はじめに
私たちの暮らす神奈川県は2020年がピークとされていた人口も、感染症の流行によって人々の働き方や暮らしに変化が生じ、都心からの移住傾向が顕著化し、923万人まで増加しました。県内には政令指定都市3市を有し、人々が生活しやすい都市機能をもち、心の癒しとなる美しい自然、歴史や文化に富んだ観光名所が多く点在します。政策では健康や経済、地域の特色を活かした施策が推進され、SDGs未来都市制度においては神奈川県と県内6市町村が認定されている先駆的モデル地域となっています。一方、本格化する少子高齢化と人口減少、気候変動による災害の頻発、デジタル化による社会構造の転換、他にも時代変化に伴う様々な課題が山積しています。本年、新しく策定される神奈川県の総合計画も考慮しながら、地域の原動力である青年会議所として、未来を見据えた発展性ある運動を推進していかなければなりません。神奈川ブロック協議会は県内会員会議所に一番近い日本青年会議所との連絡調整機関として存在し、県内会員会議所を主語とした運動を展開してまいりました。しかし、多様な環境を有する神奈川であるが故に、それぞれの地域やLOMが抱える課題は多岐にわたります。多くに共通していることは人財育成、会員拡大を喫緊の課題として挙げられていることです。この課題に対し21の個性と英知を結集させ、互いを敬う相補的運動を創れば、素晴らしい成長と持続可能な組織へ進化を遂げられると信じます。2023年、神奈川ブロック協議会は県内会員会議所それぞれの状況を理解し心を寄せ、メンバーの成長とLOMの発展に貢献できる運動を展開してまいります。
縦の歴史と横の絆が織りなす神奈川ネットワーク
神奈川ブロック協議会の強固な絆は先輩諸兄姉が永きにわたり育み、守るべき伝統として受け継がれてきました。神奈川の同志が集い、社会課題の解決に向け運動を起こし、発展と成長の機会を与え続けてくださったからこそ今日があります。私たちはこの積み上げられてきた礎に甘んじることなく、これからも県内会員会議所に寄り添い、さらに連携を深め運動を推進していかなければなりません。まず、県内会員会議所のビジョンや運動を知り、どのような課題を抱えているか把握することから県内会員会議所を主語とした運動は始まります。相互理解と連携を深め、それぞれに寄り添った支援の結節点を見出します。そして、会員数の減少や平均在籍年数の低下に伴い、組織の要職に就くまでのサイクルが短期化しています。この現状を受け止め、組織の未来を見据えた中核を担える人財の育成が必要です。これまで多くのリーダーを育成してきた神奈川ブロック協議会の歴史が織りなす知見とスケールメリットを活かし、確固たる信念をもち、組織を牽引できるリーダーを育成してまいります。また、近年は気候変動の影響により大型台風や集中豪雨の災害が頻繁に発生し、関東地方に大きな影響を及ぼす大型地震は30年以内に高い確率で発生することが予測されています。いつの時代も有事の際に率先して行動してきたのは青年会議所です。防災・減災の意識をもち、有事の際は県内会員会議所が迅速な行動に移せるように、災害時相互連携支援ガイドライン「CHARMかながわ」を周知し実用できるよう連携強化を図ってまいります。これまで紡いできた歴史と絆を糧に、県内会員会議所と共に歩む運動は組織に成長と連帯感をもたらし、未来を明るく照らす強固な神奈川ネットワークの構築につながると確信します。
理念が浸透した人財の育成と共感を拡げるメンバーの拡大
青年会議所は「青年が社会により良い変化をもたらすための発展と成長の機会を提供する」を組織の使命としています。地域や組織を発展させるためには率先して機会を捉え自らを成長させ、組織の理念に共感した仲間を増やしていくことが肝要です。日本青年会議所の会員数は1994年をピークに減少が続き、神奈川ブロック協議会においても10年前と比較し3分の2程度まで減少し、平均在籍年数も4年2ヶ月と短くなっています。このような状況も影響し、今までそれぞれのLOMにあったはずの人財育成や会員拡大の仕組みを継続することが困難になってきています。神奈川ブロック協議会には入会2年未満のメンバーを対象としたベーシック研修の機会があります。入会時期が近いメンバーが集い、互いに切磋琢磨し学び時間を共有することで、この場に来たからこそ得られる成長とLOMの垣根を越えた深い友情が育まれます。多様な価値観と個性が輝く、青年会議所の基礎である理念が浸透したJAYCEEを育成してまいります。そして、受け継がれてきた実績をさらに積み上げ、その信頼を基に、JAYCEEを育む新入会員研修は「かながわアカデミー」が引き受け、青年会議所の登竜門として確立すれば、ベーシック研修はブランディングされ、より良い人財育成機関に昇華できると考えます。今を生きる人々は目に見える「モノ」より、目に見えない「コト」に価値や幸福を感じる時代にシフトしています。目に見えない「コト」とは情報・体験・人脈・共感などが挙げられます。若者が求めているこれらは青年会議所の機会としてすでに実装されているものなのです。入会につなげるためにはメンバー一人ひとりが青年会議所の理念を理解し、得られる機会を魅力的に発信できなければなりません。また、日本のジェンダーギャップの解消や公平性を維持するためにも、多様性や個性を尊重した持続可能な組織を目指し、女性や20代の会員拡大に積極的に取り組むことも必要です。神奈川ブロック協議会は県内会員会議所の状況を把握し、具体的数値目標に向かい全力で支援をしてまいります。人財育成・会員拡大が喫緊の共通課題としてある今こそ、情報を共有し地域の枠を越え支え合う運動が個人や組織に変化を生み、それぞれの地域で発展と成長が好循環する組織に進化できると信じます。
未来に夢や希望をもつ青少年の育成
日本の将来を担う子どもたちは我が国の宝であります。しかし、日本の子どもたちの社会問題への関与や社会参加の意識は諸外国と比べて相対的に低く、それは選挙の投票率にも顕著に表れています。本年は統一地方選挙が実施される年であり、神奈川県においては35の首長及び地方議員選挙の実施が予定されています。神奈川ブロック協議会では主権者教育の一環として、若年層の政治参画意識の醸成を目的としたプログラム「みらいく」を推進してまいりました。本年は迅速に教育機関や関係諸団体と連携し、統一地方選挙前に実施することで、政治参画の意義を理解すると同時に投票へ行く機運を高め具体的な行動につなげられると考えます。また、県内高校生を対象とし神奈川県や神奈川県議会と共催で開催する「かながわハイスクール議会」は毎年多くの未来を考えられる高校生を輩出し地域にお返ししています。高校生がいきいきと自由な発想で議論し、政策立案・提言をされる経験はかけがえのない原体験になると共に、地域を越えた友情を育みます。かけがえのない「今」を生きる子どもたちに夢や希望を与え、無限の可能性に満ちたチャレンジ精神に溢れる若者が活躍する、活力に満ちた社会の創造につながると確信します。
地域と人の心にインパクトを刻むブロック大会
昨年、神奈川ブロック大会は50回目の開催という節目を迎えました。本年は新たな一歩として一般社団法人藤沢青年会議所主管のもと、第51回神奈川ブロック大会藤沢大会を開催いたします。藤沢市は江戸時代に東海道五十三次の六番目の藤沢宿として賑わいを見せ栄えてきました。現在は首都圏からのアクセスが良く、多種多様な機能を持ち合わせ、人口は44万人にまで増加し、人々から選ばれる魅力的な地域と言えるでしょう。神奈川ブロック大会藤沢大会はあらゆるパートナーと共創し、対内外に広く発信する神奈川ブロック協議会最大の運動発信の場といたします。まずは、藤沢市の地域課題に取り組む事業を行い、大会当日の参画につなげ成果を発表し、県内会員会議所にお持ち帰りいただけるアクションプランとしてお示しいたします。そして、持続可能な未来を切り開いていくためにもこれからを見据え、次代に先駆ける新たな価値を感じるフォーラムを開催いたします。また、神奈川県内のメンバーが一堂に集い、神奈川ブロック協議会の歴史に触れ、LOMの垣根を越えた交流と地域の魅力に触れていただきます。公に開かれたブロック大会は地域から注目され、私たちの運動は市民に意識変革を生み出します。地域と組織の発展を願い、覚悟をもって主管いただく藤沢青年会議所と共に、メンバーがブロック大会の魅力や価値に触れ、ブロック大会の主管に憧れを抱ける大会を構築し、地域と参加者にインパクトを創出してまいります。
見せ方と受け手を意識した共感を生む発信
デジタルの発展により情報を受発信することはとても容易になりました。特にSNSは文字、写真、動画、ライブ配信、世界中に誰もが発信できる時代です。名も知れない一般人や今まで脚光を浴びなかったローカルスポットなど、見せ方によっては爆発的な注目を集めるポテンシャルを秘めています。青年会議所の運動にとって、事業の集客や周知をする広報も大切ですが、成果を報告する事後広報はより重要です。どんなに良い運動を起こしても成果や団体の存在が知られなければ変化を起こす効果は薄く、青年会議所への共感の輪は拡がりません。あらゆる媒体を駆使し、従来行ってきた事前広報はもちろん、得た成果を多くの人に発信してまいります。また、発信のトレンドは日々目まぐるしく変わります。時代に取り残されないようアンテナを張り、受け手は何を求めどうすれば効果的に情報を多くの人にお届けできるか調査し、LOMと情報共有をしてまいります。そして、地域や人財の魅力、各地域の事業をフォーカスし、神奈川ブロック協議会とLOMの広報ツールを相乗させ発信することは、双方にとって有益で効果的だと考えます。さらに、私たちの発信力だけに頼らず、発信媒体をもつ企業や専門家とパートナーシップを結び発信力の向上を目指します。
盤石な組織基盤が誇れる神奈川を創る
神奈川ブロック協議会は56年間、責任ある運営で確かな信頼を積み上げ、脈々と受け継がれてきました。いかなる組織でも盤石な組織基盤がなければ運営は円滑に行われず、運動の効果は半減してしまいます。自身のLOMではないステージで、限られた時間をお預かりする単年度の組織だからこそ、責任感と覚悟をもった運営をしなければなりません。大切に受け継がれてきた神奈川ブロック協議会であるからこそコンプライアンスやルールを徹底し、メンバーからお預かりしている大切な事業費を最大限且つ有効的に使用できているかを審査し、健全な管理・運用をしてまいります。また、本年もサマーコンファレンスは横浜の地で開催を目指し、同じ関東地区協議会内のLOMが主管される全国大会東京大会が開催されます。一丸となって心寄せた支援をすることはもちろん、これらの諸大会には多くの学びや素晴らしい出会いがあることを伝え、その場に行くことでしか触れられない機会を提供してまいります。
【結びに】
青年会議所には人生を豊かにする力があります。青年会議所に入会したからこそ素晴らしい出会いがあり、多くの言葉を交わし価値観に触れることで、新たな自分を形成し夢を描けるようになります。夢を描ければ未来を見据え具体的なアクションを仲間と起こし、地域にインパクトを残すことができます。その行動と成果は発信力となり、周りに共感を呼び自然と新しい仲間が集まってきます。このような好循環を生み出すことで地域はいつまでも明るく輝き続け、持続的な未来は創られていくはずです。そして40歳までの青年会議所活動で得た経験と友情は、お金では買えない生涯の財産となりあなたの人生を豊かにするでしょう。夢は想いを一つに結集したときこそ、実現する大きな力を発揮します。たった一度きりの人生、大切でかけがえのない青年期に出会えた県内会員会議所の同志と共に、いつまでも明るく輝く地域を描き、未来への架け橋となる運動を起こしてまいります。