)僕らはシステム開発会社なので、アプリを作るのは得意ですが、重要なのはつくったアプリを広げることです。それには多くの力が必要です。我々の趣旨に賛同していただいて、例えば代理店になっていただく。

より人が核となる分野の事業に広めていきたいです。そういう方々につながりのある方に協力していただきたいと考えております。数人単位の小さな会社さんでも、大きな会社さんでも関係なく地場の企業に、活用していただけるように広めていきたいです。

唐鎌)僕の場合、人材派遣の会社を経営しているのですが、当日欠勤が多いのが悩みの種です。導入した場合に、なにかおすすめの使い方はありますか。

伊藤)体温チェックや症状チェックをしっかりすることで、自分の体調をコントロールするようになります。健康管理に気を付けるようになりますよ。もちろん休むことも重要です。便利なところとして、会社でアプリによる健康状態を管理することもできます。権限管理で社員の日々の体調を確認することもできます。

唐鎌)伊藤様ありがとうございます。最後に、今後地域の青年経済人に期待されることがありましたら、教えていただけますでしょうか。

伊藤)僕はつくばで会社を作りました。つくばを離れずにいるのは、筑波大学の卒業生でもあり、医者になってからも茨城県で地域の住民の方々に育てていただいたと思っているからです。若い研修医の時に、僕に大切な体を預けていただいたこともありました。つくばに育てていただいたお礼として、つくばに、そして茨城県に恩返しをしたいと思っています。

青年会議所の皆さまも茨城に恩返しができるように、少しでも大きな会社になって地域への恩返しをしていただきたいと思います。

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