同事
事を同じくするということ
事を同じくするとは、違わないということ
違わないということは、相手と同じ立場に自分も立つということ
はじめに
「全人類の光明は、われわれ青年会議所の純粋な正義感と、目的完遂の確固たる実行力にうらづけられて初めてその輝きを見い出し得る。」日本青年会議所設立趣意文の書き出しの一文です。設立総会で趣意文が採択された 1951年という年は、集団安全保障や朝鮮戦争の休戦会談が開始、また、終戦から5年が経過し経済復興も果たした日本が、サンフランシスコ平和条約の署名により国際社会の一員として独立が認められ、主権国家として再出発をすることとなった年です。そのような中で、青年の実行力による目的の完遂と純粋な正義感が、地域やそこに住み暮らす人々に希望の光をもたらすという意識のもと先達は活動・運動を展開してこられたのだと思います。
2022年現在、新型コロナウイルス感染症への対応は各国により違うものの、未だ終息には至っていないのが現状です。日本経済においては1998年以来の円安水準となるばかりでなく、世界情勢の影響を受けての物価の上昇など経済面に関する不安は増えていくばかりです。更には異常気象による温暖化や局地的な豪雨災害、各地で頻発する地震など、現在の我が国は人口問題に加え非常に多くの課題や問題を抱えています。
九州地区内各LOMが存在する地域に目を向けると、同様にそれぞれの地域性により経済面や防災面など様々な課題や問題があります。このような時代に今を、そして未来の地域をより良くするためには、現代の我々にとっての道徳的観念と目的を明確にして運動を起こしていかなければならないのです。
九州の可能性
「多様性を受け入れる風土」、「創業・イノベーションを促す取り組み」、「都市の暮らしやすさ」など6つの視点から計131の指標と住民アンケートを点数化して、産業を生み出す力が都市にどれだけあるかを順位にした「成長可能性都市ランキング」上位10都市の中に九州は4都市含まれています。新型コロナウイルス感染症においてもアフターコロナの考え方ではなくウィズコロナにシフトしつつあり、経済・観光面、防災面でも運動を起こせば日本中に波及できる。そのポテンシャルが九州にはあると信じています。
九州地区内青年会議所の現状
現在、九州地区には78のLOMにおよそ3,000名のメンバーがいます。近年の日本全土における人口減少問題に同じく、多くのLOMでメンバー数の減少が課題であり、その中には事業の開催すらままならない状況にあるLOMもあります。さらには、入会時の年齢が高くなっている現状から、入会年数が3年未満であるアカデミー会員のまま卒業するメンバーも少なくありません。これは青年会議所の仕組みを理解することができないだけでなく、先輩方が築き、それぞれの地域に根づいた伝統が失われつつある危機的状況を招く可能性があります。日本青年会議所が推し進める運動を展開するだけでなく、LOMが抱える課題や問題をブロック協議会とともに連携し、解決する必要性を強く感じています。加えて、我々が地域に必要とされる団体であるために、様々な事業や研修等を通して理念と目的を明確にし、共有していく必要があると考えます。
2023年は、LOMとブロック協議会と地区協議会が連携し、九州全土に青年会議所の運動を波及させるための、地域に合った仕組みづくりを行います。
地区協議会の存在意義とは
地区協議会とは、「日本青年会議所としての事業計画・方針などを各ブロック及び各地青年会議所に伝達浸透させ、また一方では、各地青年会議所の事業活動・意見などを日本青年会議所に報告や連絡するための機関である。」とされています。
また、2020年代の協議会のあり方として「地区協議会およびブロック協議会は、LOM支援という協議会の最も重要な役割に原点回帰するため、日本青年会議所本会と一体となって現状の課題を改善し、時代に応じた機能と形態へアップデートすべきである。」と、答申書に記されました。
47あるブロック協議会はメンバー数に大きな差があります。ブロック内のメンバーの会費を予算とする協議会にとって、予算規模や会員数に差があればそれだけおこなえる事業や運動にも差が出てきます。地区という更に大きな単位であることで、より日本青年会議所の事業や運動をブロック協議会やLOMに展開することが可能になるだけでなく、LOM単位の地域課題を広い範囲で共有しフィードバックできると考えます。
メタバースによる九州創生
これまで様々な理由でインバウンドによる観光の充実を図ってきた九州という地域は、2020 年から続く新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、観光そのものを考え直す時期に直面しています。奇しくも新型コロナウイルス感染症の流行は、九州はもちろん日本中、世界中のインターネットサービスを進化させてくれました。非接触、AI、DX、IoT等、近年出てきたような言葉に感じますが、確実に私達の生活に溶け込んでいます。
観光面において、地域の魅力を発信する方法は様々あると思いますが、とりわけ海外に向けたPRとして効果的なものがメタバースだと考えます。観光資源や名産品が多くある中、外にアピールするためにメタバースやNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を使用することで、言語の壁を無くし、新しい技術とリアルが持つコンテンツの融合が図れるはずです。実際にその地域に足を運ぶことなく観光名所や施設内部を見ることができたり、特産品の購入もできたりするとなればデジタルでの旅行が完結するだけでなく、下見や現地調査の役割も果たせるのではないかと期待しています。
また、この技術を利用して、九州を拠点とし、世界中の人がそれぞれの地域で働くことができるような企業の誘致や、宇宙空間など普段は見ることが出来ない環境についての学びを得られる新しい教育を受ける体制が整えば、人口流出に苦慮する地域に光が指す可能性を見出せるかもしれません。地域課題に応じ、モデルとなる地域と協力してパッケージ化し、九州の各地域にリアルと仮想による新たな観光と移住の仕組みを作ります。
九州強靭化
九州はその位置における地理的な条件に影響を受け、近年は集中豪雨や地震、大型の台風や火山による被害など、大規模な災害が頻発する地域だと言えます。その中でも近年の九州における災害で大きいものは 2012年の「九州北部豪雨」、2016年の「熊本地震」、2020年の「令和2年7月豪雨」が挙げられます。私が実際に体験した熊本地震や令和2年7月豪雨の際、多くの仲間が全国から物資を持ってきてくれました。熊本に来る途中に、いたるところで通行止めや交通時渋滞があったと聞きました。青年会議所のネットワークと行動力に頼もしさを覚えた反面、随分と整ってきていたはずの交通インフラに不安を感じたことも事実です。九州におけるミッシングリンクを肌で感じた瞬間でした。
九州では現在、東九州自動車道や西九州新幹線の整備が進み、交通インフラは以前にも増して整備が進んでいます。しかしながら、九州内の主要都市を結ぶ「連絡速度」というものは依然として遅く、主要都市から主要都市までの移動には非常に多くの時間が必要であるため、移動サービスレベルの向上が必要です。主要都市や地域を結ぶ高規格幹線道路の早期開通に引き続き声を上げ、提言をおこなっていきます。九州を訪れた方々がより短時間で九州を回遊できるだけではなく、戻りつつあるインバウンドにも効果が期待できるのではないかと考えます。
一方で、九州に入ってくるには船舶や飛行機を除くと関門海峡からしか入ってくることができないことから、有事の際の外とのつながりに選択肢を増やすことは急務であると感じます。脆弱と言われる九州の縦軸・横軸の交通インフラの整備に関する運動を続けることで、より災害に強いネットワークの構築に向けた意識の醸成を図ることができます。つまり、私達が声をあげ続けることは、有事の際の選択肢や支援の幅が広がるなど、さらなる波及効果が期待できます。
先進的な組織運営
組織とは「ある目的を達成するために、分化した役割を持つ個人や下位集団から構成される集団。」です。青年会議所のメンバーとして、すべての人が平等に権利を持ち、すべての人には平等に成長する機会が与えられるべきです。
例えば、子育てで忙しいから参加できないというメンバーや、本人がいないと職場を開くことができないメンバーに対して、どのような提案ができるか、相手の立場に立って考えてみることが重要なのではないでしょうか。家にいながらできる作業を頼んだり、WEB会議での出席により意見を求めたりするなど、「分化した役割」を全てのメンバーが持つことができれば、組織として大きな力を出せるはずです。
九州地区協議会は 2019年よりWEB会議を導入してきました。「生産性の向上」、「志ある全てのメンバーが輝けるように」、「地域特性を踏まえた会議手法の選択肢の増加」など、多種多様な職種や環境に身を置くメンバーで構成される青年会議所において、また、地区協議会という活動範囲とコロナ禍の中で、私達の歩みを止めないための非常に重要なコンテンツであることに違いありません。
しかし、WEB会議を行ってきたからこそ、リアルの重要性を認識することとなったことは言うまでもありません。間違いなく私達は人と人との対話の中で答えを導き出してきたのです。声、表情、イントネーション、距離感が生む独特の緊張感、生の言葉と言葉のやり取りには、人を成長させる力があると感じています。今後もリアルと WEBを使い分けるとともに、時代に即した効率的かつ心を動かし成長できる会議を模索し開催します。
むすびに
1983年1月、私は熊本県天草に生を受け、曹洞宗(そうとうしゅう)という仏教の家系に生まれた父のお師匠様に名付けていただきました。名前の由来や、宗教的情操教育を行う保育園を経営していることから、修証義(しゅしょうぎ)という曹洞宗の教えに出会いました。その中に同事(どうじ)という言葉があります。
2012年6月、地域の多くの先輩方のお誘いをいただき、青年会議所に入会しました。当時はお世話になっている方々からのお誘を断るのも悪いからという感覚でした。しかし入会後、青少年健全育成事業、まちづくり事業、出向、その他多くの経験と人との出会いの中で、私は成長させていただき今があります。ただ好きだった故郷について考えることが増え、「このままではこの地域はなくなってしまうのではないか」、「地域の未来を明るくするにはどうしたらいいのだろうか」と考えるようになりました。そして、考える時いつも周りには沢山の仲間がいました。
私が在籍した10年間で、入会による出会いもあれば、退会による別れもありました。どのような気持ちで退会したのだろうか、もっと早く何かしら声をかけていれば今も共に活動していたのではないか。そう考えるときがあります。ブロック会長をさせていただいた2020 年にはブロック内の LOM で解散の話があがりました。
そして現在もメンバー数の減少や様々な理由で退会やLOMの解散を考えている人達がいます。少しでも力になれることはないか、少しでも共に活動することができないか。「解散を考えているLOMのことや、退会を考えている人の気持ちは他の人にはわからないんですよ。」そう言われたことがあります。悔しくてたまりませんでした。「もうちょっと頑張ってみろよ!」、「拡大を頑張ろう」。当事者にとっては無責任な言葉なのかもしれません。
それでも私は寄り添いたい。
共に歩めば愛する地域に光をもたらすことができるはずです。
地域の課題に向き合い、変化を恐れず挑戦し、前に、前に進んでまいりましょう!
大丈夫、あなたには私達がいます!